早期胃癌がみえる!見落とさない!胃内視鏡検査・診断に自信がつく本

    定価 8,360円(本体 7,600円+税10%)
    編著後藤田卓志
    日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野教授
    内藤裕二
    京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授/同附属病院内視鏡・超音波診療部部長
    藤本一眞
    佐賀大学医学部消化器内科教授
    A4判・248頁
    ISBN978-4-7653-1763-4
    2018年11月 刊行
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    早期胃癌診断学のエッセンス+トレーニング問題61症例!

    内容紹介

    ピロリ除菌治療の保険適用が拡大されてから、胃粘膜の見え方は多様性を帯びるとともに、胃内視鏡検診も導入された今日にあって、その検査・検診の機会はますます増えてきている。

    こうした背景のもとに、本書では、胃内視鏡検査・診断に関する知識を新たにまとめ上げ(第1章+関連知識)、胃粘膜を見る目・早期胃癌を拾い上げるための勘所を養うためのトレーニング問題を充実させた(第2章)

    胃内視鏡検査において漫然とした「観察」状態から「探す」意識に視点が変わり、早期胃癌を的確に見極め、拾い上げ、質的診断まで自信をもって行うために必要なすべてが、この1冊に集約されている。

    序文

    本邦における胃癌の罹患数は2018年の予測値で約13万人以上(男性では1位,女性で3位),死亡数は約5万人(男性では2位,女性で4位)である.一方で,がん登録・統計によれば,胃癌罹患者数の年齢ピークは1992年が65歳,2002年が70歳,そして2012年では75歳を超え,年齢調整死亡率では他の癌種と比べて激減傾向を示している.この乖離は,ピロリ感染率の減少や除菌による影響,本邦の異常な人口動態や平成28年4月から導入された胃内視鏡検診による一時的な早期胃癌発見数の増加によると考えられる.しかし,胃内視鏡検査・検診の機会が増えるということは胃癌発見数が増加するが,一方で見落としをする機会も増える可能性がある.

    胃癌の診断学は,先人たちの努力で確立してきた世界に誇れる成果である.私自身も国立がんセンター時代に「胃癌の三角」に則った診断学を叩き込まれたが,それらはピロリ菌の現感染を背景とした胃粘膜所見がベースとなっていた.このような基礎があっても胃癌の診断にはそれぞれの背景粘膜,肉眼型や組織型に多様性があり,その奥深さには日々驚かされている.日常臨床における胃内視鏡観察は,類似性を拠り所に“診(み)たことがある病変”を「探す」という行為である.一方で現在,受診する患者はピロリ菌の現感染者と既感染者,そして未感染者が混在する移行期である.「胃癌の三角」概念とは異なった,“観(み)たことがない病変”に遭遇することも増えてきた.

    胃癌の診断は,医師個々の知識や技量に大きな差があると言われている.また,胃内視鏡検査の質をどう担保するかの基準もない.現状では,“診たことがある病変”を探すという経験する(まずは観る)によるところが大きい.しかし,一人で経験できる症例数には限界がある.本書執筆にあたっては我々自身も他施設の症例を経験することで非常に勉強になった.他施設の“観たことがない病変”を観ることで,“診たことがある病変”として頭のデータベースに記録するチャンスであった.データベースを増やし,分類し,観察時にどのように使うかが胃粘膜の観察のキーポイントである.

    本書では,まず第1章で胃内視鏡検査を行うにあたって知っておくべき基礎を記載した.第2章で呈示する画像や解説の理解に必要なエッセンスであるので役立てていただきたい.第2章のクイズ形式では,我々が偶然に発見した時の画像をなるべく提示することにした.発見時にどのように見えたのか,どのような所見に注意するべきだったのか,どのように読影するのが妥当だったのか,などの解説を読者の皆様と共有することができれば幸いである.

    平成30年10月
    日本大学内科学系消化器肝臓内科学分野 後藤田卓志


    思いもかけず本書の序文を書くことになった.早期胃癌をいかにして発見するか,消化器内視鏡研修を開始した直後に最初に課せられる課題であった.胃の中を胃カメラで撮影して,その現像フイルムから胃疾患を診断していた時代から,リアルタイムに内視鏡を観察しながら早期胃癌を発見することは1980年代に本格化した.私が医師となった1983年にはバイブル『消化器内視鏡診断テキストⅠ食道・胃・十二指腸』(竹本忠良・長廻 紘編,文光堂)が出版された.すべての内視鏡像に手書きのシェーマが付いて,数多くの内視鏡像が掲載されていた.医師となり研修医であった私は,先に1979年に発売されていたバリウムによる二重造影法が詳述された『腹部X線造影読影テキストⅠ食道・胃・十二指腸』(白壁彦夫著,文光堂)とともに,これら2冊の聖書を頼りに早期胃癌の発見・診断に没頭した時代があった.今でもこの二冊は私の机に鎮座されている.この時代に内視鏡診断は大きく変化し,撮影した内視鏡像で議論するのではなく,実際に視ている時にいかに集中して視るかですべてが決まることになった.観察時に見えなかったものは永久に見えないし,いかに努力して撮ったにしろ撮影された写真より,観察時の遠景,近景の肉眼像,空気の量を変えた像など,現場の診断がすべてとなった.時代は,光学内視鏡から,ビデオ内視鏡,画像強調内視鏡,拡大内視鏡へと推移し,診断における人工知能の応用も始まっている.知見ではあるが,最近の10年間で早期胃癌を発見するための診断学においてもっとも変化したことは,ピロリ菌現感染粘膜の背景からの早期胃癌診断から,ピロリ菌既感染粘膜の背景からの診断に変化したことではないかと考える.ピロリ菌未感染胃癌の内視鏡的特徴も明らかにされた.

    本書は最初から気合いを入れて読み始める必要はない.まずは第2章「胃内視鏡検査・診断トレーニング問題」をいくつか診断してみてほしい.そこで「おや?」と思うことが出てくるはずである.その時に,第1章に戻って対応する場所を読んでみるのが良いように思える.最近,アルバイト先で早期胃癌様の病変の周囲にある規則正しい顆粒状白斑を観察していたが,その病変がリン酸ランタン胃症だと気づいた.学会での発表を聞いて私の脳内記憶が残っていたのである.内視とは頭を鍛えて視ることではないかと思う.

    最後にこのような機会をいただいた編者の後藤田卓志教授,藤本一眞教授,ならびに金芳堂藤森祐介氏に深謝申し上げます.

    平成30年10月
    京都府立医科大学附属病院内視鏡・超音波診療部 内藤裕二


    消化器内視鏡医をめざす医師は,内視鏡的粘膜下層剥離術等の内視鏡的処置にあこがれる傾向にある.癌を内視鏡的に切除することや,消化管出血を処置することは颯爽としていてかっこいいのは確かである.しかし,上部消化管内視鏡検査で一番経験が必要なのは,癌の拾い上げである.特に早期胃癌の拾い上げは容易ではない.早期胃癌は経験の少ない医師では内視鏡で胃を見ていてもなかなか見えないのが現状であり,胃全体の写真をきちんと撮っているようでも,早期癌を見つけて撮っていなければ後で第三者が見てもその存在はわからないことが多い.私たちのグループの医師で内視鏡をして数年目の医師が,ある病院で年間1,000症例の上部消化管内視鏡検査を施行して,ほとんど早期胃癌を見つけることができなかったのが,2年間の専門病院で研修後には,同じ病院の1,000症例で1年に10例以上の早期胃癌を発見したことがある.一番びっくりしたのは本人であろうが,早期癌を拾い上げるには訓練・経験が必要なのである.1,000例の上部消化管内視鏡検査をして,早期胃癌を見つけることができなかった場合は,早期胃癌症例がいなかったわけではなくて,その医師が早期胃癌を拾い上げる能力がなく,見逃しているのである.ぜひ,上部内視鏡の検査をそのまま続けるのではなく,勉強をし直してほしい.2017年からは対策型胃癌検診に内視鏡検診が導入されているが,経験の少ない医師は検診内視鏡検査をしないほうがいい.最近は内視鏡機器の発展で消化器内視鏡は誰でも画像を見て撮ることはできるが,早期胃癌を見つけることは簡単ではないことをぜひ自覚してもらいたい.

    本書の第2章は早期胃癌を拾い上げた画像を中心に症例を集めたものである.最初に胃癌を見つける時は誰にとっても偶然である.偶然見つけた時の画像を見る機会は以外と少なく,多くの書籍ではきれいなチャンピオン画像が掲載されており,チャンピオン画像をいくら見ても拾い上げにはほとんど役に立たない.本書は拾い上げにおけるヒントになるような画像を中心に掲載されている.症例ごとにどのような所見かの解説がされており,私自身も他の医師の経験を共有できた感があり,あらためて勉強になった.今回の症例だけでは十分でないとは思うが,それぞれの読者にとって「ええっ!これが癌?」というような所見の他人の経験を共有することで,今後の拾い上げに役立つ本になっていると思われる.胃癌をなるべく早期に見つけることができれば,後の治療はどうにでもなる.今回の症例を読者の医師の経験に加えて,早期胃癌を見つけることに役立ててもらえれば本書の意義がある.

    平成30年10月
    佐賀大学医学部消化器内科 藤本一眞

    目次

    第1章:胃内視鏡検査・診断の基本
    1.検査と診断のコツ
    1-1 胃の生理学
    1-2 胃癌の拾い上げに役立つ胃粘膜所見
    1-3 臨床における「胃炎の京都分類」の意義と使い方
    1-4 リスク層別化を考慮した観察のコツ
    1-5 ピロリ陰性胃癌の診かた?ピロリ未感染胃癌と除菌後胃癌
    1-6 見落としの少ない内視鏡の操作手順とコツ
    1-7 拡大観察の基礎知識

    <関連知識>
    ・ ピロリ感染と胃癌発癌
    ・ 対策型胃がん検診における胃内視鏡検診の目的と意義
    ・ 早期胃癌典型例でのNBI・BLI画像の比較

    2.検査前のポイント
    2-1 今だから必要な検査前の問診
    2-2 標準的な前処置法(咽頭麻酔や鎮痙剤の使用適応まで)
    2-3 抗血小板抗凝固の新ガイドラインを考慮した生検
    2-4 鎮静剤の使用について(ガイドラインに準ずる)
    2-5 経鼻内視鏡と経口内視鏡の選択について

    <関連知識>
    ・ 内視鏡検査におけるガイドラインと偶発症および医師の責任
    ・ 偶発症と対応

    第2章:胃内視鏡検査・診断トレーニング問題
    症例1-61

    <関連知識>
    ・ Eカドヘリン遺伝子異常胃癌
    ・ LCIの有用性
    ・ ピロリ除菌後のPPI長期使用における異時性胃癌
    ・ EBウィルス関連胃癌

    執筆者一覧

    ■編者
    後藤田卓志  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野教授
    内藤 裕二  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授、同附属病院内視鏡・超音波診療部部長
    藤本 一眞  佐賀大学医学部消化器内科教授

    ■著者(五十音順)
    芥川剛至  佐賀大学医学部消化器内科
    東 祐圭  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    阿部清一郎 国立がん研究センター中央病院内視鏡科
    池原久朝  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野
    石田紹敬  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    磯本 一  鳥取大学医学部機能病態内科学
    市島諒二  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野
    井上和彦  淳風会健康管理センター
    上山浩也  順天堂大学医学部消化器内科
    宇賀治良平 千葉徳洲会病院消化器内科
    江崎 充  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野
    岡本憲洋  佐賀大学医学部消化器内科
    小田一朗  国立がん研究センター中央病院内視鏡科
    鎌田智有  川崎医科大学総合医療センター健康管理学
    河原祥朗  岡山大学病院光学医療診療部
    北江博晃  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    草野 央  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科
    兒玉雅明  大分大学福祉健康科学部教授・同医学部内視鏡診療部診療教授
    後藤田卓志 日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野教授
    鈴木 翔  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野
    外山雄三  千葉徳洲会病院消化器内科
    高田和典  静岡県立静岡がんセンター
    高山 峻  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    髙良吉迪  佐賀大学医学部消化器内科
    滝沢耕平  静岡県立静岡がんセンター
    田中信治  広島大学大学院内視鏡医学
    辻 陽介  東京大学医学部附属病院消化器内科
    土山寿志  石川県立中央病院消化器内科
    寺崎 慶  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    土肥 統  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    冨永直之  佐賀県医療センター好生館
    中西宏佳  石川県立中央病院消化器内科
    中野貴博  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    長浜隆司  千葉徳洲会病院消化器内科
    二階堂光洋 京都大学大学院医学研究科・消化器内科学
    西川 潤  山口大学大学院基礎検査学
    八田和久  東北大学消化器病態学分野
    濱島ちさと 帝京大学医療技術学部看護学科教授
    春間 賢  川崎医科大学総合医療センター総合内科学
    半田 修  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学臨床教授
    樋髙秀憲  佐賀県済生会唐津病院
    日山 亨  広島大学保健管理センター
    日山恵美  広島大学大学院法務研究科(法科大学院)
    平澤俊明  がん研有明病院消化器内科
    細江直樹  慶応義塾大学内視鏡センター
    細谷和也  静岡県立静岡がんセンター
    帆足誠司  帆足医院
    堀井敏喜  日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野
    松村晋矢  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学
    松本健史  順天堂大学医学部消化器内科
    宮原貢一  唐津赤十字病院
    宮本心一  京都大学大学院医学研究科・消化器内科学
    村上和成  大分大学医学部消化器内科学講座教授
    八木信明  朝日大学病院消化器内科教授
    安田剛士  朝日大学病院消化器内科助教
    柳井秀雄  国立病院機構関門医療センター臨床研究部
    山内康平  高木病院消化器内科
    山口太輔  国立病院機構嬉野医療センター
    山里哲郎  東京都がん検診センター消化器内科
    山下太郎  鳥取大学医学部機能病態内科学
    山田真也  京都第一赤十字病院消化器内科
    結城美佳  出雲市立総合医療センター
    行元崇浩  国立病院機構佐賀病院
    吉原正治  広島大学保健管理センター

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