症例6:喘息による気管支音化

患者:52歳 男性

発症から10年ほどになりますが、吸入ステロイドでほぼ症状がない状態にコントロールされています。これは定期受診したときの肺音です。特に症状もなく、変わりはありません、とのことでしたが、聴診すると呼気がはっきり聴こえます。肺音図 でも吸気音に近いくらいの明るさで呼気音が記録されています。

これは軽度の気道狭窄があるときの気管支音化です。吸入ステロイドの使用状況を聴いてみると、きちんと使っています、とのことです。それでは「最近、風邪でもひきましたか?」と聞いて見たら「1週間ほど前に子供の風邪がうつって咳をしていました。まだ少し咳は出ますが、もう大丈夫です」とのことでした。肺音では、まだ風邪による気道炎症の名残りがあるようですが、自覚症状も改善しているので「1日1回の吸入ステロイドを2回に増やしておくと、咳も楽ですよ」と指示しました。

気管支喘息患者の呼吸音が気管支音化しているときに一番多いのは、吸入ステロイドなどの長期管理薬をきちんと服薬していないときと感冒などの後の軽度の悪化時です。気管支音で気が付いて早めに対応すると重篤な悪化を防ぐことができます。

聴診部位

背側右肺底部(聴診部位⑮)

横軸は26秒の時間経過で、下の段の黄色い曲線は換気曲線です。上向きが吸気、下向きが呼気を示します。上段が肺音で縦軸が周波数、音の強さは明るさで示します。気管支音では呼気が吸気に近いほど大きいのが分かります。