精神医学 マイテキスト
第3版

    定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
    監修武田雅俊
    和泉大学学長・大阪大学名誉教授
    編集武田雅俊
    和泉大学学長・大阪大学名誉教授
    西川隆
    大阪府立大学名誉教授・奈良学園大学名誉教授
    中尾和久
    甲南女子大学心理学部教授
    B5判・281頁
    ISBN978-4-7653-2083-2
    2026年03月 刊行
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    「精神医学って難しそう…」 そう思うあなたにこそ、読んでほしい。

    内容紹介

    「精神医学は難しい」――初学者の多くが抱くこの実感は、精神医学が「科学的な合理性」と「人間への深い共感」の両方を同時に求める学問だからに他なりません。

    本書は、2027年から国内適用が予定される国際疾病分類第11版(ICD-11)に対応した最新の教科書であるとともに、この「精神医学の難しさ」に正面から向き合った一冊です。看護師、心理職、リハビリテーション専門職、福祉・介護職など、チーム医療を支えるすべてのメディカルスタッフや初学者に向けて、最新の「精神・行動・神経発達の疾患」を体系的に解説。確かな科学的知識はもちろん、患者さんへの「共感」を育む視点を重視しました。

    執筆陣は、臨床と教育の第一線で豊富な経験を持ち、「患者を診ずして書かれた部分は一つもない」という言葉通り、現場のリアリティに即した実践的な記述が随所に盛り込まれています。「患者は師」という理念のもと、これから現場に立つ皆様が、患者さんの良き理解者として、そしてチーム医療の要として成長するための「確かな道しるべ」となる一冊です。

    序文

    世界保健機関(World Health Organization;WHO)の呼びかけにより、国際疾病分類(International Classification of Diseases;ICD)第10版(ICD-10)は第11版(ICD-11)に改定され、わが国においても2027年からのICD-11の運用を目指して準備が進められており、国内外においてICD-11の分類体系に則った医学・医療が求められることになる。

    これまで精神科領域の疾病はICD-10の「精神および行動の障害」で規定されたF0からF9の10コード番号により整理されてきたが、これからは国際疾病分類第11版(ICD-11)の「精神・行動・神経発達の疾患」として整理されている疾患・障害名を用いることになる。ICD-11「精神・行動・神経発達の疾患」には、20世紀後半から積み上げられてきた精神医学・脳科学および関連領域の膨大な知見が集約されており、ICD-10から数多くの変更・修正・追加が加えられた内容となっている。これから精神医学・精神医療に関わる人にとっての基盤であり、共通言語として活用されるべきものである。

    精神医学領域でのコメディカル教育を目的として刊行された「精神医学テキスト」(2011年)は、「精神医学マイテキスト」(2014年)として改訂され、精神医学の学習教材として広く活用されてきた。精神医学の臨床・教育・研究に従事してきた専門家により執筆された教科書であり、精神医学・医療の領域で活動する看護師・臨床心理士・リハビリテーション専門職・社会福祉士・介護士などのコメディカル専門職の知識と技術の修得に役立つ内容が評価されたからであろう。本書の発刊当時(2014年)から、ICD-11の導入に合わせた改訂が予定されていたが、2022年1月に発効したICD-11の日本への導入は延び延びになっていた。ようやく2027年からの適用が決定されたことから、改訂版を刊行することになった。これから精神医学を学ぼうとする人に本書を活用してもらいたい。

    臨床医学の教育現場に「患者は師」との言葉がある。疾患を理解するためには患者を診ることが最も重要という意味である。患者さんと対面し、観察し、話を聴いて、共に考え、最善の対応を考え出すという臨床作業は、患者を診ることによって醸成される。そして、疾患を理解するということは、その疾患の患者さんに最善の判断と対応を提供することである。

    精神医学の初学者から「精神医学は難しい、取っ付きにくい」との言葉を聞くことも多い。精神医学の難しさは、科学的な合理性と共に、人間そのものを理解し共感するという了解が求められることにある。患者さんを診ずして何も言うことはできない。合理的な理解をしながらもそれを生かすための人間的な共感性が求められるからである。このような共感性を涵養するためには、患者さんの体験を共有することが求められる。このような精神医学の大きな特徴を踏まえて、本書では章ごとに実際の症例を加えて記載することにした。本書の執筆者はいずれも精神医学の臨床・教育の場での経験を有しており、患者を診ずして書かれた部分は一つもない。このような臨床に裏打ちされた記述が随所に盛り込まれており、精神疾患を学ぶ人にとって解りやすい記述となっている。

    精神医学の臨床はチーム医療であり、コメディカルスタッフと共に行われることは言うまでもない。本書は、精神科医療に携わるコメディカルスタッフの学習に役立つ教科書である。これから精神医学・医療を学ぼうとする人たちには、精神医学・医療の領域の多くの患者さんに役立つ人材として成長されることを期待したい。

    2026年2月
    編者を代表して
    和泉大学学長 武田雅俊

    目次

    1章 序論―ヒューマニズムとしての精神医学
    1 精神医学の重要性
    2 精神医学の方法と基本的態度
    3 精神医療・医学の歴史
    4 精神医学の諸分野

    2章 精神症候学
    1 精神機能の諸要素
    2 意識の異常
    3 知覚の異常
    4 言語・行動の異常
    5 記憶の異常
    6 知能の異常
    7 見当識の異常
    8 思考の異常
    9 気分、感情、情動の障害
    10 意欲の異常
    11 自我意識の異常
    12 状態像、症候群

    3章 脳局在症候
    1 脳局在症候(巣症状)(神経心理症候)
    2 失語(aphasia)
    3 失認(agnosia)
    4 失行(apraxia)
    5 記憶障害
    6 前頭葉機能障害、遂行機能障害
    7 社会的行動障害、意欲障害、情動障害

    4章 精神疾患の分類
    1 精神疾患分類の特殊性
    2 身体病理と精神病理
    3 ICDとDSM
    4 診断の信頼性
    5 診断の妥当性
    6 批判と今後の課題
    7 まとめ

    5章 検査
    (1)心理検査
    1 心理検査とその目的
    2 心理検査実施における留意点
    3 心理検査の種類
    4 知能検査・認知機能検査
    5 神経心理学的検査
    6 人格検査(パーソナリティ/性格検査)
    7 精神症状評価尺度
    8 発達検査
    9 心理検査における多職種連携

    (2)生理学的検査
    1 生理学手検査とは
    2 脳波(EEG)
    3 睡眠ポリグラフ検査(PSG)
    4 誘発電位・事象関連電位・脳磁図

    (3)画像検査
    1 画像検査の種類と目的
    2 脳形態画像検査
    3 脳機能画像検査

    6章 神経発達症
    1 知的発達症
    2 発達性言語症
    3 自閉スペクトラム症(ASD)
    4 発達性学習症
    5 発達性運動協調症
    6 注意欠如・多動症(ADHD)
    7 常同運動症
    8 チック症

    7章 統合失調症とカタトニア
    Ⅰ.統合失調症
    1 統合失調症(シゾフレニー)の歴史的背景
    2 疫学
    3 発症要因
    4 診断基準
    5 臨床症状
    6 経過と長期予後
    7 治療

    Ⅱ.関連疾患

    Ⅲ.カタトニア

    8章 気分症
    1 気分症とは
    2 歴史
    3 気分症の分類
    4 疫学
    5 症状と状態像
    6 病因と危険因子
    7 診断と鑑別診断
    8 経過予後
    9 治療
    10 今後の課題

    9章 不安・恐怖関連症と強迫症
    1 神経症(旧称)の概要
    2 不安症群
    3 強迫症または関連症群

    10章 ストレス特異的関連症
    1 はじめに
    2 心的外傷後ストレス症(PTSD)
    3 複雑性心的外傷後ストレス症(CPTSD)
    4 遷延性悲嘆症(PGD)
    5 適応反応症(AD)
    6 反応性アタッチメント症(RAD)
    7 脱抑制性対人交流症(DSED)

    11章 解離症
    1 概要と歴史
    2 解離症の分類と診断基準
    3 病因
    4 鑑別診断
    5 治療

    12章 食行動症・摂食症と排泄症
    1 摂食や排泄をめぐって展開する精神の疾患
    2 摂食症群
    3 神経性やせ症(anorexia nervosa)
    4 神経性過食症(bulimia nervosa)
    5 その他の摂食症群の疾患
    6 排泄症群
    7 治療

    13章 身体的苦痛症・身体的体験症
    1 身体的苦痛症の概念
    2 疫学
    3 鑑別
    4 治療
    5 身体完全性違和
    6 心気症
    7 解離性神経学的症状症
    8 他に分類される障害または疾患に影響を及ぼす心理的または行動上の要因

    14章 物質使用症・嗜癖行動症
    1 酒は百薬の長
    2 健全な飲酒
    3 病的な飲酒
    4 アルコール依存症者の心理
    5 薬物としてのアルコール摂取
    6 離脱症状
    7 治療
    8 アルコール以外の薬物依存
    9 嗜癖行動

    15章 衝動制御症と秩序破壊的・非社会的行動症
    1 衝動制御症候群
    2 秩序破壊的または非社会的行動症候群

    16章 パーソナリティ症、パラフィリア症、作為症と詐病
    1 パーソナリティ症とは
    2 パーソナリティ症の分類
    3 疫学
    4 病因
    5 経過
    6 依存症
    7 診断
    8 診断上の留意点
    9 防衛機制
    10 臨床上の困難
    11 主な治療法
    12 パラフィリア症とは
    13 作為症と詐病

    17章 認知症と他の神経認知障害
    1 認知症の背景(総論)
    2 各論

    18章 症状性を含む器質性精神疾患
    1 身体と精神(こころ)の相互作用を理解するために
    2 なぜ身体不調は精神不調を引き起こし、精神不調は身体不調を引き起こすのか?
    3 様々な身体疾患によって生じる精神不調
    4 評価と鑑別に重要なポイント
    5 代表的な精神症状

    19章 睡眠・覚醒障害
    1 精神医学と睡眠・覚醒障害
    2 睡眠・覚醒障害の診療における主訴と問診
    3 睡眠評価のための代表的な検査法
    4 不眠症状を呈する疾患
    5 過眠症状を呈する疾患
    6 生体時計の乱れが原因となる疾患
    7 睡眠中に異常行動が生じる疾患

    20章 てんかん
    1 てんかんとは
    2 てんかんの分類
    3 てんかんの発作
    4 てんかんと精神症状・併存症
    5 診断のための観察ポイント
    6 てんかん患者の心理社会的問題
    7 てんかんに伴う社会的な問題
    8 てんかんの治療と看護
    9 てんかんの包括的治療

    21章 治療
    (1)身体的治療
    1 身体的治療とは
    2 薬物療法
    3 電気けいれん療法(ECT)

    (2)精神療法
    1 精神療法とは
    2 理論、実践、治療効果研究、実験
    3 小精神療法ないし支持的精神療法
    4 意識変容・体験的精神療法
    5 洞察的精神療法
    6 指示的・訓練的精神療法
    7 家族療法
    8 リハビリテーション
    9 東洋的治療
    10 その他

    22章 法律と制度
    1 法と人権におけるコンフリクト
    2 精神保健福祉行政の歴史
    3 改正精神保健福祉法(令和4年)に至る経緯
    4 精神保健福祉法(令和4年改正)の概要
    5 入院形態および通報制度について
    6 虐待通報制度(新設)(精神保健福祉法第40条の2~8)
    7 医療観察法(医療観察制度)について
    8 障害者総合支援法について

    執筆者一覧

    ■監修
    武田雅俊  和泉大学学長/大阪大学名誉教授

    ■編集
    武田雅俊  和泉大学学長/大阪大学名誉教授
    西川隆   大阪府立大学名誉教授/奈良学園大学名誉教授/大阪自彊館診療所所長
    中尾和久  甲南女子大学心理学部教授

    ■執筆者一覧
    吾妻壮   上智大学総合人間科学部心理学科教授
    足立浩祥  大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター教授
    池尻義隆  神戸女子大学心理学部心理学科教授
    石井良平  大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科教授
    漆葉成彦  佛教大学保健医療技術学部作業療法学科教授
    小笠原將之 関西福祉科学大学心理科学部心理科学科教授
    喜多村祐里 大阪府守口保健所副理事/大阪大学招へい教授
    武田雅俊  和泉大学学長/大阪大学名誉教授
    谷向仁   名古屋市立大学医学部保健医療学科教授
    手島愛雄  いずみがおかメンタルクリニック院長
    中尾和久  甲南女子大学心理学部教授
    中川賀嗣  北海道医療大学リハビリテーション科学部言語聴覚療法学科教授
    西川隆   大阪府立大学名誉教授/奈良学園大学名誉教授/大阪自彊館診療所所長
    福原啓太  奈良学園大学保健医療学部リハビリテーション学科准教授
    補永栄子  大阪大学大学院連合小児発達学研究科助教
    丸山総一郎 神戸親和女子大学名誉教授
    安田由華  医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニック理事長
    横井公一  微風会浜寺病院

    トピックス