熊リハ発!エビデンスがわかる!つくれる!超実践リハ栄養ケースファイル
編著 | 吉村芳弘 |
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熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科副部長 |
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「リハ栄養×エビデンス」
内容紹介
本書では、ADL低下を伴うサルコペニア・低栄養患者に対して行われるリハビリテーション栄養(リハ栄養)について先進的に取り組んできた、熊本リハビリテーション病院(通称:熊リハ)におけるケーススタディもとに、エビデンスを提示しつつ、そのつくり方(臨床研究のススメ)まで網羅。
現状、エビデンスが限られた状況のリハ栄養の取り組みについて、確かな根拠を示しつつ、その基本と実践的ポイントが学べる「リハ栄養のエビデンスがわかる!つくれる!超実践的入門書!」
序文
「リハ栄養」、「エビデンス」という言葉が多用される昨今、その意味を正しく理解しているか、よく自問自答します。
リハ栄養とはリハをしながら栄養補給すること
エビデンスとは大学の研究者がつくるなにやら小難しいもの
そう思っている人にこそ本書はおすすめです。
本書は「医療現場でリハ栄養をどのように実践すればよいか」、「一般病院で臨床研究を企画・実践するにはどうしたらよいか」という2つの命題に対する現時点での私たちからの提言です。さらに、「リハ栄養」のコンセプトやその目指すところ、「エビデンス」の作り方や使い方、をこの書籍の中で私たち自身も模索しています。
リハと栄養は医療の土台です。現代の医療は個別化かつ細分化され、診断方法や治療方法も多様化していますが、そもそも適切なリハと栄養管理なくして現代医療は成り立ちません。急性疾患等に伴う短期間の急激な炎症惹起を侵襲、慢性疾患に伴う長期間の微弱な炎症惹起を悪液質と呼びますが、いずれも高齢者の低栄養の主因です。また、加齢、低活動、低栄養、疾患はサルコペニアの4大原因と言われています。入院高齢者を目にしたとき、入院の契機となった主疾患だけでなく併存疾患や栄養状態、身体活動にも注目する必要があるのはこのためです。
一方で、栄養管理は「リハビリテーション」の広義の概念に含有されています。しかし、現状のリハ医療でしっかりした栄養管理が行われているとは言い難いと思います。本邦の回復期リハ病棟ではBMIが18.5kg/m2未満の痩せの高齢者が入院中に増加しています。急性期病院も同様の問題があり、イタリアの最近の研究では入院中に2割弱の高齢者が新たにサルコペニアを発症していることが報告されています。さらに、低栄養やサルコペニアは入院高齢者の臨床的アウトカムと関連することがわかってきました。そのため、疾患治療と同時に適切なリハや栄養を行うことは必須の医療行為だと考えます。
話は変わりますが、基礎にせよ、臨床にせよ、医療者はなぜ研究するのでしょうか?IFを稼いで研究費を確保し、ポストを取るのは研究の手段です。言い換えれば代用アウトカムにすぎないのであって、真の研究の目的ではないはずです。ちょうど骨格筋量の増加が、あくまでリハ栄養介入の代用アウトカムにすぎないのと同じように。
では真の研究の目的とは何でしょう。
その答えは本書の随所に盛り込んであります。リハ栄養の実践のために必要なエビデンスの構築と、それに欠かせない臨床研究のwhatとhowについて、現時点での私たち自身の言葉を使って表現を試みました。ぜひ本書を最後まで読み進めていただき、あなた自身の答えを見つけてほしいと思っています。
2019年11月吉日
著者を代表して 吉村芳弘
目次
Prologue:なぜ、リハ栄養なのか:リハ栄養のwhy、what、how
・リハ栄養とは
・リハ栄養ケアプロセス
・本当に怖い医原性サルコペニア
・医療界にカタカナ語の氾濫?
・高齢者医療のパラダイムシフ
・リハ栄養でADLがより改善、チームがひとつに、あなたも成長する
・エビデンスが乏しい? それなら現場から発信しよう
Chapter1:覚えておきたいリハ栄養の基礎&関連知識
1:サルコペニア(診療ガイドライン2017、EWGSOP2をふまえて)
・歴史のロマン:サルコペニアの概念・定義の変遷
・サルコペニアの定義:EWGSOP2より
・症例発見とスクリーニング
・サルコペニアを判定する測定項目
・筋肉の質の測定
・サルコペニアの分類とサルコペニアに関連した状態
・サルコペニアの今後の研究の展望
・ガイドラインの活用を
2:低栄養の新しい診断基準(GLIM基準)
・満を持してGLIMが発足
・GLIM基準の低栄養診断の特徴
・GLIM基準の低栄養診断のアルゴリズム
・GLIM基準のポイント
3:サルコペニアの摂食嚥下障害
・サルコペニアの摂食嚥下障害の定義
・サルコペニアの摂食嚥下障害のメカニズム
・サルコペニアの摂食嚥下障害の診断
・サルコペニアの摂食嚥下障害の治療
・サルコペニアの摂食嚥下障害における予防、今後の展望
4:フレイル診療ガイド2018
・老化の“見える化”としてのフレイル
・Clinical Question1:フレイルとはどのような状態か?
・Clinical Question2:フレイルをどのように診断するか?
・Clinical Question3:フレイルの危険因子は?
・Clinical Question4:フレイルのアウトカムは?
・Clinical Question5:オーラルフレイルとは?
5:リハ栄養ガイドライン2018
・リハ栄養ガイドライン2018年版とは
・Clinical Question1:リハを実施している高齢の脳血管疾患患者に、強化型栄養療法は行うべきか?
・Clinical Question2:リハを実施している歳以上の大腿骨近位部骨折患者に強化型栄養療法は行うべきか?
・Clinical Question3:不応性悪液質を除く成人がん患者にリハ栄養プログラムを行うべきか?
・Clinical Question4:リハを実施されている急性疾患患者に強化型栄養療法を行うべきか?
・リハ栄養ケアプロセス
Chapter2:ケースカンファランスで学ぶ超実践リハ栄養
Case1:脳梗塞で二型糖尿病と慢性腎臓病を患った80歳代後半男性
・病院のガイコツ
・日本の栄養教育の脆弱さ
・疾患を合併した高齢者
・低栄養の悪影響
・栄養管理のパラダイムシフト
・栄養療法はリハビリテーション(運動療法)とセットで
・多職種で栄養管理をする時代に
Case2:大腿骨近位部骨折の術後でサルコペニアの70歳代後半女性
・大腿骨近位部骨折の現状
・大腿骨近位部骨折になぜサルコペニア、低栄養が多いのか
・大腿骨近位部骨折の患者にリハ栄養が必要な理由
・集団起立運動5
・転倒の原因となるフレイルの存在
・フレイル予防としての取り組み
Case3:腰椎圧迫骨折、二型糖尿病、うつ病の70歳代前半男性
・骨粗鬆症と脊椎圧迫骨折
・高齢者における血糖コントロールの考え方
・高齢者糖尿病の血糖コントロール目標
・高齢者のこころの特徴
・高齢者うつの特徴
・高齢者のうつは認知症の判別が必要
・中鎖脂肪酸の食意欲改善効果
・熊リハパワーライスの効果
・熊リハパワーライスの作り方
・高齢糖尿病患者の運動療法(リハビリテーション)の考え方
・高齢者の健康食品被害
・糖尿病の食事療法での注意事項
Case4:誤嚥性肺炎、慢性腎臓病の70歳代後半男性
・誤嚥性肺炎の病態
・老嚥とは
・サルコペニアの摂食嚥下障害
・誤嚥性肺炎に対するリハ栄養管理
・口腔管理の重要性
・慢性腎臓病(CKD)とは
・慢性腎臓病(CKD)とサルコペニア
・慢性腎臓病(CKD)に対するリハと運動療法
・CKDにおける栄養療法とそのエビデンス
・Sさんとの出会いと誤嚥性肺炎
・いよいよ歯科受診へ
・慢性腎臓病(CKD)と口腔マネジメント
Case5:脳出血で高度肥満、心不全を合併した60歳代前半女性
・肥満症とは
・高齢期の肥満はADL低下リスク
・サルコペニア肥満は単なる肥満よりADL低下・合併症・死亡リスクが上昇
・肥満に対する栄養療法
・肥満に対する運動療法
・肥満の脳卒中患者のリハビリテーション
・脳卒中になぜリハ栄養が必要か
・脳卒中患者の低栄養
・脳卒中患者のサルコペニア
・心不全のリハ栄養
Case6:舌がん術後、悪液質の80歳代半ばの男性
・悪液質とリハ栄養
・舌がんの疫学
・舌がんの治療
・舌がんの症例から
・1.口底扁平上皮がんで胃瘻から3食経口摂取が叶った
・2.舌がんステージⅣから義歯作製、
・常食経口摂取を勝ち取った症例
Case7:誤嚥性肺炎で慢性閉塞性肺疾患を合併した70歳代前半男性
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)は全身炎症性疾患
・病気があるだけで低栄養?―悪液質とは
・新しく提言された疾患関連栄養障害(Disease-related Malnutrition:DRM)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)と嚥下障害
・KTバランスチャート
・慢性閉塞性肺疾患ガイドライン2018
・運動療法のエビデンス(呼吸リハを含む)
・栄養療法のエビデンス
・運動療法と栄養療法の併用のエビデンス
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への栄養指導
Chapter3:リハ栄養の実践をエビデンスへ:対談編
Case1:第一線の管理栄養士に臨床研究は必要?
〜ずっと避けてた論文執筆
管理栄養士:嶋津さゆり
Case2:臨床をしながら論文を書くということ
〜歯科衛生士でも、一般病院でも、専門学校卒でも、何歳からでも、誰でも、英語論文は執筆できる
歯科衛生士:白石愛
Case3:質が高い臨床研究を一般病院で効率よく実践していくためには
~研究を実践する仕掛けを多職種で作ろう(PECO会議、データベース運用)
理学療法士:長野文彦
Epilogue:熊リハ発!臨床研究のススメ
・新規の学術領域の推進にはエビデンスが必要
・日本の臨床研究の現状と課題
・なぜ臨床研究が伸び悩んでいるのか
・医療者は死ぬまで勉強、働きながら勉強
・臨床研究はOn the Job Trainingが理想的
・研究のきっかけは臨床上の疑問から
・英語をマスターしよう
・臨床上の疑問をPECOへ
・PECO会議のススメ
・優れた臨床研究の条件とは3
・論文を効率的に書くために3
・リハ栄養の視点から見る退院後フォローアップ
・研究は最高の贅沢
執筆者一覧
■編著者
吉村芳弘 熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科副部長
■著者
嶋津さゆり 熊本リハビリテーション病院 管理栄養士
白石愛 熊本リハビリテーション病院 歯科衛生士
長野文彦 熊本リハビリテーション病院 理学療法士