胸部の異常陰影
-X線による鑑別診断-

  • 品切・未定
定価 15,400円(本体 14,000円+税10%)
池田貞雄
船津武志
人見滋樹
甲斐隆義
B5判・466頁
ISBN978-4-7653-1450-3
2010年10月 刊行
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内容紹介

「はじめに」より
「医者を選ぶのも寿命のうち」という言葉は誰でも知っているが、敢えて医者に云う人はない。医者を選びに選んでも、必ずしも良い結果になるとは限らず、当りが悪ければ寿命はない。現在でも医療は、ある意味で患者にとって出合いであることを物語っている。
Heavy smokerではあるものの自覚症状が全くない男性が、肺ドックで胸部CTを受けて右肺尖部に直径13mmの小さな結節陰影を発見された。PETを受けて取り込みが確認され、入院の翌日に胸腔鏡下右上葉切除を受けた。術中のクリオスタットによる迅速標本で、高分化扁平上皮癌であることが確認され、縱隔リンパ節廓清を受けて、15日目に自宅に退院した。本人曰く「アッという間だった」と。癌告知を受けてオロオロと迷う時間もなかったという。
…… 中 略 ……
最後の出版から20数年が経過してイメージングと画像処理の技術は驚くほど進歩し、病院ではPCの上で拡大することも、過去ログの画像と比較することも、自由自在にできるようになった。しかし医院や診療所の臨床の現場での一枚の背腹写真の重要性は、私達が執筆を決心した37年前の状況と殆ど変わらない。
故吉岡清編集長とともに編集作業を行って頂いた市井輝和さんが金芳堂の社長になられて、改訂3版4刷で終わっている「胸部の異常陰影」の「I 篇:正常陰影の読影、II 篇:異常陰影の読影」を、再度出版するのは意味があるのではないかと申し出があった。III 篇の「主な肺・縱隔疾患」は、この間の高精細な胸部CTの登場や、MRI、気管支鏡検査、胸腔鏡、PETなどの診断技術の進歩が著しく、これらを網羅した疾患を解説する原稿を執筆する気力は既になく、割愛することにした。そのため改訂3版のI 篇とII 篇だけを取り出して、コンパクトな本として新たに出版することにした。II 篇で取り上げた症例を今読み返すと、当時の患者の顔が思い出されて、思わず追憶に浸ってしまう。
同じ臓器を扱う訳だから、呼吸器内科医と呼吸器外科医がソッポを向き合っているのは、どうにも解せない。詳細に読影する努力を放棄した呼吸器外科医が「どうせ僕らは切り屋ですから」と力なく呟くのを聞くと、「シッカリセイ!」と思わず声を荒げたくなる。時代が変わってしまったのは判るが、呼吸器内科医と呼吸器外科医が、相手と敬意をもって議論して、目標とする疾患の治療に邁進して欲しいものである。
幸いにして著者達4人は、健康に恵まれて初版の時から現在まで一人も欠けることもなく、呼吸器科医として毎日の診療に今もって従事している。視力も衰え脚力も萎え老化しているので、勿論手術室に入ることはない。しかし誤診や神懸かり的な診断は絶対にしないように、合理的な根拠によって一枚一枚の胸部写真を丁寧に読影して行かねばならないと自戒している。

序文

目次

I 編 正常陰影の読影
A.読影のための解剖
B.写真の種類
C.写真の読影
II 編 異常陰影の読影
A.肺野の異常陰影
1章 円形陰影
2章 塊状陰影
3章 多発結節陰影
4章 浸潤陰影
5章 微細斑点状陰影
6章 網目状陰影
7章 蜂窩状陰影
8章 空洞および嚢胞状陰影
9章 気胸様陰影
10章 線状、帯状、管状陰影
11章 気管陰影
12章 無気肺様陰影
13章 胸水陰影
14章 不透明肺陰影
15章 石灰化陰影
16章 肺気腫様陰影
17章 肺血管増強陰影
B.肺門の異常陰影
C.縦隔陰影の拡大
D.横隔膜、胸壁の異常陰影

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