看護学臨地実習ハンドブック
―基本的考え方とすすめ方― 第6版

  • 好評書
定価 4,180円(本体 3,800円+税10%)
監修松木光子
大阪大学名誉教授/日本赤十字北海道看護大学名誉学長・名誉教授
編著宮地緑
元大阪府病院協会看護専門学校副学校長/元大阪府立看護大学医療技術短期大学部教授
B5判・230頁
ISBN978-4-7653-1871-6
2021年06月 刊行
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実習指導者や看護教員のための、数少ない臨地実習の指導書

内容紹介

「臨地実習」とは看護基礎教育のなかでも、「看護師」のベースとなる看護実践能力を培うために欠かせない、最も効果的な教育技法である。看護実践能力は、学生が講義や演習で身につけた知識をもとに、実際の現場で状況に応じて判断し、行動することで培われていくものである。

また近年の少子化・高齢化や疾病構造の変化に伴い、看護を取り巻く情勢は大きく変化している。そのため、看護師としての知識や技術はもちろん、豊かな人間性や感性をもち、患者と接することができるコミュニケーション能力など、看護師に求められる能力も多様化している。

本書は、学生にとって魅力ある実習内容・実習環境を整えるために、臨地実習を行ううえで必要なカリキュラムに沿った考え方や実際の進め方、評価方法、学生との関わり方などを網羅している。実際に使用できる評価表などの資料も掲載しており、実践的な内容となっている。

また、この度の改訂では、看護基礎教育の新カリキュラムにも対応できるよう内容を適宜アップデートした。看護基礎教育に携わる教員、実習指導者や看護管理者はもちろん、実習を受ける看護学生の皆さんにも活用していただきたい1冊である。

序文

■監修のことば■

この度、看護基礎教育の臨地実習の手引書ともいえる「看護学臨地実習ハンドブック―基本的考え方とすすめ方」改訂第6版を上梓することになった。本書は1996(平成8)年の初版以来、多くの看護師・看護教員に活用されており、監修者としては大変うれしいことである。

振り返れば初版は、私自身の看護教員のスタートになった大阪府立公衆衛生学院のかつての同僚たちが、当時のカリキュラム改正を機に長年の指導経験をまとめられたものであった。当学院は平成8年に閉校し、現在大阪府立大学に発展的に統合された。

その後、初版以来の編集者と執筆者を中心に版を重ねていたが、今回の改訂では現在活躍中の関係の新たな書き手も加わり、出版の運びとなった。

本紙第6版は、2020(令和2)年10月30日公布の保健師助産師看護師養成所指定規則の改正に伴う、カリキュラム改正への対応として改訂した。

前回改正時から「地域医療包括システム」がめざされており、引続き地域看護は重視されている。今回は、気候等環境の変化や少子高齢化、科学の進歩等に伴う、医療ニーズや制度の変化に対応する改正である。従って、看護基礎教育としては、看護の対象を生活者として捉え、人工知能や情報通信技術を活用したり、臨床判断能力の強化が求められている。

近年は看護系の大学や大学院も増加した。しかし、まだ看護基礎教育は完全な4年制化には至っていない。しかし、最近の動向としては米国のナースプラクティショナーの役割拡大をモデルとした特定行為の役割拡大へ進んできている。しかし、これらは卒業後の継続教育や大学院教育に委ねられるものである。

本書は、基礎看護教育の実習ハンドブックである。前版同様、実践能力の強化を目指して、さらに推敲を重ねて改訂した。

課題の看護実践能力の視点からすれば、教育方法としても臨地実習は一番効果的教育技法であろう。残存率の見地からも知識と技術の統合の上からも、教育方法の中で一番効果的な方法である。

サブタイトルが「基本的考え方とすすめ方」となっているように、本書は総論としてまず臨地実習に関する基本的考え方と臨地実習全体のすすめ方を示している。そして、各論として専門分野の基礎、地域・在宅、成人、老年、小児、母性、精神等の看護学、そして全看護学分野に関連する在宅と看護の統合と実践を含む、カリキュラム全体の実習を網羅している。

記述は、多くの関連資料を豊富に取り入れて記述しており、極めて実践的である。また、著者達の開発・使用している実際の実習用具を各看護学にふんだんに提示している。

したがって、看護基礎教育に携わる教員、現場の実習指導者や看護管理者、看護者はもとより、実習する看護学生のハンドブックとしても活用でき、多くの示唆を得るものと思う。

令和3年4月
松木光子


■改訂にあたって■

看護学は人間にかかわる実践の科学といわれながらも、臨地実習に関する指導書は極めて少ない。

看護基礎教育は、各種学校、専門学校、3年制の短期大学、大学とさまざまであるが、いずれの教育機関においても臨地実習は重要視され、その意義や本質に変わりはないと考える。看護基礎教育における臨地実習について、学内実習や演習とは別に、直接、患者と接する時間を規定づけしたのは、1989(平成元)年のカリキュラム改正からである。その趣旨は、学生が主体的に行動でき、知識を活用しながら判断力や応用力や問題解決能力、学生の自己成長を育むために、総時間数を削減し、ゆとりある教育を主眼としていた。私たちが、本書を書き始めたのは、臨地実習指導にあたる時、看護の実践指導者として、基本的なことと指導の実際的なことを助けるような書物があれば、指導がスムーズにいくのではないかとの考えからであった。また、学生にとって、臨地実習が円滑に展開できることを願ったからである。

1996(平成8)年の改正カリキュラムから、私たちは老年看護、精神看護、地域(在宅)看護を別枠に組み立て、成人看護を急性期(救命救急と手術看護領域)、慢性期(セルフケア領域)、回復期(リハビリテーション看護領域)、終末期(ターミナルケア領域)に分けて実習を構築してきた。

2008(平成20)年のカリキュラムの改正は、社会状況の大きな変化による。特に個人情報保護法、在院日数の短縮化などにより、看護学生の臨地実習の実施機会の減少と実施範囲が限定されてきた。そして、①各看護師学校養成所の看護技術の到達能力の差異、②卒業後、複数患者を受けもち期待される役割や実施の拡大、③学生の生活技術能力不足やコミュニケーション能力の不足、などの経緯があり改正となった。

近年の少子化・高齢化や疾病構造の変化に伴い、在宅看護の要望も高く、看護を取り巻く情勢は激しく変化している。看護職の名称も変更され、2002(平成14)年3月1日(改正:平成13年12月12日。法律第153号)から保健師・助産師・看護師となり、現在に至っている。国は、2025(令和7)年を目途に「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。どのような健康状態にあっても、その人らしく最後まで尊厳をもって人生を全うできるよう看護者は支援することが重要である。また、18歳人口の減少に関連し、大学教育のあり方そのものも見直されており、看護の独自性を明確にし、学生にとって魅力ある教育内容・教育環境を整えることが求められている。それと同時に看護基礎教育でも疾患や医療面だけを見るのではなく、生活者としての視点をもち、豊かな人間性や感性を身につけ、人を見ることがさらに必要となってくる。時代の要請に対応できる専門職業人を育成することが責務であると考える。職業人育成の看護基礎教育を考える時、教育の一環としての臨地実習の位置づけと実習指導は非常に重要である。

今回のカリキュラム改正は、2020(令和2)年10月30日に公布された。看護の対象が多様化・複雑化するなかで、対象を生活者として捉え、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用するなど、臨床判断能力が今以上に求められるカリキュラムである。主要な改正は、従来の教育内容区分、「専門分野Ⅰ」「専門分野Ⅱ」「統合分野」の区分を1つにまとめ「専門分野」とした。また成人看護学実習と老年看護学実習をそれぞれ6単位、4単位であったものを、1つの枠内にくくり、両方を合わせて4単位以上とした。実習単位数は、看護師養成所の裁量で一定程度自由に設定できるように提示した。一方、少子化で小児看護学実習と母性看護学実習は実習場確保が困難となっている現状がある。このことや看護基礎教育の4年制化の実現は、今後の課題として残る。

本書は3年課程の看護教育機関を対象とした。その構成は、第1章で、看護教育の考え方の動向と方向性を明らかにし、第2章では、これからの臨地実習における考え方と進め方の基本となるものを示した。そして、第3章からは、実際の展開として各看護領域を設定する主旨的なものを基盤にし、看護モデルを示し臨地実習のフィールドを拡げ、具体的に実践活動に役立つようにしている。

多くの実習施設がすべて教育のための施設ではなく、実習教育環境としてふさわしいとはいえない。実習に必要な教育環境を整えることは困難であろうとも進めることが必要であり、当面、実習指導にあたっては、現場の指導者と学校教員が連携をとって指導教育にあたることが求められている。そうした思いを込めて本書を編纂した。

この書がこれからの臨地実習の新しい考え方と実践法として、臨床現場、教育機関の指導者、学生の皆さんにも目を通していただき、活用していただけることを心から念じている。そして、多くのご意見をいただき、よりよいものにしたいと願っている。

なお、本書の発刊にあたりご尽力いただいた金芳堂出版部の皆様に感謝申し上げたい。

令和3年4月
著者一同

目次

第1章 臨地実習の基本的な考え方
1.看護教育の動向
2.看護教育における臨地実習の意義と目的
3.教育環境としての臨地実習施設
4.臨地実習における指導者の資格と役割

第2章 臨地実習のすすめ方
1.臨地実習の構成
2.臨地実習の指導計画
3.実習の評価

第3章 基礎看護学
1.基礎看護学のねらいと位置づけ
2.基礎看護学の構成
3.基礎看護学実習
4.基礎看護学実習の展開

第4章 地域・在宅看護論
1.地域・在宅看護論のねらいと位置づけ
2.地域・在宅看護論のねらい
3.地域・在宅看護論の科目構成と学習内容
4.地域・在宅看護論実習の展開

第5章 成人・老年看護学Ⅰ 成人看護学
1.成人・老年看護学について
2.成人看護学のねらいと位置づけ
3.成人看護学の目標と構成
4.成人・老年看護学実習の目標と構成
5.成人・老年看護学実習領域別展開

第6章 成人・老年看護学Ⅱ 老年看護学
1.老年看護学のねらいと位置づけ
2.老年看護学の構成
3.老年看護学の目的・目標
4.老年看護学のすすめ方
5.成人・老年看護学実習
6.成人・老年看護学実習指導の実際

第7章 小児看護学
1.小児看護学のねらいと位置づけ
2.小児看護学の内容
3.小児看護学実習の展開

第8章 母性看護学
1.母性看護学のねらいと位置づけ
2.母性看護学の構成
3.母性看護学の内容
4.母性看護学実習の展開
5.今後の課題

第9章 精神看護学
1.精神看護学のねらいと位置づけ
2.精神看護学の構成
3.精神看護学の目標
4.精神看護学のすすめ方
5.演習のあれこれ
6.仮想事例の看護過程展開演習
7.精神看護学実習の概要
8.精神看護学実習の展開
9.看護実践の記録
10.実習評価

第10章 看護の統合と実践
1.看護の統合と実践のねらいと位置づけ
2.地域における看護の統合と実践
3.災害看護の考え方
4.国際看護の考え方
5.看護管理の考え方
6.看護の統合実習の展開

執筆者一覧

■監修
松木光子  大阪大学名誉教授/日本赤十字北海道看護大学名誉学長・名誉教授

■編著
宮地緑   元大阪府病院協会看護専門学校副学校長/元大阪府立看護大学医療技術短期大学部教授

■執筆者一覧
中田智子  元畿央大学健康科学部看護医療学科教授
田中恵子  千里金蘭大学看護学部教授
細田泰子  大阪府立大学大学院看護学研究科教授
牧野裕子  宝塚大学看護学部准教授
河上智香  東邦大学看護学部准教授
神戸美輪子 関西医療大学保健看護学部教授
角野加恵子 広島文化学園大学看護学部看護学科特任教授
西田好江  泉佐野泉南医師会看護専門学校副学校長
川北敬美  大阪医科薬科大学看護学部准教授

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