イメージでわかる! 医用超音波の新しい教科書 基礎原理と装置の「なぜ? どうして?」

    定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
    山崎延夫
    公益社団法人日本超音波医学会認定超音波工学フェロー
    A5判・244頁
    ISBN978-4-7653-1947-8
    2023年04月 刊行
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    医用超音波の基礎原理と装置に対する苦手意識を解消してみませんか?

    内容紹介

    医用超音波に対して「よく使うけど正直、原理を理解していない」、「今さら基礎について聞けない」などと思ったことはないでしょうか。物理や数式への苦手意識から避けていた医用超音波の基礎原理と装置について、わかりやすく丁寧にイラストを交えて解説しました。これぞ新しい医用超音波の教科書です。

    序文

    はじめに

    画像検査(診断)とは、身体の外から見ただけではわからない体内の病気や形態上の変化を画像化して、検査(診断)することです。代表的な検査法として、超音波検査、CT検査、MRI検査がありますが、これらの検査はどれも体内の断面を白黒の濃淡(グレースケール)で画像化しています。しかし、体内の同じ断面を画像化しても、検査法によって白く映る部分と黒く映る部分が異なります。

    ①心臓の超音波検査では心臓の内腔は黒く抜けて見えますが、MRI画像では心内腔は白く映ります。

     

    ②腹部の超音波検査では横隔膜が強い白色(高輝度エコー)で描出されることをしばしば経験しますが、CT画像では横隔膜が特段に目立って描出されることはありません。

     

    ③CT検査、MRI検査では、患者さんを寝台に横たわらせて大きな輪(ガントリ)をくぐらせると体内を画像化することができますが、超音波検査では、超音波プローブを患者さんの身体に直接接触させないと体内を画像化することができません。しかも超音波検査にはエコーゼリーが欠かせません。

     

    ④一方で、超音波検査では体内の臓器の動きや血液が流れる様子をリアルタイムに観察することできます。CT検査、MRI検査では到底できない芸当です。

    この①~④について、あなたは「どうしてだろう?」と疑問に思ったことはありませんか? あなたは後輩から「どうしてですか?」と質問されたら、簡単明瞭に答えることができますか?

    読者の皆さんには、このなぞ解きを楽しみながら医用超音波の原理や装置の仕組みを学んでいただきます。

    医用超音波の原理や装置について疑問を抱いてはいるが、今さら恥ずかしくて周りの人に聞くことができない「あなた」、勇気を出して先輩に質問してみたけれど、嫌な顔をされて明快な答えを得ることができなかった「あなた」、そんな「あなた」の悶々とした気持ちを晴らしてくれるのがこの教科書であってほしいと私は願っています。そのために、この教科書では超音波の物理や数式をできるだけ使うことなく、比喩(例え)やイラストを多用しています。あなたには医用超音波の基礎をイメージとして理解していただけるように工夫したつもりです。

    21世紀に入ってからこの20年余りに超音波診断装置(エコー装置)の小型化が急速に進み、今ではエコー装置を携帯して病院内はもちろん病院の外のどこへでも持ち運ぶことができる時代になりました。超音波検査がどこでもできるようになった今、誰もが超音波検査をできるようになることが望まれています。

    超音波検査(診断)に携わる人の数が増え、携わる人の職種が拡大しています。ベテランの病棟看護師が初めて超音波プローブを握り、在宅医が往診カバンに小型のエコー装置を忍ばせる時代になりました。その道のプロであることを自負してもエコーでは初心者という人、超音波検査を本業としない人がエコーに携わるケースが増え続けています。私は、そういう「エコーでは初心者」という人たちを頭に思い浮かべながらこの教科書を執筆しました。

    この教科書は、超音波検査士の認定試験を受ける人が一夜漬けのために手に取っていただく「試験に出る○○」的な参考書ではありません。しかし、超音波検査士の認定試験を目指す人が、この教科書を読んで、「なるほどね」と納得する項目を一つ一つ増やしていけば、それがすなわち認定試験の受験対策になるはずです。

    さあ皆さん、医用超音波の世界へようこそ!

    2023年2月
    山崎延夫

    目次

    はじめに

    第1回 そもそも超音波って何?

    1.超音波を一言でいうと? 波の基本
    2.コウモリは超音波マスターだった! 反響定位
    3.超音波が医用に使われたワケ、知りたい? 医用超音波の歴史

    コラム
    運命の出会い

    第2回 超音波が見える

    1.「波」を理解できれば音が見える 波の基本
    2.空気を読めない人でも空気を聞くことはできる 音波の伝わり方
    3.音の進行方向を自在に操る魔術師 音速と固有音響インピーダンス
    4.音波の先細りはつらいよ 減衰
    5.波と波が出会うと「ニューウェーブ」が生まれる 干渉
    6.音でスピードを測る ドプラ効果

    コラム
    エコーゼリーはなぜ必要か?
    dB(デシベル)って何?
    肝臓のブツブツは何を見ているの?
    ドプラ効果が証明された1845年へタイムスリップ
    スピードガンの原理

    第3回 これだけは押さえておきたい! 超音波診断装置の原理原則

    1.ヤッホー! 体の中が透視できちゃうすげえビーム 基本原理はパルス反射法
    2.初めましてモード学園の仲間たち:ブライトくんとモーションさん Bモード法とMモード法
    3.持ち方だけでなく中身も知っておこう! 超音波プローブの構造
    4.ビームを操る巧みな技術 電子走査法と電子フォーカス法

    コラム
    脂肪を気にしなければいけないのはお腹よりも乳房
    右ハンドルと左ハンドル パート1
    右ハンドルと左ハンドル パート2

    第4回 原理の次は画像調整の「きほんのき」

    1.大波小波なんでもござれ 対数増幅
    2.明るすぎず暗すぎず ゲイン
    3.お先真っ暗な人生を立て直す STC、TGC
    4.軟らかすぎず硬すぎず ダイナミックレンジ
    5.見やすさのあくなき追及 マップ

    コラム
    こんなところにもあった日米の違い

    第5回 限界を知ることが次の一手につながる

    1.「限界の正体」を科学する 分解能総説
    2.だんご3兄弟 距離分解
    3.電線にスズメが3羽とまってた 方位分解能
    4.夕やけ小やけの赤とんぼ コントラスト分解能
    5.走れ! エイトマン 時間分解能

    コラム
    もう1つの「方位分解能」

    第6回 「想定外」を想定する

    1.「ああ、こんなはずでは……!!」の世界 アーチファクト総説
    2.通せんぼされてお先真っ暗に 音響陰影と後方エコー増強
    3.脇役なのに目立ちすぎ サイドローブとグレーティングローブ
    4.テニスの壁打ち練習 多重反射
    5.鏡の国のアリスの悪戯 ミラーイメージ
    6.その進路変更は交通違反かも 外側陰影とレンズ効果
    7.電車でGO! で定速運転の訓練 音速の差によるアーチファクト

    コラム
    アーチファクトの出方だけで診断する摩訶不思議な世界

    第7回 流れを可視化する

    1.「可視化」と「見える化」 超音波ドプラ法総論
    2.ピーポくんが、パーポくんに変身 超音波ドプラ法の基本原理
    3.ピーポ、パーポから、「ピ」と「パ」を取り出す ドプラ信号の検出法
    4.「パーポ」が「プーポ」と聞こえてしまう訳 標本化定理とエイリアシング
    5.ドプラ3兄弟 パルスドプラ法、連続波ドプラ法、カラードプラ法
    6.ドプラ効果の宿命 角度依存性と角度補正
    7.循環生理の果てまでイッテQ! 血流量の計測

    コラム
    情熱は赤だ!

    第8回 未知(MI・TI)との遭遇に「あらら」(ALARA)

    1.そんなに大きな音を出さないで ALARAの原則
    2.音が胸キュンを引き起こす 超音波の生体作用
    3.胸キュン度を「見える化」する 超音波出力の安全性指標
    4.胸が熱くなる サーマルインデックス、TI
    5.胸が張り裂けそう メカニカルインデックス、MI
    6.未知の生態「バブル」と遭遇 造影超音波検査
    7.「アリエール」ウイルスをとことん「アタック」 洗浄と消毒

    索引
    著者プロフィール

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    ■著
    山崎延夫 公益社団法人日本超音波医学会認定超音波工学フェロー

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