脳神経内科の薬がよくわかる本

    定価 3,410円(本体 3,100円+税10%)
    野元正弘
    済生会今治病院臨床研究センター長/脳神経内科、愛媛大学客員教授/名誉教授
    A5判・144頁
    ISBN978-4-7653-1964-5
    2023年08月 刊行
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    脳神経内科で使われる神経疾患治療薬がよくわかる! 日々の業務の参考に

    内容紹介

    脳神経内科で使われる神経疾患治療薬は種類が非常に豊富で、なおかつ現在の超高齢社会おいてはパーキンソン病などの神経変性疾患・認知症・脳血管疾障害などで使用される頻度も高くなってきており、その特性(適応・副作用・薬物動態等)をよく理解して適切に使われる必要があります。

    本書は個々の代表的な疾患だけでなく、著者の毎日の診療に用いるメモ帳を参考に、脳神経内科で使われる神経疾患治療薬について、要点整理→病態生理→用いられる薬→効果と副作用の順で網羅的にまとめられており、必要な情報を素早くピックアップできます。

    忙しい医療の現場で上手に薬を使えるように、処方する医師のみならず、神経疾患患者に携わるすべての医師・看護師・薬剤師またリハビリ専門職の方々など、多くの医療従事者にとって重宝する一冊となっています。

    序文

    治療薬を理解するには基礎となる病理学や症候学の理解が必要で、いずれの分野にも多くの専門書や教科書が用意されている。これらの内容を簡潔にまとめ、医療の現場で手軽に復習できる本の要請をいただいた。筆者自身は毎日の診療に用いる治療薬をメモ帳に記載しており、本書はこれをもとに作成した。

    認知症治療薬で世界で初めて用いられたドネペジルは、日本の会社により開発された。現在はアミロイドβやタウタンパク質を対象とした進行抑制薬のチャレンジングな研究開発が進められている。

    脳卒中は予防が重要で血圧や糖尿病の治療、禁煙、肥満予防などの健康管理が欠かせない。再発予防には少量のアスピリンなどの血小板抑制薬やDOAC、ワルファリンが有用である。これらの薬剤は手術時には休薬を要することがあり適切な対応が求められる。

    抗てんかん薬は日本のドラッグラグの代表であったが、主要な治療薬の導入は終了し現在は適応拡大が進んでいる。また日本で開発された新しい治療薬も登場している。

    パーキンソン病は症状を改善する多くの薬が開発され、さらに進行抑制の治療薬やiPS細胞を用いた研究が進められている。

    しびれ痛みの治療薬ではNSAIDsとともに抗てんかん薬のカルバマゼピンが神経痛の治療薬として長年用いられていた。現在は皮疹を起こしにくいプレガバリン等が開発され、さらにオピオイド薬が慢性疼痛にも適応拡大され難治性疼痛の治療は大きく前進している。

    頭痛はだれでも経験する多い疾患で、肩こりが関与する緊張性頭痛としばしば前駆症状があり拍動や嘔気を伴いやすい片頭痛が多い。片頭痛はセロトニン受容体に作用するトリプタン系薬が開発されて治療は大きく進歩した。さらに予防のため抗体薬が開発されており、1か月から3か月に1回用いる注射薬で発作回数を半分程度に抑える効果が確認されている。

    不眠の治療薬はベンゾジアゼピン系治療薬が広く用いられているが、オレキシン受容体拮抗薬が上市され治療薬の選択の幅が広がった。また抗うつ薬として開発されたセロトニン作用薬も不眠を合併する例に応用されている。

    多発性硬化症や筋ジストロフィー症、脊髄性筋萎縮症などは頻度の高い疾患ではない。しかし、遺伝子治療や抗体薬など治療薬の開発が大きく進んでおり、治療法の無い治らない病気とされた疾患に大きな光が当たりつつあり後半に取り上げた。

    本書が毎日の業務の参考になれば、筆者の望外の喜びである。

    2023年7月
    済生会今治病院臨床研究センター/脳神経内科
    センター長 野元正弘
    (愛媛大学客員教授/名誉教授)

    目次

    chapter 01 認知症の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    アルツハイマー型認知症の薬
    血管障害性認知症の薬
    レビー小体型認知症の薬
    前頭側頭型認知症の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 02 脳梗塞・脳出血の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    脳梗塞の薬
    脳出血の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 03 てんかんの薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    複雑部分発作の薬
    大発作、強直間代発作の薬
    小発作の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 04 パーキンソン病の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    パーキンソン病の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 05 しびれ、痛みの薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    神経障害性疼痛の薬
    NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
    オピオイド系治療薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 06 頭痛の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    片頭痛の薬
    筋収縮性頭痛の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 07 めまいの薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    めまい症の薬
    起立性低血圧症の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 08 不眠・不安の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    不眠・不安の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 09 重症筋無力症の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    重症筋無力症の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 10 多発性硬化症・視神経脊髄炎の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    多発性硬化症・視神経脊髄炎の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    chapter 11 ギラン・バレー症候群・慢性炎症性脱髄性多発神経炎の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    ギラン・バレー症候群の薬
    慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 12 多発性筋炎の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    多発性筋炎の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 13 筋萎縮性側索硬化症の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    筋萎縮症側索硬化症の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 14 ジストニアの薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    ジストニアの薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 15 筋ジストロフィーの薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーの薬
    筋強直性ジストロフィーの薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 16 脊髄小脳変性症の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    脊髄小脳変性症に用いられる薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 17 脊髄性筋萎縮症の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    脊髄性筋萎縮症の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 18 ハンチントン舞踏病の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    ハンチントン舞踏病の薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 19 自己免疫疾患に伴う神経障害の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    自己免疫疾患に伴う神経疾患の治療薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?

    chapter 20 傍腫瘍性神経症候群の薬がわかる
    要点整理 この点を押さえておこう!
    病態生理
    傍腫瘍性神経症候群の治療薬
    効果と副作用:患者さんにどのような影響を及ぼすのか?
    ひと口メモ

    索引
    著者プロフィール
    おわりに

    執筆者一覧

    ■著
    野元正弘 済生会今治病院臨床研究センター長/脳神経内科、愛媛大学客員教授/名誉教授

    トピックス

    ■2023-09-29 24頁 ひと口メモ2 「抗血栓症薬の休薬」について
    添付文書やガイドラインでの記載自体が異なり、掲載内容がわかりにくかったため、最初に次の一文を追加します。

    出血リスクを伴う処置や手術時には、抗血栓症薬は休薬が求められる。一般に安全性の観点から添付文書での休薬期間は長くなっている。しかし、休薬中に梗塞の発症リスクが上昇することから学会でガイドラインを設けている。学会ごとに、あるいは時代や治療薬の上市に伴って複数のガイドラインが提案されている。新しいガイドラインを参考にして各症例ごとに休薬期間を検討する。