出題基準対応 公認心理師のための基礎心理学

    定価 2,420円(本体 2,200円+税10%)
    子安増生
    B5判・205頁
    ISBN978-4-7653-1788-7
    2019年06月 刊行
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    基礎心理学分野はこれ一冊でOK! ブループリントに準拠した充実のテキスト

    内容紹介

    公認心理師国家試験においてネックとなるのが基礎心理学分野だ。これまで心理学を学ぶには分野ごとの教科書をめくるしかなかったが、本書は一人の著者が、一貫したコンセプトで執筆しているために、たった一冊で基礎心理学の全体像を効率的・体系的に学ぶことができる。問題集で知識を確認する前に本書を読むことこそ、試験合格への第一歩である。

    序文

    地震・津波や台風・雨などの自然災害は、地域のインフラや土地・家屋などの物的被害だけでなく、被災した人びとの心にも多くの爪痕を残す。戦争・紛争やテロ・犯罪、職場におけるコンフリクトやハラスメント、学校におけるいじめや暴力、家庭におけるDVや虐待などの人災的被害に直面すれば、そのできごとの間だけでなく、その後のトラウマが被害者にとって大きな心の傷となる。けがや病気や障害もまた、さまざまな悩みや苦しみをもたらす。このような心の傷や悩みや苦しみをかかえる人のことを当事者と呼ぶとすれば、当事者本人だけでなくその周囲の人びとも含め、心のケアやサポートが必要となる場面は多い。

    公認心理師法は、2015年9月に国会で成立し、2017年9月に施行されたが、その目的は、心理学の知識と技能を用いて、当事者がどのような心の状態でどのようなケアやサポートを必要としているかを的確に判断し、当事者に相談・助言・指導などの心理的支援を行い、必要に応じて当事者の周囲の人びとにも同様の心理的支援を行い、心の健康についての知識の普及に尽くすことができる専門家としての公認心理師を国家が養成することにある。

    各大学の公認心理師養成プログラムが2018年4月からスタートし、法施行から5年間の経過措置にもとづく現任者などを対象とする第1回の公認心理師国家試験が同年9月9日に行われた。他方、新たに大学に入学して公認心理師を目指す者は、学部等で所定の25科目を修得し、大学院修士課程に進んでさらに所定の10科目を修得するか、あるいは学部卒業後に指定された機関に就職して2年以上(標準的には3年)の実務経験を積むことが求められ、その上で国家試験に合格しなければならない。

    公認心理師は、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の5分野で働くことができる汎用的資格を目標としており、そのためには心理学の幅広い知識が必要となる。国家試験においては、公認心理師出題基準で24の大項目が示されているが、その付属のブループリントの出題割合の表では、基礎心理学と考えられる内容が4割弱となっている。

    実践家を目指す者は、基礎心理学の科目は苦手であったり、敬遠したくなったりする傾向があることが夙に指摘されている。しかし、上述のように、公認心理師を目指すには基礎心理学の学びを避けて通ることはできない。この問題に対処するには、基礎心理学の内容を分かりやすく説明するだけでなく、基礎が実践にどのようにつながるかを明確に示すテキストが必要であり、それが本書の目指すところである。

    「基礎と実践の往還」という言葉があるが、基礎の知識が実践の土台になるだけでなく、実践の知見が基礎の研究を発展させてきたのであり、両者は本来不可分のものである。このことは「科学者-実践家モデル」と呼ばれている。基礎心理学は、科学としての心理学を探求するものであり、日進月歩で発展を遂げてきた。しかし、最先端の知見は、定説になるまでに長い時間がかかる。まずは、既に定説となっている事柄をその根拠と共に理解することが大切である。

    筆者は、2016年に京都大学大学院教育学研究科を定年退職後、甲南大学文学部の特任教授として発達心理学、認知心理学、心理学研究法、及び心理学史の講義を担当している。そのうちの最初の3科目は、公認心理師養成科目にも指定されている。このような授業を行うことは、筆者にとって心理学の幅広い分野の知識を改めて整理するよい機会となった。他方、公認心理師法の成立を推進した三団体の一つの(社)日本心理学諸学会連合の理事長や、公認心理師試験の指定試験・登録機関の(財)日本心理研修センターの副理事長などの職務を私が経験してきたことは、公認心理師という仕事について深く理解する恰好の機会となった。この両方の成果を本書の随所に盛り込んだつもりである。

    本書のような範囲の広い領域のテーマを筆者一人で書き下ろすことは、まことに不遜なことであるかもしれないが、筆者は京都大学教育学部と同大学院教育研究科において、指導教授であった梅本堯夫(認知心理学)のほか、苧阪良二(知覚心理学)、坂野登(生理心理学)、田中昌人(障害児心理学)、河合隼雄(臨床心理学)の各先生から学んだうえに、文学部の園原太郎(発達心理学)、旧教養部の中島誠(言語発達心理学)、木下冨雄(社会心理学)といった多くの先生方の謦咳に接することもできた。筆者は、発達心理学者である前に、心理学者としてのアイデンティティを京都大学での8年4か月のうちに身につけたと思っている。ここにあらためて、先生方の学恩に心より深く感謝申し上げる次第である。

    本書の執筆にあたって、金芳堂取締役の市井輝和氏と編集部の浅井健一郎氏に大変お世話になった。ここに記して厚く御礼を申し上げる。

    2019年4月
    子安増生

    目次

    第1章 心理学・臨床心理学の全体像
    1.1 心理学・臨床心理学の成り立ち
    1.2 人の心の基本的な仕組みとその働き

    第2章  心理学における研究
    2.1 心理学における実証的研究法
    2.2 統計に関する基礎知識
    2.3 心理学で用いられる統計手法

    第3章  心理学に関する実験
    3.1 実験計画の立案
    3.2 実験データの収集とデータ処理
    3.3 実験結果の解釈と報告書の作成

    第4章  知覚及び認知
    4.1 人の感覚・知覚の機序及びその障害
    4.2 人の認知・思考の機序及びその障害

    第5章  学習及び言語
    5.1 人の行動が変化する過程
    5.2 言語の習得における機序

    第6章 感情及び人格
    6.1 感情に関する理論と感情喚起の機序
    6.2 感情が行動に及ぼす影響
    6.3 人格の概念及び形成過程
    6.4 人格の類型,特性

    第7章 脳・神経の働き
    7.1 脳神経系の構造と機能
    7.2 記憶,感情等の生理学的反応の機序
    7.3 高次脳機能の障害と必要な支援

    第8章 社会及び集団に関する心理学
    8.1 対人関係並びに集団における人の意識及び行動についての心の過程
    8.2 人の態度及び行動
    8.3 家族,集団及び文化が個人に及ぼす影響

    第9章 発達
    9.1 認知機能の発達及び感情・社会性の発達
    9.2 自己と他者の関係の在り方と心理的発達
    9.3 生涯における発達と各発達段階での特徴
    9.4 非定型発達
    9.5 高齢者の心理社会的課題と必要な支援

    第10 章 障害者(児)の心理学
    10. 1 身体障害,知的障害及び精神障害
    10. 2 障害者(児)の心理社会的課題と必要な支援

    第11 章 教育に関する心理学
    10. 1 教育現場において生じる問題とその背景
    10. 2 教育現場における心理社会的課題と必要な支援

    第12 章 司法・犯罪に関する心理学
    12. 1 犯罪,非行,犯罪被害及び家事事件に関する基本的事項
    12. 2 司法・犯罪分野における問題に対して必要な心理的支援

    第13 章 産業組織に関する心理学
    13. 1 職場における問題に対して必要な心理的支援
    13. 2 組織における人の行動

    人名一覧

    事項索引

    執筆者一覧

    著:子安増生

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