医師がチームリーダーになったら読む本
-Dr.いすのチームリーダー養成塾-

    定価 2,860円(本体 2,600円+税10%)
    井須豊彦
    釧路ろうさい病院脳神経外科部長・末梢神経外科センター長
    A5判・102頁
    ISBN978-4-7653-1938-6
    2023年03月 刊行
    【 冊子在庫 】
    在庫有り

    電子書籍書店で購入

    購入数

    医師同士をまとめられずに困っていませんか? これからチームリーダーになる人や今まさにスタッフをまとめられず困っている人へ

    内容紹介

    医療技術の進歩とともに診療分野が細分化し、患者から求められるレベルも高くなってきている昨今、患者満足度を高めるためには適切かつ高度な治療に加え、医師はもちろん様々な医療スタッフの力を結集し、協力し合うチーム医療が求められています。

    ただ、医師の中には、他の医療スタッフよりも自分の仕事に邁進しすぎて全体を見ることができなかったり、自己主張をしすぎてチームワークを乱す傾向があったりする方もいます。医師同士がまとまっていない中で医療スタッフをまとめることは、至難のわざであり、患者へ良好な医療を提供することにも影響してしまいます。

    本書では、医師のチームリーダーとしてどうあるべきか、著者自身が長年試行錯誤しながら築き上げたコツや方法論を自身の経験を振り返りながら解説。これからチームリーダーになる人や、今まさに医師同士をまとめられず困っているチームリーダー必読の1冊です。

    チームリーダーとして、共に働く仲間の良さを引き出し、成長を促すことができれば、高い医療を提供することができます。そしてそれは仲間の幸せはもちろん、ひいては患者の幸せにつながっていきます。本書を通じて、自分らしいチームリーダー像を見つけてほしいです。

    序文

    医師にも医師以外にも、リーダーシップについて考える全ての方に本書を推薦します

    富山大学脳神経外科教授
    黒田敏

    このたび、井須豊彦先生が「医師がチームリーダーになったら読む本 Dr.いすのチームリーダー養成塾」を発刊しました。井須先生は、長年、北海道大学、そして釧路労災病院脳神経外科で、主として脊髄疾患および末梢神経疾患などの分野で大きな足跡を残してきました。井須先生が開発した背骨や脊髄の新しい画像診断法、新しい手術法は、日本のみならず世界で広く応用されています。最近では、われわれ日本の脳神経外科医がこれまであまり扱ってこなかった末梢神経の疾患にも新たな風を吹き込んでいます。井須先生の思想、診断や治療を学ぼうと全国から多数の若者が釧路に集結していますが、それは井須先生の頭脳や技術のみならず、そのお人柄やリーダーシップに魅了されての結果でもあります。

    本書は、そんな井須先生が長年試行錯誤しながら築き上げてきたリーダーシップ論をご自身の経験を振り返りながら、われわれに平易かつ分かりやすく、そして余すところなく解説してくれています。学生の頃から井須先生のもとで学んできた者の一人として、膝を叩きたくなる箇所が満載の「リーダーシップ指南本」です。その内容は普遍的で、医師にかぎらず、あらゆる分野でリーダーシップを学ぶ方々にとっても得るところの多いもので、自信を持って本書をお薦めしたいと思います。

    2022年11月
    立山を眺めながら記す


    推薦のことば

    釧路ろうさい病院副院長
    宮城島拓人

    啓発本やハウツー本があまた出回っている世の中で、医師という集団のチームリーダーを目指す医師たちへの指南書というのはあまり聞いたことがない。

    かなりマニアックなものと思われがちだが、ところが、井須豊彦先生はそれをこともなげにやってのけた。自身の成長の記録をふんだんに暴露しつつ、その失敗経験と成功経験をわかりやすく解説しながら、それをもとに理想のチームリーダー像を作り上げていく。

    医師という閉じられた集団を医療という分野のなかで、どうマネージメントするかという命題に迫りつつも、その結論は、あらゆる分野のあらゆる集団のリーダーはいかにあるべきかに通ずるものである。

    そういう意味では、この本は医師への献本にとどまらない懐の深さを感じる。是非、人をまとめる役割を担っているすべての人に読んでいただきたいものである。

    物語(おそらく、そういう呼称が適当かもしれない)の舞台の多くは、釧路ろうさい病院である。日本の北の端の北海道、そのさらに東の端の道東(東北海道)という壮大な面積だけを誇る過疎地域に釧路市という一地方都市がある。東京や札幌から遠く離れた地で、医療の均てん化を目指すだけにとどまらず、脊髄末梢神経外科で日本一のパフォーマンスを目指す井須軍団がどうして生まれたのか。この本を紐解けばその解はおのずと見えてくる。

    そこには、仲間と共に大きくなるチームリーダーの器がある。そして、チームリーダーの究極の目的は、そこに住む患者さんの幸せにあることを、読了とともに感じることができるのである。

    井須ワールドの真骨頂がここにある。


    医師同士をまとめられず苦労しているあなたへ

    ・医師同士のチームワークが大切な理由

    医師は病気を患い、辛い思いをしている患者から苦しみをとってあげたいと思っている。病気を治せないまでも、辛さを少しでも軽減させようとしてきた。ただ、従来の医療行為は医師と患者の対面関係が基本で、医師同士のチームワークを想定していなかった。私も医学部でそのような教育を受けてこなかった。

    医師のチームリーダーは自らも現場で働きながらチームを率いる必要がある。医療技術の進歩とともに診療分野が細分化し、患者の要求も高くなってきた昨今では、以前のように、一人の医師(例えばチームリーダー)だけがいくら頑張っても患者に最良の医療を提供することはできず、患者満足度も高めることができなくなってきた。このことをチームリーダーは自覚すべきである。

    また、適切な医療環境を患者に提供するには、医師が行う〈病気を治す医療〉だけでは不十分で、患者に寄り添い、支える医療の視点も必要である。そのためには、適切かつ高度な治療に加え、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、診療放射線技師などの医療スタッフ全員の力を結集し、チーム医療を行うことが求められている。

    ただ、医師の中には、他の医療スタッフよりも自分の仕事に邁進しすぎて全体を見ることができなかったり、自己主張をしすぎてチームワークを乱す傾向があったりするものもいる。医師同士がまとまっていない中で医療スタッフをまとめることは、至難のわざであり、患者へ良好な医療を提供することにも影響してしまう。結果的に、日常の多忙な業務の中で、様々なタイプの医師達をまとめていくという〈本業ではない作業〉に追われたり、頭を悩ませたりしていないだろうか。

    ・どのようなチームリーダーになりたいですか?

    医師のチームリーダーになってはみたものの、どのように部下の医師をまとめたらいいか悩んでいる医師は非常に多い。

    私は、学生時代から学級委員長やサークルの部長になったことさえなかったが、突然、地方病院脳神経外科の部長になり、悪戦苦闘し、悩みながら歩んできた。その間、自己中心的な医師たちを見事にまとめ上げたチームリーダーや、まとめきれず苦労していたチームリーダーたちを数多く見てきた。そこには絶対的なチームリーダーの正解はなく、自分にあったチームリーダー像を見つけていく葛藤を垣間見てきた。

    どのようなチームリーダーになるにせよ、目標をかかげ、仲間を育て、チームをまとめることが必要である。医師がチームを組んで仕事をすることで、自分一人ではできないことができるようになったり、患者がよくなった時の喜びを他の医師と共有できたりするという素晴らしい側面もある。チームリーダーとして辛いこともあるが、チーム―リーダーという立場でしか味わえない喜びもあるはずである。

    ぜひ、本書に書かれている様々な教訓や提案をもとに、自分らしいチームリーダー像を作っていただきたい。

    目次

    セクション1 私が歩んだチームリーダーへの道

    1 医師としての出発点:関わった多くのリーダーを紐解く
    1)念願の医学部に入学したが
    2)外科医に向いていないと言われた衝撃!
    3)環境を変えて、自信がついた
    ≫ コラム 親父さんと呼ばれていた初代教授との出会い
    4)外科医になって初めて褒められた
    ≫ コラム 脳神経外科と脊椎脊髄手術
    5)専門医としての出発
    6)大学スタッフとしての出発
    7)突然の転勤
    ≫ つぶやき 思えば遠くに来たもんだ

    2 チームリーダーとしての出発点:自分の振る舞いを紐解く
    1)理想とは違うリーダーとして
    ≫ コラム 地方病院の悲哀
    2)チームリーダーとしての苦悩:脳疾患治療リーダーの不在
    3)チームリーダーとライフワーク
    ≫ つぶやき 与えられたポジションでベストを尽くす
    ≫ コラム 中高年医師のチームリーダーよ、大志を抱け

    3 私が出会った優れたリーダーたち
    1)外科医でありながら科学者も目指す、信念を持ったリーダー
    2)多様な生き方を尊重するリーダー
    3)絶対にあきらめない〈匠の手〉を持ったリーダー
    4)厳しさとやさしさ、温かい心で指導してくれたリーダー
    5)優れたリーダーたちを眺めながら

    寄稿コラム①:金景成 いすグループと呼ばれています
    寄稿コラム②:藤原史明 いすグループでの研修を終えて

    セクション2 Dr.いす直伝! チームリーダー虎の巻

    1)医師がチームリーダーになるとき大切なこと
    2)チームリーダーの器以上のチームは作れないと言われるが
    3)バーンアウト(燃え尽き症候群)を生まないために
    4)気にする相手は指導者でなく、患者
    5)医療スタッフとのコミュニケーションがポイント
    ≫ コラム 小さなトラブルを無視しない
    6)論文というツール

    寄稿コラム③:金景成 学術部長としての苦労話

    7)それぞれの役割
    8)医師同士をまとめられず困ったときのワンポイントアドバイス
    ≫ コラム チームに馴染めなかった医師たちへ
    9)来てくれてありがとう
    10)習得したいと思われる魅力的な仕事をする
    11)できるところから任せ、自信をつけさせる
    ≫ つぶやき 医師の品格
    12)医師生活を豊かにするものを与える
    ≫ コラム 患者のつらいところに手が届く医師

    寄稿コラム④:千住緒美 妊娠・育児・子育てを通じて見えたチームリーダーのあり方

    13)研修を終えたものが次の研修医をリクルートする
    14)チームに場を提供する
    15)ウィン-ウィン(Win-Win)の関係でなければならない
    ≫ つぶやき 時代遅れの新しさを求めて

    セクション3 チームリーダーを楽しもう! これからのリーダーに期待すること

    1)赴任先ではチームリーダーになれ
    2)昭和型徒弟制度ではチームをまとめられないのか
    3)学術的な交流が重要
    4)一緒に夢をみて頑張りましょう

    おわりに お世話になったチームリーダーとチームの仲間に感謝
    POINT
    著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■著
    井須豊彦 釧路ろうさい病院脳神経外科部長・末梢神経外科センター長

    トピックス