Dr.ミヤタクの研修医養成ギプス
-わたしが実践してきた研修医指導内容とその方法論-

    定価 2,860円(本体 2,600円+税10%)
    宮城島拓人
    釧路ろうさい病院内科/副院長
    A5判・118頁
    ISBN978-4-7653-1884-6
    2021年11月 刊行
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    長年卓越した指導医として活躍するDr.ミヤタクによる手引書! 多数の研修医を育成してきた経験に基づき、研修医、若手指導医へ贈ります。

    内容紹介

    スポ根で育てられた昭和の医師が、新しい時代の中で育てられた研修医と付き合う過程で、どのような指導が適切なのか、不適切だったのか、正解は何なのか、今なお悩みながら指導にあたっています。

    Dr.ミヤタクの研修医指導は、EBM(Evidence based medicine:科学的な根拠に基づいた医療)ではなく、Experience based medicine(経験に基づいた医療)に近いものです。

    Dr.ミヤタクの熱い思い、日々試行錯誤していることをつづりました。指導医の考えを垣間見ようとしている研修医の先生や、これから研修医指導に携わる若手指導医の先生たちへ贈る、Dr.ミヤタク愛があふれる一冊です。

    序文

    推薦のことば

    「宮城島再生工場」とは、本書で語られる、釧路ろうさい病院内科の別名である。ほのかな愛嬌を感じるとともに、どことなく、大学でうまくやっていけなかった若い医者を田舎でゆっくり育成し直すような、牧歌的なニュアンスもある。

    しかしこれは宮城島拓人先生なりの、「一流の謙遜」であろう。なぜなら、私が知る同科の通り名は、誰が呼んだか、「北大第三内科第二医局」だからだ。

    全国の地方病院が研修医取得に苦労する中、過疎地中の過疎地である釧路市において、毎年多数の研修医・専攻医を育てて全国に輩出している様は、古き良き「大学医局」に例えられるにふさわしい。おまけに若手指導のみならず、道東圏の医療を文字通り支えているのだから恐れ入る。担当する疾病の広さよ! 消化器内科、腫瘍内科、血液内科、呼吸器内科、肝臓内科、感染症内科。これらを内科医たちが手分けして診ているわけではない。「みんな全部見る」。医局員全員がゼネラリストかつスペシャリストである。

    研修医養成ギプスとはよく言ったものだ。ただし昭和の香りは煙幕である。教授になる道を選ばなかった著者の洞察、先見、連環、矜持、後悔、理念、栄光、宿業。ナラティブは患者だけのものではない、医者にだって物語がある。

    札幌厚生病院病理診断科
    市原真


    はじめに

    前代未聞の新型コロナ感染症が世界を席巻している。まだまだ先が見えない不安の中で医療の現場はこの新規感染症の診断、治療、そして予防のためのワクチン接種に汗だくになって対応している。

    世の中は生活のニュースタイルを構築しようと必死だ。しかし、医療にはニュースタイルなどない。新型コロナウイルス感染症の出現により、リモート診療やAI(人工知能)を駆使したシステムなどの構築は加速されてきた印象はあるが、医療の本質は目の前にいる助けを求める患者をいかに救うかにある。その基本は患者の体と心に触れることであり、技術と言葉で癒すことにある。それは、未来永劫変わりはない。その文脈ではコロナ禍であろうとも、サスティナブルな研修医の指導に特別な変化はないと感じている。

    外出の制限や外食の自粛が求められる中で、病院と家との往復を繰り返す日々を送るうちに、私が釧路ろうさい病院という定点で30年近くやってきた代わり映えのしない研修医の指導の実際を言語化する意義を考えるようになった。コロナ禍だからこそ、今だからこそできるのではないか。そう考えながらキーボードをたたき始めた。

    波乱万丈な世の中の外力に惑わされない研修医との付き合い方を、読者の皆さまと共有し、少しでも共感が得られたら幸せだと思っている。

    2021年11月
    さわやかな青空の釧路にて
    宮城島拓人

    目次

    推薦のことば
    はじめに

    プロローグ
    Experience based medicineとしてのEBMを語る覚悟

    モノローグ
    1 まず私のことを語ろう
    2 研修医とは何か

    研修医養成ギプス
    鍛錬01 釧路で学ぶ覚悟、教える覚悟(4Kから新しい4Kへ)
    鍛錬02 学生と研修医の決定的違いは、生活の時間軸にある
    鍛錬03 一に挨拶、二に感謝
    鍛錬04 マルチタスク人間であれ
    鍛錬05 三つ子の魂、百まで
    鍛錬06 お前が主治医だ
    鍛錬07 広く深く
    鍛錬08 ゆりかごから墓場まで
    鍛錬09 カルテは誰のためのものか
    鍛錬10 サマリーは自分のためのみにあらず
    鍛錬11 昔はムンテラ、今はIC
    鍛錬12 職業を聞く習慣
    鍛錬13 とにかく触れる
    鍛錬14 その検査は誰のため
    鍛錬15 医療安全と院内感染対策
    鍛錬16 HBV(B型肝炎ウイルス)とHCV(C型肝炎ウイルス)を検査する理由
    鍛錬17 内視鏡養成ギプス;まずは姿勢から
    鍛錬18 エコー(超音波)検査養成ギプス;外堀から埋めよ
    鍛錬19 HIVを忘れるな
    鍛錬20 救急対応に求められるもの
    鍛錬21 まずやってみろ。責任は俺がとる
    鍛錬22 ほうれんそうにおひたし
    鍛錬23 EPOCとJ-OSLERを使いこなす
    鍛錬24 On the Job Training(OJT)ということ
    鍛錬25 脊髄反射か大風呂敷か(研修医から学ぶワークアップ)
    鍛錬26 口コミがモノを言う
    鍛錬27 来る者は拒まず、去る者は追わず
    鍛錬28 カムバックサーモン理論
    鍛錬29 NRホスピタルから発信;オール釧路で育てる試み
    鍛錬30 ケニア医療ボランティアで得たもの

    つまずいた者たちへのエール
    1 精神科に自分で入院した男
    2 ネギ嫌いの脳梗塞
    3 失踪
    4 トイレに籠城した女医
    5 スタッフとのコミュニケーションがとれないトラブルメーカー
    6 遅れてきた青年

    エピローグ
    研修のその先にみえてくるもの

    ひと休み
    新3K
    1年の差
    やりすぎは良くない
    ここにもあった、マルチタスク?
    どこまで似る!
    初期研修医のド根性
    Gastroenterohematologist
    見落としと再発
    OB(オーべー)だけでも、れっきとしたカルテ記載
    針のむしろ
    You know……
    目的を誤ると
    鼓音、濁音、濁音界
    検査誘発性貧血
    優しいだけじゃいや
    HBVワクチンは医療行為の肝である
    内視鏡で食っている話
    若い女性を診る時の心構え
    「ビンゴ!」を引き当てた研修医
    二次救急にへばりつく研修医
    ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)専門医の心境
    「し・な・び・る」
    年度末のメール地獄
    オー・ジェイ・ティー!
    負けない診断
    コロナ禍で変わる学生の指向
    自分探しをしにきた研修医
    “ほっちゃれ”でもいいですか?
    病院間シャトルバスの夢

    索引
    著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■著
    宮城島拓人 釧路労災病院内科/副院長

    トピックス

    ■2022-02-15
    本書に関する記事が、m3.comに掲載されました。

    「まずはやってみろ、責任は俺が取る」初期研修医をいきなり主治医に‐ 宮城島拓人・釧路ろうさい病院副院長兼内科部長に聞く◆Vol.1 | m3.com
    https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1012752


    ■2021-11-30
    noteでの連載「編集後記」にて、本書に関する記事を公開いたしました。

    「編集後記」とは、新刊・好評書を中心に、金芳堂 編集部が本の概要と見どころ、特長、裏話、制作秘話をご紹介する連載企画です。また、本書の一部をサンプルとして立ち読みいただけるようにアップしております。

    著者と編集担当がタッグを組んで作り上げた、渾身の一冊です。この「編集後記」を読んで、少しでも身近に感じていただき、末永くご愛用いただければ嬉しいです。

    編集後記『Dr.ミヤタクの研修医養成ギプス』|株式会社 金芳堂|note
    https://note.com/kinpodo/n/n4fb0ad1c265c


    ■2021-11-29
    本書に関する記事が、北海道新聞に掲載されました。

    研修医養成に必要なのは「オ・ヒ・タ・シ」 釧路労災病院副院長が実践書出版:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/617036