イラスト図解 小児心臓外科医が描く先天性心疾患の血行動態と手術法

  • 新刊
定価 10,780円(本体 9,800円+税10%)
長田信洋
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター心・血管グループ顧問
A4判・186頁
ISBN978-4-7653-1988-1
2024年04月 刊行
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先天性心疾患が見える、わかる、説明できる!

内容紹介

バリエーション豊富な先天性心疾患の疾患群を正しく理解するために、その形態(解剖学的構造異常)と血行動態の知識は不可欠ですが、十分な理解や説明には視覚的要素が欠かせません。

そこで本書では、経験豊富な小児心臓外科医が自ら描いたイラストレーションによる図解剖を通して、血行動態やその手術法を視覚的にわかりやすく解説することで、先天性心疾患の多様な疾患群を正しく理解できるよう作成されました。

また、本書は疾患ごとに見開き1ページ(左解説・右図解)を基本とした見やすい構成で、インフォームド・コンセント(患者説明)にも用いることができるよう、疾患別のイラストをPDFファイルとして特設サイトからダウンロードできる読者限定特典を付けました。

序文

先天性心疾患は、大まかにいって約40種類の病名があり、そのサブタイプや各種複合例などをカウントに入れると、その種類は約100にも及ぶ。

その解剖学的構造は、単純なものから複雑なものまで多種多様で、さらに、それらの血行動態となると、中隔欠損の場所やサイズの大小、短絡血流の向き、大血管の転位や位置異常、心室の転位、肺静脈の還流異常、肺血流量の多いもの、少ないもの、房室弁や大血管の弁の閉鎖不全や狭窄、その他多くの因子が入り乱れ、病名をみただけでその血行動態をイメージするのは至難の業である。

筆者も、小児心臓外科医の道を歩み始めた頃は、術前カンファレンスに参加しても、先輩医師たちがやりとりする専門用語が頭の上を飛び交っているだけで、なかなか病態のイメージが自分の脳内に降りてこないという情けない状況が2~3年は続いたものである。また、各症例の病態や術式を把握できるようになったとしても、今度はそれを患者さんのご家族に正確に、なおかつわかりやすく説明するとなると、これがまた大きな難題で、これまで、いろいろと自分で作成したイラストを駆使して工夫を重ねてきた。

今回、金芳堂さんから「そのわかりにくい先天性心疾患を素人にもわかりやすく説明できるような本を出しませんか」という依頼があり、これまでの経験と知恵を絞りだしてまとめあげたのが本書である。

本書の特徴は、各種手術法が見開き2ページで素早く理解できるように、原則として右ページにイラスト、左ページに説明文という構成にしたことである。右ページをコピーすればそのまま手術ムンテラ(インフォームドコンセント)に使えるし、そのために、説明者本人の文字が書き込めるスペースも空けておいた。手術室においては、麻酔科医、臨床工学技士、器機出し看護師が、当日の手術の全体像(術前術後の血行動態)や手術適応基準を短時間で把握できるよう説明文を箇条書きにし、重要個所には強調下線を引いておいた。

その他、PICUや病棟看護師の勉強会にも使用できるのではないかと思う。

先天性心疾患の外科治療は、この30年で劇的な進歩を遂げてきた。1997年度の日本胸部外科学会の全国調査によると、新生児開心術の死亡率は34.5%と高く、左心低形成症候群などはほとんど助からない疾患であった。その後、体外循環技術や心筋保護法の進歩、段階的に手術を行う治療戦略や手術法の工夫により、その手術成績は劇的に向上している。本書では、その治療戦略についても、わかりやすく解説したつもりである。本書によって、先天性心疾患の構造、血行動態、手術法への理解が深まってくれれば筆者の望外の喜びである。

2024年2月
長田信洋

目次

正常心の形態と刺激伝導系
体外循環の図

1:動脈管開存
2:心房中隔欠
3-1:心室中隔欠損(大血管下漏斗部欠損型)
3-2:心室中隔欠損(傍膜様部型)
4:肺動脈弁狭窄
5-1:大動脈縮窄
5-2:大動脈縮窄複合
6:大動脈弓離断
7-1:Fallot四徴症①
7-2:Fallot四徴症②
7-3:Fallot四徴症/肺動脈閉鎖
7-4:Fallot四徴症/肺動脈閉鎖/主要体肺側副血行
7-5:Fallot四徴症/肺動脈弁欠損
8-1:完全型房室中隔欠損(完全型心内膜床欠損)
8-2:完全型房室中隔欠損、術後肺高血圧クリーゼ
9:不完全型房室中隔欠損
10:完全型房室中隔欠損+Fallot四徴症
11-1:総肺静脈還流異常①
11-2:総肺静脈還流異常②
12:部分肺静脈還流異常
13:右室二腔症
14-1:大動脈弁狭窄①
14-2:大動脈弁狭窄②
15:大動脈弁上狭窄
16-1:完全大血管転位Ⅰ型①
16-2:完全大血管転位Ⅰ型②
16-3:完全大血管転位Ⅰ型③
16-4:完全大血管転位Ⅰ型④
17:完全大血管転位Ⅱ型
18:完全大血管転位Ⅲ型
19-1:修正大血管転位
19-2:修正大血管転位、機能的根治術①
19-3:修正大血管転位、機能的根治術②
19-4:修正大血管転位、ダブルスイッチ手術①(心房内血流転換+動脈スイッチ)
19-5:修正大血管転位、ダブルスイッチ手術②(心房内血流転換+Rastelli手術)
19-6:修正大血管転位、ダブルスイッチ手術③(hemi-Mustard+Rastelli手術)
20:両大血管右室起始、大動脈下型心室中隔欠損
21-1:両大血管右室起始、肺動脈下型心室中隔欠損①
21-2:両大血管右室起始、肺動脈下型心室中隔欠損②
22:両大血管右室起始、両大血管下型心室中隔欠損
23:両大血管右室起始、遠位型心室中隔欠損
24:SDL型の両大血管右室起始
25-1:総動脈幹遺残①
25-2:総動脈幹遺残②
25-3:総動脈幹遺残、Van:Praagh:A1型の手術
25-4:総動脈幹遺残、Van:Praagh:A4型の手術
26-1:三尖弁閉鎖
26-2:三尖弁閉鎖、Ⅰa型
26-3:三尖弁閉鎖、Ⅰb型
26-4:三尖弁閉鎖、Ⅰc型
26-5:三尖弁閉鎖、Ⅱc型
26-6:三尖弁閉鎖、Ⅲb型
27-1:純型肺動脈閉鎖①
27-2:純型肺動脈閉鎖②
28-1:単純型Ebstein病①
28-2:単純型Ebstein病②
29:新生児重症Ebstein病
30-1:左心低形成症候群①
30-2:左心低形成症候群②
30-3:左心低形成症候群③
30-4:左心低形成症候群④
30-5:左心低形成症候群⑤
31:Valsalva洞動脈瘤破裂
32-1:血管輪①重複大動脈弓
32-2:血管輪②右大動脈弓+左動脈管索
32-3:血管輪③左肺動脈起始異常
33-1:単心室①右室性単心室
33-2:単心室②左室性単心室(肺血流増加群)
33-3:単心室③左室性単心室(肺血流減少群)
33-4:単心室④左室性単心室(球室間孔狭窄、大動脈弓離断)
34:大動脈肺動脈中隔欠損
35:右肺動脈上行大動脈起始
36:左冠動脈肺動脈起始
37:冠動脈瘻
38-1:三心房心①
38-2:三心房心②
39-1:無脾症候群①
39-2:無脾症候群②
40-1:多脾症候群①
40-2:多脾症候群②
40-3:多脾症候群③
40-4:多脾症候群④

執筆者一覧

■著
長田信洋 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター心・血管グループ顧問

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