イラストレイテッド 脳波1・2・3 波形の診かた、考え方

    定価 5,720円(本体 5,200円+税10%)
    飛松省三
    九州大学名誉教授/福岡国際医療福祉大学医療学部視能訓練学科教授
    B5判・232頁
    ISBN978-4-7653-1925-6
    2022年11月 刊行
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    脳神経内科・精神科・脳外科の医師、臨床検査技師に向けて、脳波を独学で学べる参考書

    内容紹介

    現在、脳波判読を学ぶ実践的なアトラスは十数年前に作られたアトラスが中心となっていますが、この度、1952年にGibbs & Gibbsが出版した脳波アトラスの日本版的書籍が完成しました。

    本書の脳波のサンプルについては、できるだけ原寸大に近い8秒間(3cm/秒、50µV/5mm)にて掲載されており、臨床現場で目にするような、より臨場感あふれる脳波アトラスとなるよう、心がけて作成されています。

    脳波は読み解くことが難しいという先入観を捨てて、脳波判断に自信をもって取り組めるよう、一読をお薦めします。てんかん、意識障害、変性疾患を中心に、本書のタイトル通り、豊富なイラストから脳波の1・2・3を学べます。

    序文

    序にかえて

    近年の脳波計測装置の進歩は目覚ましいものがあります。多チャンネル化が進み、256チャンネルの計測装置も研究用に開発され、脳機能マッピングに必要不可欠となっています。しかしながら、頭皮上19チャンネルのルーチン脳波ですら、初心者には謎多き波形に見えます。脳MRIやCTが普及した現在では、脳神経内科医ですら、脳波判読を疎んじる傾向があります。しかし、脳波は画像で写らない脳機能を可視化できる貴重な手段です。てんかんや意識障害の診断には不可欠です。

    21世紀に入り、デジタル脳波計が脳波計測の主流になりました。デジタル脳波計は、アナログ脳波計(ペン書き脳波)とは異なり、脳波データをアナログ信号からデジタル信号へ変換し、電子媒体でデータ管理と保管を行う脳波計です。機器が小型化され、ペーパーレスとなり、コストが削減されました。電子データはネットワークでも判読できます。アナログ脳波計を使った脳波記録では、紙送りスピード3cm/秒、感度50lV/5mm、周波数帯域0.5〜60Hz、モンタージュ固定でした。一方、デジタル脳波計の特徴は、リモンタージュ機能とリフィルタリング機能です。前者はシステムリファレンスを用いて脳波を記録するため、基準電極導出や双極導出など必要に応じてモンタージュを選択できる機能です。てんかん性放電や徐波の局在決定にこのリモンタージュ機能は欠かせません。後者は、時定数(低周波数フィルタ)や高周波数フィルタを変えることにより、動きによる基線の揺れや、体動などの筋電図を除去することにより脳波の判読をしやすくする機能です。必要に応じて、紙送りスピードや感度を変更でき、位相逆転やてんかん発作の放電パターンを見やすくすることも可能です。

    我が国では多数の優れた脳波テキストが出版されています。私もこれまでに初心者・中級者向けの脳波に関するテキストを3冊出版し、幸いにも好評でした。しかしながら、我が国には脳波学のパイオニアであるGibbs & Gibbsが1952年に出版した脳波アトラス的なものがありません。なんとか脳波アトラスを世に出せないかと思い、今回アトラスとしてまとめました。本書にある脳波サンプルは、できるだけ実寸大に近い8秒間(3cm/秒、50lV/5mm)を提示しています。これにより、より臨場感あふれる脳波アトラスになるよう心がけました。また、脳血管障害や脳腫瘍などの脳占拠性病変では、脳波の診断能は脳CTやMRIに比べて遙かに劣り、急性期に臨床の場で記録されることはほとんどありません。そのため、本書ではてんかんや意識障害、変性疾患に重点を置きました。

    脳波は周波数分析、波形分析です。豊富なイラストから脳波の1・2・3を学んでいただければ幸いです。本書には「脳波=難解」という先入観を捨て、脳波の部屋の扉を開け、脳波の部屋を覗いて、脳波判読を楽しむようになっていただきたいと期待を込めています。最後に九州大学病院(脳神経内科、小児科、中検脳波室)および福岡中央病院(脳神経内科、検査室)諸氏のご協力に深謝します。

    2022年晩秋
    飛松省三

    目次

    Ⅰ章 脳波の歴史

    Ⅱ章 脳波の基礎知識
    1)4つの基本波形成分
    2)電極の配置法
    3)電極の接触抵抗(インピーダンス)
    4)キャリブレーション(校正信号)
    5)デジタル脳波計の特徴
    6)脳波の極性
    7)モンタージュ(montage)

    Ⅲ章 アーチファクト(人工雑音)
    1)定義
    2)アーチファクトの種類
    3)電極由来か否か
    4)本章のポイント

    Ⅳ章 正常覚醒脳波とその異常
    1)正常脳波リズムの発生機序
    2)正常脳波とは

    Ⅴ章 正常睡眠脳波とその異常
    1)ルーチン検査における睡眠脳波
    2)睡眠分類
    3)睡眠段階と脳波所見
    4)小児睡眠脳波
    5)睡眠パターンの異常

    Ⅵ章 脳波賦活法とその異常
    1)賦活法の意義
    2)過呼吸(hyperventilation)
    3)光刺激(photic stimulation)
    4)睡眠賦活(sleep deprivation)

    Ⅶ章 正常亜型
    1)小鋭棘波(small sharp spikes: SSS)
    2)ウィケット棘波(wicket spikes)
    3)14&6Hz陽性棘波(14&6Hz positive spikes)
    4)6Hz棘徐波(6Hz spike and wave)
    5)律動性中側頭部放電(rhythmic mid-temporal discharges: RMTD)
    6)成人潜在性律動性脳波発射〔subclinical rhythmic electrographic(theta)discharges of adults: SREDA〕
    7)ブリーチリズム(breach rhythm)

    Ⅷ章 徐波の診かた、考え方
    1)脳病変と脳波異常パターン
    2)徐波の解釈
    3)徐波の2分法
    4)病的意義の高い徐波

    Ⅸ章 てんかん性異常
    1)てんかんとは
    2)てんかん原性を示す脳波所見
    3)てんかん焦点の局在決定法
    4)前側頭部電極の活用
    5)てんかんの発作型分類と発作間欠期脳波所見
    6)発作時(ictal)と発作後(postictal)脳波所見
    7)てんかん重積状態(status epilepticus: SE)

    Ⅹ章 意識障害とびまん性脳障害
    1)脳波による意識障害の重症度評価
    2)外的刺激の有用性
    3)びまん性脳障害
    4)周期性脳波パターン
    5)昏睡時に見られる特殊な脳波パターン

    Ⅺ章 神経変性疾患
    1)変性疾患の病理と脳波
    2)認知症の脳波

    Ⅻ章 脳波判読所見とその手順
    1)脳波特有の用語
    2)脳波所見記載時に必要な用語
    3)判読ステップ
    4)所見のまとめ
    5)総合判定
    6)脳波判読でのpitfalls

    参考文献
    索引
    著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■著
    飛松省三 九州大学名誉教授/福岡国際医療福祉大学医療学部視能訓練学科教授

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