睡眠がみえる!
-睡眠が見えれば,睡眠が診れる-

    定価 5,280円(本体 4,800円+税10%)
    河合真
    スタンフォード大学精神科睡眠医学部門
    立花直子
    関西電力病院睡眠関連疾患センター/関西電力医学研究所睡眠医学研究部
    A4判・132頁
    ISBN978-4-7653-1790-0
    2019年09月 刊行
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    昼間の覚醒の問題を解くカギは夜間の睡眠にあり―

    内容紹介

    医療従事者全員に「睡眠をみる目」を持ってもらいたいという熱い思いから生まれた、睡眠医学のエキスパート2人による初の詳細な解説付き睡眠医学アトラス。

    序文

    全ての医療従事者は睡眠をみる目を持つべし
    ―昼間の覚醒ばかりを評価して、夜間の睡眠を評価しないってどうなの?―

    突然だが、下の図を見て欲しい。

    これは陰陽勾玉巴とか太極図とか陰陽魚などと呼ばれる古代中国の道教に由来する図である。陰が夜間の睡眠、陽が昼間の覚醒を表すとも解釈できるので睡眠医学のシンボルでもある。この図は睡眠医学では夜間の睡眠と昼間の覚醒が半円で区切られるのではなく、巴の形になってお互いに入り込むので覚醒と睡眠が影響しあっているという意味でよく用いられる。さらに現代医学に踏み込んで解釈すれば「昼間の覚醒ばかりを評価して、夜間の睡眠を評価しないってどうなの?」とも言える。「昼間の外来」や「昼間の回診」で「昼間の症状」を評価して、「昼間の治療」を行なっている。そして、「どうしてこの昼間の症状が良くならないのか?」などと昼間に悩むのだ。

    いやいやいや、なぜ「夜間の睡眠」のことを少しでも考えないのか?おかしいだろう!昔の人も言ってるぞ!陰と陽は表裏一体、混然一体となって影響し合うって。

    「なるほどそれもそうだな」と思ってもらえただろうか?しかし、「そんなことを言っても、睡眠をどう評価していいかわからない。」という人も多いだろう。そう、「睡眠をみる目」を大部分の医療従事者は持っていないのだ。実はこれが問題の根幹である。みる目がないのだから見えないし、見ようとも思わないのは当たり前だ。

    こんな状況をなんとかしたい。医療従事者全員に「睡眠をみる目」を持ってもらいたい。そこで、本書では「睡眠をみる方法」に特化して解説した。この本では「みえる」「みる」という言葉が多用されている。そこには視覚的に「見える」ことから、観念的に「観える」こと、そして患者に介入していく「診る」ことが含まれている。第一部では病歴聴取、脳波、終夜睡眠ポリグラフと進んで、どうやって睡眠を見て、観るのか?から始まり、第二部では睡眠に関連する訴えや睡眠関連疾患をどうやって診るのかを解説した。
    「睡眠をみる方法」を伝えるには通常の図表だけを載せたアトラスでも、解説だけの教科書でも無理だ。「睡眠をみる」という睡眠医学の面白さの根源を逐一解説した教科書とアトラスの美味しいとこ取りをした本を作りたいと共著者の立花直子先生とも常々話していた。そしてそれが現実に出版されることになり本当に嬉しく思っている。このようなわがままに満ちた本を世に出す機会を与え根気強く編集作業に付き合っていただいた株式会社 金芳堂の一堂芳恵氏と藤森祐介氏に謝意を表したい。

    さて、この本を作成するにあたって図表をかき集めたが、なかなか入手できないものも多かった。もしも皆さんの中にさらに写真や図表を提供しても良いという方がおられたら是非連絡していただきたい。版を重ねるごとにこの本を充実させていくことができれば幸いだ。

    この本を通じて、あなたの患者の問題を解決するツールとして「睡眠をみる」というツールを加えてもらいたい。きっと強力なツールとなること間違いない。

     


    ●あとがき(立花直子先生)
    ―この本ができるまでの裏話とこの本ができてしまってからの未来―
    この本を手に取る読者の多くは、もうひとつの河合本である「極論睡眠医学(正しくは『極論で語る睡眠医学』」をすでに読まれていることと思う。2016年9月に丸善出版から「極論睡眠医学」が発刊され、売れ行きが予想以上となっていったときに、「次につくるとしたら睡眠データのアトラスだと思うんですよね。」という話が河合真先生から私の方にあった。一瞬にして「アトラス! それはすばらしい!」と、いう思いがあふれ出た。単に眠っているだけと見られがちな睡眠の中に種々の現象が隠れていることを多くの人に知ってもらいたい一心であった。しかしそんなにうまくいくのだろうか?

    睡眠医学という専門分野は、日本の医学界でほとんど認知されていない。その理由は数々あるが、一つには日本語で書かれた良い教科書が極めて少ないということが挙げられる。英語圏では数々の教科書があり、アトラスがあり、それらを集めるとあっという間に書庫ができてしまうほどである。そういった基礎的な読み物が少ない日本において、急に「アトラス」というのは一足飛び過ぎるのではないか? とまず自分にブレーキをかけた。「アトラス」を買ってくれる読者も少ないだろうから、そもそもこの話に乗ってくれる出版社があるとは考えにくい。さらに、「アトラス」というからには、自分たちの手持ちのデータを出してこなければならないが、アーチファクトが多いものは出すわけにはいかない。一晩のPSGのraw dataのうち、教えることを意図して使える部分を捜して切り取ってくることには多大な労力を伴う。「そんなデータ集められるんかいな?」という私のつぶやきで、アトラス話は消えかけた。実際にも2017年になってこの案をとある出版社に持ち込んだが、断られてしまっている。

    しかし、世の中には運と縁とがあるようで、「金芳堂から『睡眠がみえる本』というタイトルで出版を考えても良いという話が入ってきた。」と2017年10月に河合真先生から連絡があった。この時点でも本当にできるのだろうか、金芳堂の方たちが期待しているものと、こちらがつくりたいものとの刷合わせができるのだろうかと半信半疑であった。しかし、そこから後の進行は早かった。私は河合真先生に引きずられるように、「〇〇のdataはないか?」「原稿をアップしたのでチェックを早く。」の依頼のままに作業し、徐々にこの本のもつ意味と重要性を追認していった。出版にこぎつけていただいた金芳堂の関係者の皆様には心から感謝する次第である。

    さて、本ができてしまった今、やればできるんだという安堵感に加えて、「この本を読んだ人たちが次の段階に進んでくれるだろうか?」ということが気になっている。この本を読まれた皆さんは、睡眠検査の結果の数値から睡眠関連疾患の診断や治療が行われるのではなく、具体的なデータが「目に見える」ことがスタートラインであるということに気づかれたと思う。そしてその「目に見えたこと」を頼りにして睡眠医療に携わりたいという気持ちが芽生えたらそれに勝る喜びはない。ただし、ここから先はより多くのデータを指導者の下で見ていくということが必要となる。睡眠関連のデータを「見る」技術をどうマスターしていくかについては、元神戸大学精神科教授 中井久夫先生が「医学の修練について―雑記帳より―」というエッセイで書かれたものを引用し、皆さんへの今後の「睡眠をみる」修練へのメッセージとしたい。

    「ある技術をマスターする時、一つの溝というか裂け目を飛び越すのを。飛行機が離陸する瞬間のような、いわく言い難い移行状態(トランジエント・ステイト)を。(中略)とにかく皮膚科図鑑や眼底図鑑でも突然、“見え”出すのだ。それまでの見えども見えずの状態から。」(中井、1985)

    目次

    第1部:正常な睡眠と覚醒
    第1章 成人の病歴聴取から見えること、見えないこと
    第2章 小児の病歴聴取から見えること、見えないこと
    第3章 脳波を使った観察1
    第4章 脳波を使った観察2 覚醒~睡眠移行期
    第5章 PSGを使った観察1
    第6章 PSGを使った観察2

    第2部:睡眠関連疾患をどうみるか?
    第1章 「眠い」をどう診るか?
    第2章 睡眠の質をどう診るか? ~特にOSASに関して~
    第3章 「眠い」をどう診るか? ~簡易検査編~
    第4章 「眠い」をどう診るか? ~OSAS治療編~
    第5章 「眠い」をどう診るか? ~過眠症編~
    第6章 夜間の運動異常をどう診るか?
    第7章 「不眠症」をどう診るか?
    第8章 睡眠時の異常行動=パラソムニアをどう診るか?

    コラム
    1.深く掘り下げて何を聞く?
    2.とんでもなく睡眠不足な日本の子供達
    3.一見「意識障害」なのに脳波で明らかに「覚醒」だと分かった場合
    4.アナログ記録からデジタル記録へ
    5.夜、検査することで見えるもの
    6.睡眠医学と快眠法の違い
    7.アプリ、ウェアラブルとどう付き合うか?
    8.睡眠医学に関わる時のお作法について
    9.簡易検査なんてつまらない?
    10.なぜ眠るのか?観察研究と睡眠剥奪研究
    11.居眠り事故のコメントに関して
    12.脚が「むずむず」すると言って来たらどうするのか?
    13.なぜ不眠症が存在するのか?
    14.睡眠と記憶

    執筆者一覧

    ■著者
    河合真  スタンフォード大学精神科睡眠医学部門
    立花直子 関西電力病院睡眠関連疾患センター/関西電力医学研究所睡眠医学研究部

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