産婦人科医とスタッフのための 精神疾患合併妊娠の診かた

    定価 5,940円(本体 5,400円+税10%)
    編著鈴木利人
    順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院院長
    佐藤昌司
    大分県立病院院長
    A5判・283頁
    ISBN978-4-7653-2054-2
    2025年05月 刊行
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    精神疾患合併妊娠の周産期管理におけるあらゆる疑問に答えます

    内容紹介

    精神疾患を合併する妊娠は、近年増加傾向にあります。精神疾患の有病者自体が増加傾向にあり、特に女性の比率が高いうつ病が増加していることから、精神疾患合併妊娠が増えていると考えられます。精神疾患の早期受診や心理・社会的支援の普及、外来完結型治療への移行によって妊娠の機会が増えてきたこと、さらに生殖機能に影響を及ぼさない新規薬剤が増加していることなどが、精神疾患合併妊娠が増加した要因とされています。

    このような状況の中で、精神科領域が専門ではない医療者にとっては、産科の臨床現場で戸惑う場面が増えてきています。

    本書では、周産期における精神疾患や向精神薬に関する最新の知識、EPDSの運用方法や注意点、現場での具体的なQ&A、多職種連携の実践例、将来を見据えた取り組みの紹介など、充実した内容を掲載しております。また、対談では国内の周産期メンタルヘルスに関して、各方面からの声を集め、今後の展望を見通せる内容となっています。

    単に疾患の説明にとどまらず、患者からどのような訴えがあり、どのような症状が見られるのか、さらにその対応についても具体的に示していますので、精神科の実際に詳しくない産婦人科医をはじめ、妊産婦に関わるすべての医療者の皆様にとってお役立ていただける一冊です。

    序文

    はじめに

    本書は産婦人科の先生方や助産師の方々など、日頃周産期メンタルヘルスでご活躍の皆さんに精神医学の領域をご理解いただきたく作成されたものです。以下に本書の構成をご紹介します。

    Ⅰ章は精神疾患の理解です。執筆者の方々に周産期医療関係者向けにわかりやすく作成するようにお願いしています。できるだけ多くの精神疾患を取り上げ、さらに周産期に特有な産後うつ病や産後精神病、そして周産期ボンディング障害も取り上げています。特徴的なことは、それぞれの精神疾患に「妊娠中、出産後に留意すること」を作っていることです。

    Ⅱ章では向精神薬と妊娠・授乳です。ユニークな点は、読者に精神科医が処方した意図を理解してもらうことや、仮に薬物療法を中断した際に起こりうる事象を加えていることです。

    Ⅲ章は皆さんご存じのEPDSの紹介です。改めて読者の皆さんの知識と本書の内容を照らし合わせてみてください。

    Ⅳ章は周産期メンタルヘルス現場のQ&Aです。実はこれらを作成するにあたり精神科医と産婦人科医のクロストークが行われています。産婦人科医が知りたいことを集め、精神科医が答えています。さらにその答えの内容に「この用語や表現は産婦人科医にはわからない」、「この対応は現実には産婦人科医にはできない」などのクロストークを経て修正されて作成に至っています。

    Ⅴ章は国内の地域や総合病院での活動紹介です。産婦人科医、精神科医など様々な職種からの紹介です。勿論、紹介された施設以外でも活躍している施設は多くあります。その代表として紹介したとご理解ください。

    Ⅵ章はとてもチャレンジングな活動をしている企画の紹介です。産婦人科医が行うメンタルフォロー、精神科病院で対応する産後うつ病ケア、精神科医が診療活動している産婦人科病院の存在、そして訪問看護で周産期メンタルヘルスに対応する施設などです。是非とも成功してほしいと願っています。

    最後に、本書の作成にご尽力いただいた執筆者の皆様方、ならびに金芳堂の方々に衷心よりお礼申し上げます。本書が周産期メンタルヘルスの実践の場でご活躍されている皆様方に有意義な書物になることを切に願っております。

    2025年5月
    編者を代表して 鈴木利人


    あとがき

    産婦人科医と産科スタッフにとって近年、メンタルヘルスが比較的唐突に、重要な診療領域として「義務付けられた」感は否めないのではないでしょうか。妊娠中から産後、それ以降も心のケアは体のケアと同じぐらい重要だ、と理解していても、さて自らが目の前の患者さんに対して行うべきアクションは? と問うた時、「多職種連携」「傾聴」「不安・抑うつ」というキーワードは知っていても実践のイメージが湧かない、とにかく精神科側に委ねよう、と短絡的思考に陥ってしまいがちではないでしょうか。本書は、産婦人科領域における医師とコメディカルスタッフがその殻を破る一助となることを企図して編集したものです。

    精神疾患は決して特殊な分野ではありません。例えて言えば、産婦人科スタッフは連日、糖尿病や高血圧合併の妊産婦さんに対応しているでしょう。尿糖が出た妊産婦さんを産科医が一切診断することなく「糖尿病専門内科」に丸投げしているでしょうか。高血圧の方を評価もせず、「循環器内科」「内科高血圧外来」にいきなり紹介しているでしょうか。栄養指導は栄養師、運動療法は作業療法士の仕事であり、産科スタッフは糖尿病や高血圧以外の健診項目を担当します、などということはあり得ません。メンタルヘルスの領域もまったく同じで、詳細な診断と専門的治療は専門医(精神科医)に委ねつつも、目の前の妊産婦さんが安全に出産し子育てに励む包括的な責任者は産婦人科スタッフであり、必要に応じて栄養師、保健師、臨床心理士、作業療法士などのサポートを得るという点で、身体的合併症を有する妊産婦さんの管理と何ら異なるところはありません。

    本書は、このような位置づけで「臨床現場における妊産婦メンタルヘルスケアの実践」を念頭に置いて各領域の方々に執筆をお願いしました。前半(I~III章)の医学的知識のパートは座学で熟読していただき、後半(IV~VI章)の各地域あるいは医療機関の取り組みを参考に自施設・地域の診療/サポート体制構築を進めていただき、まさに産婦人科医と産科スタッフが妊産婦さんの「からだ」と「こころ」の両方を同等に目配りし、ケアしていくための参考書となれば幸いです。

    最後に、本書の発刊に向けてご尽力賜りました執筆者の皆様ならびに金芳堂の諸氏に心よりお礼申し上げます。

    佐藤昌司

    目次

    執筆者一覧
    はじめに

    Ⅰ章 産婦人科医に知ってほしい精神疾患の理解
    1 統合失調症
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    2 双極症
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    3 うつ病
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    4 不安症(パニック症、広場恐怖症、限局性恐怖症、全般不安症)、PTSD
    不安症
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    PTSD
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    5 摂食障害
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    6 発達障害
    1 疫学
    2 臨床症状/経過
    3 治療
    4 妊娠中に留意すること
    5 出産後に留意すること

    7 産後うつ病
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    8 産褥精神病
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    9 周産期ボンディング障害
    1 疫学
    2 臨床症状
    3 経過
    4 治療
    5 妊娠中に留意すること
    6 出産後に留意すること

    Ⅱ章 向精神薬と妊娠・授乳
    総論 精神科医による妊産婦への向精神薬処方の基本的アプローチ
    1 向精神薬処方の基本原則
    2 主な向精神薬の特徴と処方の意図
    3 新生児不適応症候群
    4 授乳への影響
    5 向精神薬を内服している妊産婦への対応のポイント

    1 抗精神病薬
    1 代表的な商品名と一般的な用量
    2 精神科医の処方の意図
    3 一般的な副作用
    4 薬物治療を中断した際に生じうること
    5 催奇形性・産科合併症・胎児への影響・発達症などのリスク
    6 授乳への影響
    7 精神科薬物療法を実施している患者について、産婦人科医として留意すること

    2 抗うつ薬
    1 代表的な商品名と一般的な用量
    2 精神科医の処方の意図
    3 一般的な副作用
    4 薬物治療を中断した際に生じうること
    5 催奇形性・産科合併症・胎児への影響・発達症などのリスク
    6 授乳への影響
    7 精神科薬物療法を実施している患者について、産婦人科医として留意すること

    3 気分安定薬
    1 代表的な商品名と一般的な用量
    2 精神科医の処方の意図
    3 一般的な副作用
    4 薬物治療を中断した際に生じうること
    5 催奇形性・産科合併症・胎児への影響・発達症などのリスク
    6 授乳への影響
    7 精神科薬物療法を実施している患者について、産婦人科医として留意すること

    4 抗不安薬
    1 代表的な商品名と一般的な用量
    2 精神科医の処方の意図
    3 一般的な副作用
    4 薬物治療を中断した際に生じうること
    5 催奇形性・産科合併症・胎児への影響・発達症などのリスク
    6 授乳への影響
    7 精神科薬物療法を実施している患者について、産婦人科医として留意すること

    Ⅲ章 EPDSの理解と用い方
    1 EPDSの開発の流れ
    2 EPDSの基本的理解と運用
    3 EPDS利⽤に際しての限界と注意点
    4 EPDSの産後4週目以外での実施
    5 EPDS以外のスクリーニング法

    Ⅳ章 周産期メンタルヘルスの現場のQ&A
    精神科未受診患者編
    Q.1 産科医・スタッフが患者の精神疾患に気づくために、必要な知識とは何か?
    Q.2 精神疾患が疑われる妊産婦で、精神科診療を勧めるタイミングと、その際の留意点とは何か?(緊急対応を含めて)
    Q.3 精神科に紹介する際に、紹介状に提供すべき情報とは何か?
    Q.4 産婦人科施設で精神疾患が強く疑われる患者を診察した際の対応をどうするか?
    Q.5 「受診既往」はあるが現在は問題ないように見える患者を事前紹介しておいた方がよいか?

    精神科通院患者編
    Q.1 向精神薬の服薬アドヒアランスの不良(拒薬)に気づいた際、あるいは最近の精神症状の悪化に気づいた際にどうするか?
    Q.2 向精神薬内服中の妊婦から、内服中の薬の相談をされた際の対応は?
    Q.3 過量服薬による自殺企図(未遂)など緊急を要する事態に遭遇した際にどのように対応するか?
    Q.4 分娩の際に向精神薬の調整をどのようにするか?

    Ⅴ章 地域・病院における多職種連携の紹介
    1 地域の取り組み 大分県
    1 大分県における多職種連携の取り組みの概要
    2 大分県におけるサポート体制の基本的スタンス
    3 産科医療機関および関連職種におけるハイリスク妊産褥婦の抽出と対応
    4 対応結果の集積、検討とフィードバック
    5 今後の展望

    2 地域の取り組み 岡山県
    1 社会的ハイリスク妊産婦のもつリスク因子
    2 「妊娠中からの気になる母子支援」連絡システム(岡山モデル)
    3 岡山モデルと「メンタルヘルスの課題」への対応
    4 岡山モデルのデータ解析と産科医医療や行政施策への反映
    5 妊娠初期に産後のうつ状態を予測できるか
    6 「メンタルヘルスの課題」を念頭に、岡山モデルの今後の展望

    3 地域および病院の取り組み 滋賀県における大学病院産婦人科・精神科
    1 当院における多職種連携の取り組みの概要
    2 うまくいった事例
    3 うまくいかなかった事例
    4 2、3を踏まえての、今後の展望 ~コンピテンシーを発揮した多職種連携の促進~

    4 地域および病院の取り組み 東北大学病院における多職種連携
    1 取り組みの概要
    2 取り組みを始めたきっかけ/理由
    3 取り組んでみてよかった点
    4 これから取り組みを始める施設へのアドバイス

    5 地域および病院の取り組み 札幌圏域の大学病院・地域総合病院
    1 2つの病院における周産期メンタルヘルス支援
    2 周産期メンタルヘルス支援の実践
    3 病院の成り立ちからみたメンタルヘルス支援の特徴
    4 それぞれの病院の課題
    5 展望

    6 地域および病院の取り組み 済生会横浜市東部病院
    1 はじめに:済生会横浜市東部病院の概要
    2 多職種多機関連携の実際と心理職の役割
    3 うまくいった事例:妊娠中から心配事を把握し、院内・院外の多職種連携を始められた事例
    4 うまくいかなかった事例:産後まで心配事を把握できず、院内・院外の多職種連携を妊娠中から始められなかった事例
    5 今後の課題と展望

    Ⅵ章 将来を見据えるユニークな取り組み紹介
    1 産婦人科医が行う周産期メンタルヘルス外来 愛育クリニック
    1 取り組みの概要
    2 取り組みを始めたきっかけ/理由
    3 課題と展望

    2 単科精神科病院での産後メンタルヘルスケア実践 木村病院
    1 取り組みの概要
    2 取り組みを始めたきっかけ/理由
    3 取り組んでみてよかった点
    4 これから取り組みを始める施設へのアドバイス

    3 精神科病院の母子同室入院 のぞえの丘病院
    1 日本の精神医療における母子同室入院
    2 のぞえの丘病院と周産期メンタルヘルスケアについて
    3 母子同室入院と母子ケアユニット
    4 母子同室入院を行う意義
    5 当院における「母子同室入院」について
    6 母子同室入院と「すくすくサロン」との連携
    7 当院で行っている「母子同室入院」の実際
    8 母子同室入院を行った患者の特徴
    9 母子同室入院と産後ケア事業
    10 母子同室入院が生かされるための周産期メンタルヘルスケアシステム

    4 産婦人科クリニックでの精神科医の定期的診療 横田マタニティーホスピタル
    1 マタニティーホスピタルで始めたメンタルケア外来
    2 実際の取り組みでわかった利点と課題
    3 地域システムとしてのメンタルヘルスケア
    4 立ち上げて実感したメンタルヘルスケアの意義
    5 “普通の精神科医”が変身を遂げられたわけ

    5 産婦人科クリニックでの精神科医の定期的診療 前島レディースクリニック
    1 取り組みの概要
    2 取り組みを始めたきっかけ/理由
    3 取り組んでみてよかった点
    4 これから取り組みを始める施設へのアドバイス

    6 周産期メンタルヘルスに関わる訪問看護事業 訪問看護ステーションco-co-ro
    1 取り組みの概要
    2 取り組みを始めたきっかけ/理由
    3 取り組んでみてよかった点
    4 これから取り組みを始める施設へのアドバイス

    Ⅶ章 対談 ―国内の周産期メンタルヘルス活動を円滑にするために―
    テーマ1 わが国の周産期メンタルヘルスは、この10年どのような変化を遂げてきたか?
    テーマ2 妊産婦の自殺対策として、どのような問題点が残されているか? 足りないものは何か?
    テーマ3 周産期メンタルヘルスの今後の発展に向けて、どのようなことに注目しているか?

    あとがき
    索引
    巻末資料(周産期メンタルヘルス関連ガイド集・用語一覧)
    編著者略歴

    執筆者一覧

    ■編著
    鈴木利人  順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院
    佐藤昌司  大分県立病院

    ■執筆者一覧(掲載順)
    根本清貴  筑波大学医学医療系精神医学
    竹内崇   東京科学大学病院精神科
    菊地紗耶  東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
    清野仁美  兵庫医科大学精神科神経科学講座
    今村弥生  杏林大学医学部精神神経科学教室
    伊瀬陽子  福島県総合療育センター精神科
    伊藤賢伸  順天堂大学医学部精神医学講座
    大橋優紀子 城西国際大学看護学部/大学院健康科学研究科
    羽田彩子  こころの診療科きたむら醫院
    渡邉博幸  木村病院
    中塚幹也  岡山大学学術研究院保健学域
    辻俊一郎  滋賀医科大学医学部附属病院母子診療科
    光岡由紀子 滋賀医科大学医学部附属病院看護部スペシャリスト室
    柏木智則  札幌医科大学医学部神経精神医学講座
    河西千秋  札幌医科大学医学部神経精神医学講座
    相川祐里  神奈川県済生会横浜市東部病院こころのケアセンター心理室
    齋藤知見  総合母子保健センター愛育クリニック周産期メンタルヘルス科
    堀川直希  のぞえの丘病院
    高橋由美子 群馬大学医学部附属病院精神科神経科
    渡部衣美  筑波大学附属病院精神神経科
    山岸由紀子 訪問看護ステーションco-co-ro
    相良洋子  日本産婦人科医会
    新井陽子  群馬大学大学院保健学研究科

    トピックス

    ■2025-09-04 書評
    本書の書評を日本周産期メンタルヘルス学会・ニュースレターに掲載いただきました。詳細は下記リンク先「Book Review」をご確認ください。

    https://pmh.jp/NewsLetter/newsletter_No46.pdf