医科歯科相互連携でもっとうまくいく! 糖尿病・歯周病診療

  • 新刊
定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
編著能登洋
聖路加国際病院内分泌代謝科、東京医科歯科大学医学部
岩田隆紀
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
A5判・142頁
ISBN978-4-7653-1995-9
2024年03月 刊行
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内科医と歯科医が連携すれば、糖尿病・歯周病の診療の質がより向上する! どのように連携して診療すればよいか、実用的な医科歯科相互連携の解説書が登場

内容紹介

歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼす併存疾患で、学会レベルでは両者に関する診療ガイドラインが発行されています。しかし現場レベルでは、どのように連携を取ればいいのか、基礎知識としてどこまで知っておくべきなのか、内科医・歯科医ともに、曖昧な理解のまま診療が行われているのが現状です。

そこで本書では、両疾患の基礎的解説から最新の研究報告まで、また、糖尿病と歯周病の中間因子ともなる生活習慣関連疾患もとりあげ、両者が相互に連携できるよう、実用的な内容を盛り込み、すぐに実践できるようわかりやすく解説しました。本書を読めば、糖尿病・歯周病の診療の質がより向上するでしょう。

序文

序文

近年、糖尿病と歯周病の相互関連性が注目されている。実際、それぞれに対する予防や治療により相互のアウトカムが改善する実証も増えてきている。日本糖尿病学会や日本歯周病学会は両者に関する診療ガイドラインを約10年前から発行している。また、糖尿病連携手帳や診療情報提供システムも確立している。

しかし、現場ではその相互関連性の認識や理解は高くはなく、連携システムも十分に活用されていないのが現実である。これには、内科医師*と歯科医師による両者を対象とした実用的指南書や教育機会が乏しいことによる影響が大きいであろう。臨床医として、そして医歯学生に同時に教鞭を執る教育者としてこの障壁を常々痛感している。

*糖尿病診療を担当する医師は内科医師が大半であるため、本書では便宜上「内科医師」としているが、内科以外の糖尿病担当医師も含む。

そこで、内科領域と歯科領域の専門医の方々に、自科・他科を同時に対象としたわかりやすい執筆をしていただいた。この点で今までにない実用的相互連携解説書であることは間違いない。内容は、基礎的解説から最新の研究報告まで広範にわたる。ご自身の領域の解説も復習やスキルアップに役立つように工夫してある。糖尿病と歯周病の中間因子ともなる生活習慣関連疾患にも解説が及んでいるのは類を見ないであろう。また、実用性・現実性を高めるために実症例や啓発活動例も随所に紹介している。

糖尿病の診療の最終的な目標は、糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質(QOL)の実現を目指すことである。そのためには、糖尿病合併症の発症・進展を抑えるだけでなく、歯周病の予防・治療による血糖コントロールや他の生活習慣関連疾患の改善が有用であろうことは論をまたない。歯周病の診療目的もまたしかりである。

読者の先生方が本書を日常的に活用して頂くことで診療の質が向上することを切願している。

謝辞
本書の企画・執筆にあたり終始ご助言・ご提案を下さいました東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野 水口俊介教授に深謝いたします。

聖路加国際病院内分泌代謝科部長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
能登洋


序文

前職の医学部附属病院は日本一の1型糖尿病患者数を誇る病院であり、患者会も組織されていた。患者会から「糖尿病と歯周病に関しての講演をしてもらえないか」との要請があり、講演後、多くの糖尿病患者とお話しする機会も頂いた。そのときに衝撃的だったのは、20代女性の1型糖尿患者が歯を全部抜歯され、総義歯を使っていたことだ。今から10年以上前のことだが、歯を可能な限り残すことがQOL向上に役立つと信じている歯科医師としては。全抜歯という治療が本当に正しかったのか大きな疑問を持った。この患者がどの程度糖尿病が進んでおり、どの程度歯周病が糖尿病を悪化させているのかまでは伺うことはできなかったが、ともかく永久歯28本以上が抜歯されたにもかかわらず、元気にニコニコ話していたのが印象的であった。

この10年間で歯科以外の先生方にも直感的にわかりやすい、歯周炎の歯周組織炎症を簡便に評価するPeriodontal Inflamed Surface Area(PISA)という指標1)が導入され、日本歯周病学会ではPISAの記録を義務づけている。本邦においても歯周炎患者においてPISAと末梢血中のIL-6濃度に有意な正の相関を示すことが報告され、今後は医科との治療方針決定に関する情報共有に役立つであろう。また、歯周病は糖尿病だけでなく、さまざまな疾患との連関する報告が相次ぎ、今後の医科歯科連携はますます必要となるであろう。

1993年にアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の歯科医師Löeによって“歯周炎は第6番目の糖尿病合併症である”と提言されてからちょうど30年が経つ2)。この間に生活習慣病は急速に拡大し、その多様な特性から因果関係がつかみにくいものの、殊、糖尿病と歯周病の連関は先人たちの多大な努力から明確となり、日本糖尿病学会、日本歯周病学会それぞれのガイドラインに掲載されるに至っている。本書ではそれらをもとに読者へ最新の情報を提供するべく、医科歯科連携の重症性を医科・歯科の専門家にご執筆いただいた。この場をお借りして御礼させていただくとともに、現場の先生方には本特集で得られた知見を日常臨床に活かしていただければ幸いである。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野教授
岩田隆紀

参考文献
1)Nesse W, et al.: Periodontal inflamed surface area: quantifying inflammatory burden. J Clin Periodontol 35: 668-673, 2008
2)Löe H: Periodontal disease. Periodontal disease. The sixth complication of diabetes mellitus. Diabetes Care 16: 329-334, 1993

目次

Ⅰ 糖尿病編

1 歯科における糖尿病の知識の重要性

2 糖尿病の基礎知識
1 疫学
2 病態
3 診断
4 分類
5 症状
6 合併症

3 糖尿病の治療
1 管理目標値
2 治療法

4 内科医から歯科医に伝えたいこと
1 内科における歯周病対応の現状
2 問診内容
3 歯科処置時の糖尿病治療薬の休薬について
4 歯科治療前後の抗菌薬投与の適応
5 低血糖・高血糖
6 シックデイ
7 内科受診を急ぐべき状況・病状

Ⅱ 歯周病編

1 内科における歯周病の知識の重要性

2 歯周病の基礎知識
1 疫学
2 病態・重症度
3 症状
4 全身への影響

3 歯周病の治療
1 歯周病予防法・口腔内衛生
2 歯科治療法
3 歯周治療による糖尿病罹患リスク・血糖コントロールへの影響
4 歯周治療において内科医と歯科医が注意したい疾患

4 歯科医から内科医に伝えたいこと
1 歯科における糖尿病対応の現状
2 問診内容
3 食事・運動・生活の制限
4 糖尿病患者における抜歯の治癒
5 歯科処置前血糖コントロール
6 歯科受診を急ぐべき状況・病状
7 相互連携の基準や頻度
8 まとめ

コラム
歯科医療に役立つ糖尿病ステップアップ研修講座
医歯連携の実際 自治体と協力して糖尿病と歯周病の関係を市民に啓発!将来の健康・健口生活を目指して
愛媛Dental Diabetes 研究会(愛媛DD研究会)(その1)
歯科医院における簡易血糖測定の有効性
愛媛Dental Diabetes 研究会(愛媛DD研究会)(その2)
EBM(Evidence-Based Medicine)

執筆者一覧

■編著
能登洋   聖路加国際病院内分泌代謝科、東京医科歯科大学医学部
岩田隆紀  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野

■執筆者一覧(五十音順)
石川晋   医療法人石川歯科
今井千尋  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
大杉勇人  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
岡本将英  岡本医院おかもと糖尿病・内分泌クリニック
片桐さやか 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
玉寄皓大  聖路加国際病院内分泌代謝科
外池美恵  聖路加国際病院内分泌代謝科
新田浩   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科総合診療歯科学分野
畑佐将宏  佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
水谷幸嗣  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
森田和機  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
吉田澄子  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野

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