免疫関連有害事象irAEマネジメント mini

    定価 3,520円(本体 3,200円+税10%)
    峯村信嘉
    三井記念病院総合内科科長
    B6判・227頁
    ISBN978-4-7653-1985-0
    2024年03月 刊行
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    ベッドサイドでも使えるirAE対応の指針が満載

    内容紹介

    本書は前著『免疫関連有害事象irAEマネジメント 膠原病科医の視点から』をコンパクト化した、irAEマネジメントのハンドブックとなっています。

    免疫チェックポイント阻害薬の副作用とその対応を網羅した前著から、診断・治療のポイントをフローチャート化し、「irAEミミック」「irAE緊急症」「ステロイド」「薬剤」「合併症」「irAE皮膚障害」「irAE下痢・腸炎」「内分泌系irAE」「irAE肺障害」「神経系irAE」「irAE肝炎・膵炎・胆管炎」「リウマチ性irAE小児」「irAE急性腎障害」「血液学的irAE」「irAE眼障害」など18章に再構成。irAE治療の基本薬であるステロイドまたはその他の補助薬を適切に使いこなすための手助けになること間違いなしです。

    がん病棟の医師・看護師・薬剤師など多職種にうれしい一冊です。より実践的な内容をよりminiサイズな形態で! 前著をお持ちの方にもおススメです。

    好評姉妹本

    免疫関連有害事象irAEマネジメント 膠原病科医の視点から – 株式会社 金芳堂

    序文

    はじめに

    本書は前著同様irAEマネジメントについての書籍なのですが、より実践的な内容をよりコンパクトなサイズにおさめた本を目指して書き上げられました。前半においてはirAE診断に際して紛らわしい病態(ミミック)やirAE緊急病態について触れつつも、irAE治療の基本薬であるステロイドまたはその他の補助薬を適切に使いこなすためのガイドブック的な内容が主軸となっています。後半は皮膚障害に始まり眼障害に至るirAE各論から構成されていますが、いずれの章の冒頭においても「診断・治療のポイント」と題するフローチャートを掲げており、診断(irAE病態の可能性を想起)から治療(何らかアクション)に如何に迅速に結び付けていくのかを可視化することで、病棟や外来などの現場で適切な臨床判断を下す際の助けになることを目指しています。

    「irAE(内分泌系を除く)治療の基本薬は(治療量の)ステロイド、他の機序の免疫抑制薬・生物製剤はステロイド治療抵抗性・減量困難時の補助薬」が治療における鉄則その1とするならば、鉄則その2は「治療開始まで与えられている猶予を大きく取り違えない」とすべきかもしれません。エンピリック・ステロイド・パルス治療に踏み切るべきirAE心筋炎や高グレードirAE-CRS病態が存在する一方で、irAE関節痛・節炎を疑う膝関節痛に際しては骨転移などを否定すべく画像検査は欠かせず、エンピリック・ステロイド治療は極力回避すべきです。この猶予を取り違えない事、例えば心筋炎を疑う状況でまず評価を行って(虚血を除外して)からステロイド・パルスという順序では後手にまわる恐れが生じます。4章のステロイド使用法においてはこの猶予・タイムラインに沿う形で解説を進めています。この時間軸(すなわち緊急性/重要性を常に意識)を踏まえることで各種ガイドライン(本書の最終校正は最新のirAE治療ガイドライン[2023年10月11日に更新されたNCCNGuidelines Version 3.2023]の内容まで網羅しています)の推奨を適切に解釈することが可能となることを願っています。

    前著(免疫関連有害事象irAEマネジメント 膠原病科医の視点から、2021.)と本書の関係は大著であるハリソン内科学(Harrisonʼs Principles of Internal Medicine.)とポケット判(Harrisonʼs Manual of Medicine.)の関係になぞらえることが出来るかもしれません。けれどハリソンのポケット判は、判型こそポケットサイズであるものの余裕で1000頁を超えており常に携帯するのはやや困難であるのに比して、本書のページ数は約230頁であって白衣のポケットにおさめることも何とか可能です。「irAEマネジメント mini」というタイトルではありますが決して前著の縮刷版という意味ではありません。前著のアップデート版という側面があることを否定しませんが、それがメインではありません。本書執筆に際して前著は参考文献の一つではありましたが、前著に準拠するようにして前著のエッセンスをまとめなおした本ではありません。irAE入門書を強く意図している訳ではないのですが、本書だけでは十二分に把握できない、または広く参考文献にあたりたいという場合には親本の該当箇所にあたっていただくことをお勧めします。本書の内容は(ほぼ)すべて本書のために書き下ろされたものです。前著と本書の間に共通点があるとすればそれは1)著者が同じであること、2)表紙デザインを担当したのが前回同様長女であること、3)担当して下さった編集者は前著同様浅井健一郎さんであって、前著同様浅井さんの丁寧で的確な指摘無くしては完成に至りませんでした。前著を最近購入したばかりなのだけれど本書をあらたに購入する意義はあるのでしょうか? と問われたらば、「前著が少しでも役立ったようでしたら本書も役立つ可能性があるかもしれません」とお答えするほかありません。前著が幸いにして(予想を超えて)多くの臨床現場で広く用いられたという嬉しい実績(それはさも成人して家を出た息子が遠くで生き抜いているばかりか頑張って活躍している様子を伝え聞くような心持ちでした)が本書の出版に至る経緯の全てを支えてきたという流れがあります。この3年がん治療の最前線において前著を利用して下さったおひとりおひとりに心から感謝します。

    ステロイドもそうなのですが、他の免疫抑制薬・生物製剤の中にはこれまで一度も処方したことがないという薬が必ず含まれているはずです。けれど敵(治療抵抗性irAE)と立ち向かうに際して今この薬の助けを借りねばという時に(それを可能とするための院内体制の整備は欠かせませんが)、その決断の勇気を本書が支えてくれるならば、本書の大きな目的は達せられたこととなります。

    2024年1月
    峯村信嘉

    目次

    はじめに

    1章 irAE総論
    1-1 irAEについて最低限知っておきたいこと
    1-2 irAEを疑うべきとき
    1-3 irAE対策:事前に行うべきこと

    2章 irAEミミック
    2-1 irAEミミック(irAE様の病像呈する病態)を考慮すべきとき
    2-2 ICI治療中の急な高熱+血圧低下の際に考える病態
    2-3 irAE心筋炎ミミック
    2-4 自己免疫疾患合併がん患者におけるirAEミミック
    2-5 irAE皮膚障害ミミック
    2-6 irAE下痢・腸炎ミミック
    2-7 irAE下垂体炎ミミック
    2-8 irAE肺臓炎ミミック
    2-9 irAE脳炎ミミック
    2-10 irAE肝炎ミミック
    2-11 リウマチ性irAEミミック
    2-12 irAE腎障害ミミック

    3章 irAE緊急症(irAE emergency)
    3-1 irAE心筋炎(myocarditis)
    3-2 irAEサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)
    3-3 irAEかどうかわからないものの状態が悪い

    4章 irAE治療に用いられる薬剤:ステロイド
    4-1 irAE治療におけるステロイドの用い方(治療開始タイミング)
    4-2 irAE治療におけるステロイドの用い方(ステロイドの種類および初期用量)
    4-3 ステロイド抵抗性irAEの治療方針
    4-4 ステロイド漸減スケジュール
    4-5 irAE治療におけるステロイドの用い方(副作用対策)
    4-6 処方の実際

    5章 irAE治療に用いられる薬剤
    5-1 インフリキシマブ(レミケード®)
    5-2 ミコフェノール酸モフェチル(MMF;セルセプト®)
    5-3 タクロリムス(プログラフ®)
    5-4 トシリズマブ(アクテムラ®)
    5-5 ベドリズマブ(エンタイビオ®)
    5-6 リツキシマブ(リツキサン®)
    5-7 ウステキヌマブ(ステラーラ®)
    5-8 アバタセプト(オレンシア®)
    5-9 トファシチニブ(ゼルヤンツ®)

    6章 irAE治療に用いられるその他の武器
    6-1 IVIG
    6-2 血漿交換

    7章 様々な合併症を有するがん患者におけるirAE
    7-1 自己免疫疾患合併がん患者
    7-2 間質性肺疾患合併がん患者
    7-3 臓器移植後がん患者
    7-4 結核合併・既往有するがん患者

    8章 irAE皮膚障害
    8-1 irAE斑状丘疹性皮疹
    8-2 irAE掻痒
    8-3 irAE-SJS/TEN/水疱性皮膚障害その他の重症皮膚irAE

    9章 irAE下痢・腸炎
    9-1 解説
    9-2 検査
    9-3 鑑別診断
    9-4 見逃してはいけない病態(即座の介入を要する病態)
    9-5 治療

    10章 内分泌系irAE
    10-1 irAE甲状腺炎
    10-2 irAE下垂体炎
    10-3 irAE-1型糖尿病(irAE-T1DM)
    10-4 irAE副腎炎
    10-5 irAE副甲状腺機能低下症

    11章 irAE肺障害
    11-1 irAE肺臓炎
    11-2 irAEサルコイドーシス様肉芽腫症(irAE sarcoid-like granulomatosis:irAE-SLG)

    12章 神経系irAE
    12-1 irAE重症筋無力症(irAE-MG)
    12-2 irAE-GBS
    12-3 irAE筋炎
    12-4 irAE脳炎
    12-5 irAE髄膜炎

    13章 irAE肝炎・膵炎・胆管炎
    13-1 irAE肝炎
    13-2 irAE膵炎
    13-3 irAE胆管炎

    14章 リウマチ性irAE
    14-1 irAE関節痛・関節炎
    14-2 irAEリウマチ性多発筋痛症(irAE-PMR)
    14-3 irAE筋炎
    14-4 irAE乾燥症候群
    14-5 irAEサルコイドーシス
    14-6 irAE血管炎

    15章 irAE腎障害
    15-1 irAE急性腎障害(irAE-AKI)
    15-2 irAE腎障害(糸球体病変)

    16章 血液学的irAE
    16-1 irAE自己免疫性溶血性貧血(irAE-AIHA)
    16-2 irAE免疫性血小板減少性紫斑病(irAE-ITP)
    16-3 irAE好中球減少

    17章 irAE眼障害
    17-1 irAE眼障害

    18章 まとめに代えて~irAE診療の原則

    あとがき
    索引

    執筆者一覧

    ■著
    峯村信嘉 三井記念病院総合内科科長

    トピックス