小児エコー 検査直前チェックポイント
小児科医の皆さん、超音波検査に苦手意識はありませんか?
内容紹介
小児科医が疑問に持ちやすいポイントは? 見落としがちなポイントはどこ?
本書はそんな読者のために、検査直前でもチェックできるよう、ポイントだけをまとめました
小児科領域において、超音波検査はメリットの多い検査です。被爆・侵襲もなく、検査に伴う苦痛も少ないことから、繰り返し行うことができます。ただし、皆さんもよくご存じの通り、超音波検査は術者の技量がその精度を大きく左右するため、苦手意識を持つ方も多いでしょう。
本書は、そんな読者が超音波検査を行う直前に、『疑問に持ちやすいポイント』、『見落としがちなポイント』などを素早くチェックできるよう、シンプルな構成になっています。症例や画像をできる限り多く取り入れました。特に外来で見落としたくない『腸重積』や『急性虫垂炎』については多くのページを割いています。その代わり機器の使用法や疾患の詳細な解説は割愛していますので、ご注意ください。
序文
私たちのもとに多くの若手小児科医が研修に来るようになった。彼らの画像診断に取り組む目は真剣で、目の前の患者様に対して正しい診断の目を持つことの必要性を十分に感じて与えられた短い研修の機会を有効に活かそうという気構えが感じられる。その主な目的は超音波検査の上達と画像診断を基盤とした正しい小児診療の確立である。彼らも忙しい小児診療の中、せいぜい2-3か月しか研修の期間が与えられない。私たちも、彼らは画像診断に対する正書の知識よりもクリアカットなアドバイスを求めているのだとしばしば感じる。すなわち、超音波研修においては彼らの貴重な時間を有効に使って最大の研修効果をもたらしたいと常々考えている。
彼らは小児科医であるので小児科診療を実践している。その延長で数多くの症例を、超音波を用いて検査するのではなく診察してほしいと思っている。その際に、検査直前に検査のポイントを伝えるのだが、それを集めたのが本書である。ほとんどの内容作成と指導には彼らと同じ境遇から現在超音波を利用した小児診療を実践している先輩小児科医師、藤本雄介先生にお願いした。画像も許される限り多く使用するように選んでいただいている。そのため疾患の説明などは省いてあるので、小児診療に苦手意識がある方が利用する際にはこの点を考慮していただきたい。
2-3か月の研修だけではどうしても教習所の域になってしまうので、その後実践でいろいろな症例をみるように超音波を使い続けていただくことを切に願う。
赤坂好宣
放射線診断科には、多くの専攻医が勉強しに来られます。本書は彼らのために作成した超音波診断に関するスライドをまとめ直したものです。検査直前に、何をみるべきかのポイントを手早くチェックできるように、なるべくシンプルな構成を心掛けました。そのため、機器の使用法や疾患の詳細な解説は割愛し、代わりに症例や画像を多くとり入れています。
本書には、私が一般診察で経験した症例もとり入れています。特に外来で見落としたくない腸重積、急性虫垂炎に関しては多くのページを割きました。私は外来をする際に、ベッドサイドにエコーを置いて積極的に検査をしています。当初は一人で超音波検査を行うことに不安やハードルの高さを感じていました。正常か否かの判断に迷うことも、見落としのリスクもあります。それでも超音波検査に助けられた経験が積み重なり、今ではベッドサイドのエコーは必須となりました。本書が小児超音波に携わる方々の不安を少しでも和らげ、ハードルを下げることができれば幸いです。
この度、執筆の機会を与えてくださった赤坂好宣部長に心より感謝いたします。
藤本雄介
目次
1.当院における腹部スクリーニング(消化管以外)
2.基準値
3.頭頸部
1 頸部腫瘤
① 正中頸嚢胞
② 側頸嚢胞
③ がま腫
④ 乳児血管腫
⑤ 異所性胸線
⑥ 皮様嚢腫
⑦ 筋性斜頸
⑧ 梨状窩瘻
2 リンパ節腫大
① リンパ節炎
② 悪性リンパ腫、リンパ節転移
3 甲状腺機能亢進症・低下症
① 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
② 甲状腺機能低下症(橋本病)
③ 新生児の高TSH血症
4 耳下腺炎
① 流行性耳下腺炎(ムンプス)
② 反復性耳下腺炎
③ シェーグレン症候群
4.肝、胆、膵、脾
1 胆道閉鎖症
① 胆道閉鎖症
② 乳児肝炎
③ アラジール症候群
④ 胆道閉鎖症術後の経過観察
2 先天性胆道拡張症
3 脂肪肝
4 肝腫瘍
① 肝芽腫
② 横紋筋肉腫
③ 肝転移
④ 乳児肝血管腫
⑤ FNH(限局性結節性過形成)
⑥ 肝腺腫
⑦ 間葉性過誤腫
⑧ 血管筋脂肪腫
⑨ 静脈奇形(海綿状血管腫)
⑩ 胸腔内腫瘤
5 肝損傷
6 門脈大循環シャント
① 静脈管閉鎖遅延
② 肝内門脈肝静脈シャント
③ 門脈低形成
④ 血管腫
7 VOD(Veno-occlusive Disease)
8 胆石
① 偽胆石
② 胆泥
③ 急性胆嚢炎
9 胆嚢壁肥厚
① 急性肝炎
② 急性胆嚢炎
③ 胆嚢捻転
④ 右心不全
10 急性膵炎
① 総胆管拡張症
② 膵仮性嚢胞
11 膵損傷
12 輪状膵
13 膵腫瘍
14 脾損傷
15 先天性副腎皮質過形成
16 神経芽腫
17 副腎出血
5.膀胱、腎
1 膀胱壁の異常(膀胱炎、神経因性膀胱)
① 膀胱炎
② 出血性膀胱炎
③ 好酸球性膀胱炎
④ 神経因性膀胱
2 膀胱腫瘍
① 横紋筋肉腫
② リンパ芽球性リンパ腫
③ 炎症性偽腫瘍
④ 腺性膀胱炎
3 水腎症、尿路拡大
① 腎盂尿管移行部狭窄
② 尿管の途中より上位の尿路拡大
③ 尿管開口部より上位の尿路拡大
-(1)膀胱尿管移行部狭窄
-(2)膀胱尿管逆流症(VUR)
-(3)尿管異所開口と尿管瘤
④ 後部尿道弁
4 片側腎欠損
5 低形成腎、異形成腎
6 多嚢胞性異形成腎(MCDK)
7 多発性嚢胞腎(PKD)
① ARPKD
② ADPKD
③ 単純性腎嚢胞
8 腎の位置異常
① 骨盤腎
② 馬蹄腎
③ 交差性癒合腎
④ 重複腎盂尿管
9 腎腫瘍
① 腎芽腫
② 先天性間葉芽腎腫
③ その他の悪性腫瘍
④ 多房性嚢胞性腎腫
⑤ 腎血管筋脂肪腫
10 腎盂腎炎、急性巣状細菌性腎炎
① 腎盂腎炎
② 急性巣状細菌性腎炎
11 溶血性尿毒症症候群(HUS)
6.生殖器
1 子宮・卵巣の正常像
2 新生児の卵巣嚢腫
3 卵巣腫瘍
① 機能性嚢胞
② 成熟嚢胞性奇形腫
③ 捻転
④ 未熟奇形腫
⑤ 未分化胚細胞腫
⑥ 混合型胚細胞腫瘍
4 子宮奇形
① 子宮奇形
② OHVIRA症候群
5 水膣症
① 生理的な水膣症
② 処女膜閉鎖
③ 総排泄腔遺残
6 急性陰嚢症
① 精巣捻転
② 精巣上体炎
③ 精巣垂捻転
7 停留精巣
8 陰嚢水腫
9 精索静脈瘤
10 精巣腫瘍
① 奇形腫
② Epidermoid
③ Yolk Sac Tumor
④ 白血病
⑤ 外傷後の変化
⑥ 捻転後の変化
11 精巣外傷
7.消化管
1 腸重積
2 虫垂炎
① 虫垂の探し方
② 急性虫垂炎
3 腸炎
① 結腸壁の肥厚
② 小腸の腸液貯留・拡張
③ 回腸末端壁の肥厚
④ 腸間膜リンパ節の腫大
4 イレウス
5 IgA血管炎
6 肥厚性幽門狭窄症
7 腸回転異常
8 中腸軸捻転
9 重複腸管
10 メッケル憩室
11 急性胃粘膜病変
12 好酸球性胃腸炎
13 胃十二指腸潰瘍
14 腸管ポリープ
15 鎖肛
16 十二指腸閉鎖症・狭窄症
17 小腸閉鎖症・狭窄症
18 腹部リンパ管腫
8.その他
1 外鼠径ヘルニア
2 ヌック管水腫
3 腹壁ヘルニア
① 上腹壁ヘルニア
4 高安動脈炎
5 尿膜管遺残
① 尿膜管瘻
② 尿膜管膿瘍
6 脊髄
① 終糸脂肪腫
② 脂肪脊髄髄膜瘤
③ 脂肪髄膜瘤
7 股関節炎
① 単純性股関節炎
② 化膿性股関節炎
③ ペルテス病
8 腹水
9 胸水
10 腹膜播種
11 表在組織の病変
① 粉瘤
② ガングリオン
③ 石灰化上皮腫
④ 脂肪腫
⑤ 線維腫症
⑥ 血腫
⑦ 膿瘍
⑧ 蜂窩織炎
12 血管腫・脈管奇形
① 乳児血管腫
② カポジ肉腫様血管内皮腫
③ 静脈奇形
④ リンパ管奇形
⑤ 動静脈奇形
13 仙尾部奇形腫