美容外科×精神科 身体醜形症BDDチェックマニュアル

    定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
    編著原井宏明
    原井クリニック院長
    原岡剛一
    大阪公立大学美容外科寄附講座
    A5判・192頁
    ISBN978-4-7653-2105-1
    2026年06月 刊行
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    精神科医と美容外科医が身体醜形症に取り組んだ書籍がはじめて誕生! 巻末にはスクリーニングツールも掲載!

    内容紹介

    身体醜形症(body dysmorphic disorder:BDD)は美容医療の患者さんのうち約20%が合併しているとも言われ、またうつ病や高い自殺リスクを伴う場合があります。美容医療が治癒につながらず、むしろ悪化するケースも少なくないため、スクリーニングの必要性が指摘されています。

    そこで本書では、精神科医だけではなく、BDDの患者さんに遭遇しやすい美容医療従事者にも向けて、具体的なスクリーニングツールの使い方や、診察時の観察の工夫をわかりやすく提示しました。現場ですぐに活用できる実践的な対応マニュアル本です。

    なお、BDD患者さんが自発的に精神科を受診することは稀です。そのため、美容医療の現場から適切に精神科へ紹介したり、連携したりする必要があります。

    巻末には、スクリーニングツール(BDDチェックシート)収録したので、ぜひ活用してください。

    序文

    まえがき

    私と身体醜形症との関わりは、決して長いものではない。

    2024年6月、NHKの朝の情報番組において若年者への美容外科手術についてコメントする機会をいただいた際、同じく出演されていた原井宏明先生(原井クリニック)をご紹介いただいたことが、身体醜形症と向き合う契機となった。

    そのご縁から、2025年6月に開催された第121回日本精神神経学会におけるシンポジウム「身体醜形症について精神神経科が知るべきこと」にお声がけいただき、美容外科医として登壇する機会を得た。今にして思えば、よく引き受けたものだと自分を褒めたい気持ちと、門外漢でありながら無謀にも挑んだことへの不安が交錯する。

    登壇者の先生方に教えを乞いながら準備を進める中で、企画者のお一人である松崎朝樹先生(筑波大学)から最初にいただいたメールにあった「『醜形恐怖って恐怖症? 醜いと思う妄想?』のような疑問を聴衆と共有して」というやりとりの意味が理解できず、自らの未熟さを痛感した。そして身体醜形症について学びを深めるにつれ、海外では美容外科領域から多くの関連論文が発表されており、その中には「身体醜形症患者への美容外科手術は禁忌」とする見解も存在することを知るに至った。

    私はこれまで、形成外科医として褥瘡や糖尿病性壊疽といった、美容外科とは対極とも言えるような疾患を専門としてきた。美容外科に関心を持った契機も、乳癌患者に対する乳房再建において、乳房増大術(豊胸術)の知識を求めたことに始まる。その後、形成外科から美容外科への転身を考えた際、当時まだ小学生であった娘の「乳癌の患者さんにおっぱいを作るのも、一重瞼の女の子を二重瞼にするのも、笑顔は一緒やと思うよ」という言葉は、今なお私の指針となっている。

    現在、私は美容外科医として臨床に従事し、患者に美容外科手術を提供している。娘の言葉は、「美容外科は人を笑顔にできる診療科である」という信念へと昇華し、その実現に向けてアカデミアおよび学会活動にも取り組んでいる。しかし同時に、それは美容外科が抱える諸問題と正面から向き合うことを意味する。

    特に本書の執筆に携わった2025年後半は、いわゆる「直美(初期研修終了後、直接美容外科に進む医師のことを指す造語)」問題や倫理観を欠いた広告の問題などが社会的関心を集め、国会においても「美容医療の適正な実施」に向けて医療法の改正が議論された時期であった。メディアには美容外科に対する批判的言説が溢れ、「直美」という言葉は広く一般にも認知されるに至った。

    こうした状況の中で、「身体醜形症患者に美容外科手術は禁忌」とする単純化された議論が拡大していくことに、私は強い危機感を抱いた。「このままでは、美容外科手術そのものが一律に否定されかねない」という思いが、本書に取り組む動機の一つである。もっとも、この懸念は結果的には杞憂であり、精神科の先生方が美容医療の意義を適切に評価しつつ身体醜形症に向き合っておられる姿勢には、深い敬意を抱いている。

    われわれ美容外科医はどうだろうか? 身体醜形症を疑う患者を精神科に紹介した経験を有する美容外科医は多くはないのではないか?

    精神科医と美容外科医が協働して身体醜形症に取り組むことが、患者の利益に資することは疑いない。そしてそれは同時に、美容外科医自身を守り、ひいては美容医療の健全な発展にも寄与するものである。

    今後、美容外科領域においても身体醜形症に対する理解を深めていくことが求められる。本書が議論の端緒となり、その一助となることを願っている。

    原岡剛一

    目次

    執筆者一覧
    まえがき

    1章 身体醜形症とは何か
    1 身体醜形症とは
    BDDの診断的位置づけとDSM-5に至るまでの変遷
    DSM-5-TRにおけるBDDの診断基準
    BDDの鑑別診断
    BDD患者の臨床像、発症に関連する要因、そして美容外科手術のリスク
    BDDの成因仮説、特に幼少期の逆境体験を中心に
    BDDの疫学、特に美容医療における頻度、そして経過と予後

    2 BDDの併存症

    3 BDD患者の自殺関連事象

    4 美しさと病の境界線~こだわる身体部位、男女差や文化差を含めて

    5 おわりに

    2章 美容医療を求める身体醜形症患者
    1 美容外科の現場で、どのような患者が身体醜形症といえるのか
    身体醜形症を想起させる有名人
    美容外科の日常診療でも身体醜形症を疑う患者は少なくない
    身体醜形症との決めつけが危険なことも
    社会様式の変化によって生まれてくる新たな身体醜形症

    2 美容医療が生み出す身体醜形症
    美容外科医は身体醜形症のゲートキーパー
    美容外科美容外科手術への低い満足度
    美容医療が生み出す新たな身体醜形症患者

    3 美容医療で救える身体醜形症もある
    美容外科の手術で「良くなった」身体醜形症の患者
    美容外科手術は、本当に身体醜形症の患者には禁忌なのか?
    美容外科手術で改善することがあるのか?
    患者の利益のために必要なことは?

    4 若年者の美容外科手術について
    美容医療の「低年齢化」
    昨今の若年者が置かれた環境と身体醜形症
    若年者の美容外科と周囲の大人の責任

    3章 美容医療現場での身体醜形症チェックリスト
    1 問診時のチェックポイント
    美醜の罠
    気にする部位は一点集中
    左右のアンバランスさを気にする
    気になる部位は中央に寄る
    美しくなってしたいことがあるかどうか

    2 視診・触診時のチェックポイント
    自傷行為の跡
    マスクを外せるかどうか
    皮膚むしりがあるかどうか
    抜毛があるかどうか
    視線を合わせるかどうか

    3 行動観察のポイント
    行動が反復する
    安全確保行動
    リスクへの感受性と予防のための計画行動

    4 チェックシートの活用法
    BDDQ 最も簡便なスクリーニング質問
    COPS
    BDD-YBOCS

    5 各診療科における留意点
    歯科・矯正歯科
    耳鼻科・眼科
    整形外科
    皮膚科
    内科
    形成外科
    泌尿器科・婦人科
    性別適合手術

    4章 身体醜形症が疑われる患者への対応とコミュニケーション
    1 コミュニケーションの基本
    施術より前に必要な患者との関係性:治療同盟
    コミュニケーションの仕組み
    正確な共感とは?
    間違い指摘反射
    聞き返し
    情報提供するときのコツ

    2 トラブル・炎上を防ぐ方法
    トラブル・炎上の入り口を見つけよう
    怒りと嫌悪を見分ける
    肯定表現にする
    その情報はどこで伝える?
    その情報はいつ伝える?

    3 クレームに対応する
    目指すゴールは人それぞれ
    関わりを断つことも想定する
    「関わりをつくる」の反対は?
    カスタマーハラスメント(カスハラ)対策
    口コミへの対応
    スタッフ間のコミュニケーション

    5章 専門機関との連携とアフターフォロー
    1 精神科における身体醜形症の治療
    身体醜形症は治せる
    身体醜形症の薬物療法
    身体醜形症の精神療法
    身体醜形症の認知行動療法

    2 精神科への紹介のタイミングと方法
    紹介するタイミングと方法
    どこへ紹介したらよいか
    こんな治療者に要注意
    精神科の未来

    3 家族や周囲の人との連携の構築
    身体醜形症の家族とは
    家族への対応の仕方
    家族が当事者に対してできること
    美容医療機関が家族に対してできること
    周囲の人との連携

    4 アフターフォロー:美容医療との付き合い方
    身体醜形症の治療のゴールとは
    精神疾患を持つ人の美容医療で気をつけること
    未成年の美容医療
    成人の美容医療
    高齢者の美容医療

    6章 美容医療における今後の課題
    1 美容医療とメディア
    女性誌からSNSへ、情報発信の重心は今どこにあるのか
    海外から指摘
    された報道体制の課題
    女性誌が存在感を示した理由
    インターネットがもたらした双方向性への変化
    今だからこそできた専門特化型メディア

    2 情報発信するときの注意点―「煽り情報」への立ち向かい方
    話すべき事実を並べていく
    「見出し」が決める話の組み立て
    「ロジカルシンキング」という技術
    裏づけする根拠を当てる

    3 海外医療ツーリズムの現状と課題―117万人に達した渡韓患者のクリニック選びの基準とは?
    選びにくいクリニック
    プライベートまで調べ上げるファシリテーター

    4 人を幸せにする美容医療とは―国が変わり、業界が変わり、美容医療はより良くなる
    学会が主導する業界ガイドラインが2026年に公開予定
    業界の透明化は不可欠

    column
    DSM-5-TRの強迫症および関連症(OCRD)
    マイケル・ジャクソンはBDDだった?
    対人恐怖症とBDD
    形成外科学会と美容外科学会と、もう一つの美容外科学会
    赤ん坊の写真と人権~「Nevermind裁判」が投げかけたもの
    身体醜形症は引きこもりよりマシ?
    身体醜形症を治療するようになって
    美容による健康被害 奈良時代から明治時代まで
    情報発信の可能性と限界
    人の話を聞くときに数えるもの
    外からは何が得意か見えづらい
    一般メディアが美容医療学会を取材できるようになれば

    巻末付録:スクリーニングツールBDDチェックシート
    1 BDD
    2 COPS
    3 BDD-YBOCS

    あとがき
    索引
    編著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■編著
    原井宏明 原井クリニック院長
    原岡剛一 大阪公立大学美容外科寄附講座

    ■執筆者一覧
    星良孝  株式会社ステラ・メディックス
    松浦文香 原井クリニック
    松永寿人 兵庫医科大学精神科神経科学

    トピックス