こどもの血液培養と菌血症 こけつきん11のオキテ

    定価 3,740円(本体 3,400円+税10%)
    編集志馬伸朗
    広島大学救急集中治療医学
    A5判・160頁
    ISBN978-4-7653-1972-0
    2023年12月 刊行
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    ニッチ領域の臨床的ジレンマ! こけつきんで聞かれてきた、よくある質問に関するQ&Aが満載

    内容紹介

    血培の重要性については理解されつつありますが、血液培養結果の解釈について、大人と子供の違いは十分には理解されていません。また、子供の菌血症・血培についての書籍や菌血症診療をトータルで扱う書籍の刊行点数も少ない状態です。

    本書は、「こどもの血液培養と菌血症カレッジ」(略称:こけつきん)を主催するメンバーが編集・執筆。重症化しやすい菌血症の確定診断のための血液培養から診断と治療について、検査をする基準から治療方針、患者マネジメントの方法まで記した内容となっています。

    Q&A冒頭のこけつき先生、研修医マッキー、カレツジ技師、ソノダによる血培あるあるの寸劇を足がかりに、菌血症を疑ったとき、何をしたらいいのか、何を考えたらいいのかがわかります。

    序文

    こけつきんだより~まえがきにかえて

    この書籍は、こけつきんりょくの仲間達により作られた。

    こけつきんりょくとは、「こどもの血液培養と菌血症カレッジ」の略である。2017年12月13日に神戸で生まれた。小児患者における血液培養に対して尋常ならぬ拘りをもつ変わり者の集まりだ。

    そもそもこどもの血液培養なんて、大多数の医療従事者にとっては見たことも聞いたこともないものだろう。一応は知っているという数少ない医療従事者にとっても、たいした関心もないもののはずだ。なんかたまに熱があったら提出してますけど、ちょこっとCNSとか生えるだけだし、なんかよくわからんし、とか。

    こけつきんりょくの仲間達はその様なニッチ領域の臨床的ジレンマに5年以上も取り組んできた。いくら悩んでも答えが出るものではないが、とりあえずここらで悩みのまとめをしておこう、というのがこの企画の主旨である。

    大げさな教育目的や、学問的意義があるわけではない。そして、筆者達はただ単に楽しんだだけである。読者が楽しめるかはわからないが、折角手に取ってくださったのなら、是非とも楽しんでほしい。3回くらい繰り返し読めば、味がわかると思います。

    2023年8月
    酷暑の最中、球場跡地のスターバックスにて
    志馬伸朗


    おわりに

    2023年5月9日以降新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類定点報告感染症と位置づけられました。それ以降、小児医療現場ではほんとうの意味で「日常」が戻りました。入院ではRSV感染症重症例の増加、夏休みシーズンにCOVID-19入院例、外来ではヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、手足口病で患者があふれました。これは異常ではなく(むしろコロナ禍で感染症の発生が少なかったことの方が異常でした)、小児感染症というのは、このようなものであると言えます。

    しかしながら、軽症小児患者が多くなると、一部に重症小児患者が発生します。なぜなら感染症は「確率」の問題であるからです。感染症患者が増えれば、当然重症細菌感染症(尿路感染症や菌血症)が増え、重症患者に一定出会う可能性が高まります。例えば早期乳児発熱でのCOVID-19陽性の尿路感染症(やそれに伴う菌血症)やB群連鎖球菌(GBS)や肺炎球菌などの菌血症は各所で報告されています。これらの重症で治療可能な疾患を見逃さないためには、基本的な小児診療を日々繰り返すことが不可欠です。

    「重症」とはっきり言い切れないけれども、直感的に気になる患者(グレーゾーン)がいます。その時には、血液培養を採取してみましょう。そうすることで、治療可能な陽性結果に出会うことがあります。この出会いの繰り返しが、臨床医として実力を高めます。コンタミネーション(汚染)のリスクも考えられますが、しかしコンタミネーションを恐れるために、自分の直観を信じないで検査しないのは論外です。確かに検査しないならば、コンタミネーションの確率はゼロになりますが、その代わりに重症細菌感染症のリスクを子供や家族に負わせることになります。勉強し自分の直観を信じて、勇気を持って患者と向き合ってください。時には上司から「血培はいらないよ(いらんのちゃうん)」とふんわり言われても血液培養を取って、血液培養を採取したことで良い結果が得られたという事例は多く存在します。もちろん、逆の結果が出ることもあるでしょうが(当社比較で言えば)、子どもが病気で困難に直面している場合、重症、軽症、グレーゾーンにかかわらず、私たちは彼らを支える使命を担っています。これらの経験は、小児医療の楽しさを感じ、診療の安心感と患者の安全性を向上させるのに役立ちます。そして血液培養はその一環であり、重要なツールです。

    笠井正志

    目次

    こけつきんだより ~まえがきにかえて

    Q1 なんで血液培養を採るんですか?
    1 日本の感染症診療の歴史と小児の追従
    2 なぜ、血液培養を採りすぎてはいけないのでしょうか?
    3 アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ
    4 ワクチン後の世界
    5 血液培養の役割は減じたわけではありません
    6 血液培養を標準化するうえでの本当の問題

    Q2 誰に血液培養を採ればいいんですか?
    1 血液培養の適応
    2 絶対的適応
    - (1)重症敗血症を疑った場合
    - (2)血液培養陽性率が高い感染症を疑った場合
    3相対的適応

    Q3 どうやって血液培養を採るればいいんですか?
    1 コンタミネーションをしない手技
    2 手袋は滅菌手袋じゃなければいけませんか?
    3 マスクはつけたほうがいいですか?
    4 消毒薬は何がいいですか?
    5 ルート確保したときの採血でもいいですか? ルートからの逆血でもいいですか?
    6 一番大事なことは何ですか?

    Q4 どれだけ血液培養を採るんですか? ってか2セット必要ですか?
    1 なぜ小児で血液培養の採取量を気にしたり、セット数を気にしたりするのが重要なのでしょうか?
    2 小児の血液培養検査における血液採取量
    3 小児の血液培養検査におけるセット

    Q5 嫌気ボトルっているんですか?
    1 小児用の嫌気ボトル?
    2 小児の偏性嫌気性菌起因感染症
    3 小児で嫌気ボトルを使うときの実際

    Q6 カテーテルが入っている人が発熱したんですけど? @PICU
    1 カテ感染はPICUの発熱の鑑別の最上位ですよね?
    2 カテーテル感染を疑うとき
    3 DTPは必要でしょうか?
    4 抜去カテ先培養は意味があるのでしょうか?
    5 カテ感染を疑ったらどうしますか?
    6 カテの入れ替え
    7 予防はどうしますか?

    Q7 NICUで血培採れって言われたんですけど?
    1 基本
    2 血液培養を考慮するセッティング
    3 血液採取量、セット数
    4 嫌気ボトル
    5 血液採取部
    6 結果解釈
    7 まとめ

    Q8 血液培養採った後、どうなってるの?
    1 採取当日
    - (1)血液培養採取後の保存と搬送
    - (2)ボトルの装塡
    2 1日目
    - ボトル陽性を装置が検知したときの対応
    3 2日目
    - 同定・薬剤感受性検査
    4 3日目
    - 最終報告

    Q9 どんなときに細菌検査室に行けばいいの?
    1 「血培陽性報告です!」
    2 血培陽性になったときー!
    3 まずはグラム染色を急ぐんです!
    4 検査技師が困ること!
    5 菌種の絞り込みに力を!
    - (1)陽性ボトルの種類の把握
    - (2)ボトルの外観観察
    - (3)生標本観察
    - (4)胆汁酸溶解試
    - (5)その他
    6 PCRやマイクロアレイ技術を活用してみましょう!
    7 培地で薬剤耐性を予測します!
    8 直接法を試してみましょう!
    9 迅速薬剤感受性検査を活用しましょう!
    10 これまでの主流! 全自動同定薬剤感受性検査装置の今後は?
    11 いかがでしたか?

    Q10 コンタミって言われたんですけど……?
    1 コンタミって
    2 コンタミしやすい菌種
    3 コンタミネーションによる無駄な○○
    - (1)臨床的影響
    - (2)検査室の業務負担
    - (3)医療費・検査費
    - (4)心配

    Q11 小児血液培養のこれから
    1 現場医療者ができること
    2 メーカーができること
    3 学会に期待すること

    おわりに
    索引
    付録(カラー画像)
    編者略歴

    執筆者一覧

    ■編集
    志馬伸朗 広島大学救急集中治療医学

    ■執筆者一覧(掲載順)
    日馬由貴 兵庫県立尼崎総合医療センター小児科
    伊藤健太 あいち小児保健医療総合センター総合診療科
    伊藤雄介 兵庫県立尼崎総合医療センター小児救急集中治療科
    野崎昌俊 大阪母子医療センター周産期・小児感染症科/新生児科
    山田幸司 京都府立医科大学附属病院医療技術部臨床検査技術課
    福田修  大阪医療センター臨床検査科
    笠井正志 兵庫県立こども病院感染症内科

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