結核を除外するとはどういうことか教えます

    定価 4,400円(本体 4,000円+税10%)
    大藤貴
    国立国際医療研究センター国府台病院呼吸器内科
    A5判・149頁
    ISBN978-4-7653-2017-7
    2025年01月 刊行
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    結核の除外診断に自信が持てる!

    内容紹介

    結核の可能性を疑った、疑うべきとき、確実に特定するとき、皆さんはどのように考えていますか? 結核と診断された場合、もしくは結核が疑わしい場合は空気感染対策を行いますが、広めないために具体的に何をすればいいのか、その方法について紹介しています。また、宮崎駿作品で描かれた結核にも触れています。著者オリジナルの味のあるイラストも満載で、難しい病期の進行の変化なども頭にスッと入りやすくしました。肺結核の治療は、抗結核薬を毎日規則的に長期に飲むことで、これを結核の「化学療法」と言います。化学療法ではいろいろな抗結核薬が使われますが、その副作用も様々です。肺結核と肺外結核についてもわかりやすく解説しました。本書で、より詳しく結核のことを知っていきませんか?

    序文

    「結核を除外する」とはどういうことか、という壮大なテーマに挑戦しました。

    「結核を除外する」とは、喀痰検査で結核菌が検出されないことではありません。喀痰で陰性という結果は、「喀痰で検出されるような肺結核ではない」ということに過ぎず、結核が否定されたわけではないのです。このことは、胃液や胸水など他の検体にも当てはまります。

    「結核を除外する」とは、「結核ではないと確信できる」ことです。それを達成するには、結核という病気を深く理解し、「もし結核ならこうなる」と具体的に想像できることが必要です。

    本書は、米国内科学会日本支部で行ったレクチャー「内科医のための結核診療入門」を基に、普段結核診療に携わる機会が少ない先生方に、結核の奥深さと診療の魅力を伝えるために執筆しました。

    本書では、結核の特徴や診断方法に加え、治療法についても詳しく解説しています。さらに、肺結核に限らず、腸結核、リンパ節結核、髄膜炎など多岐にわたる肺外結核にも重点を置いています。これらの診断・治療法を含め、結核という病気を多角的に捉えられる内容となっています。

    また、日常診療に役立つ豆知識も盛り込みましたので、楽しんでお読みいただければ幸いです。本書が結核症の理解や診療に役立つ一助となれば幸いです。ちなみに、本書のイラストはほぼすべて筆者が作成したものです。

    本書の制作には5年以上の歳月を費やしました。執筆が速い方ではありませんが、書き始めてすぐにCOVID-19の流行が始まったことも長期化の要因となりました。未知の感染症と向き合う日々は、初めて結核診療に携わった頃の気持ちを思い起こさせてくれました。この場を借りて、浅井さん、井上さんをはじめ、長く支えてくださった皆様に心より感謝を申し上げます。

    2024年12月
    大藤貴

    目次

    序文

    Chapter Ⅰ 結核の特徴
    1 結核菌の特徴と感染の仕組み
    結核の分類と形態
    結核菌の転移の仕方

    2 とってもざっくりした結核の免疫
    免疫が起こる前の話(感染するまで)
    自然免疫の出動、マクロファージと結核菌の壮絶なるバトル
    細胞性免疫とインターフェロンγ
    インターフェロンγによるマクロファージの活性化
    焼け野が原から肉芽腫へ

    3 結核の感染対策について
    結核菌は飛沫核感染(空気感染)する
    防御のためのN95、広めないためのサージカル
    高齢者入院の「結核あるあるパターン」で、アンテナを張っていこう

    4 宮崎駿監督と結核症について
    『風立ちぬ』
    『風の谷のナウシカ』
    『となりのトトロ』

    Chapter Ⅱ 検査と診断
    1 結核の画像診断
    結核の胸部X線
    結核の胸部CT画像

    2 IGRA
    インターフェロンγ遊離試験(Interferon Gamma Released Assay:IGRA)は何か
    ツベルクリン反応
    IGRAとは何か
    QFTとT-SPOTの違い

    3 結核菌の微生物検査
    塗抹検査について
    培養検査について
    核酸増幅法について
    喀痰検査の感度を上げる工夫

    Chapter Ⅲ 結核の治療法
    1 結核の化学療法
    結核の標準治療、2HRZE4HR
    抗結核薬の略称
    結核の化学療法、3つの役割
    耐性菌と併用治療
    標準治療と”three-population-model”
    Dormant(休眠状態の菌)は駆逐できない

    2 抗結核薬
    標準治療に用いられる抗結核薬
    イソニアジド(isoniazid:INH)
    リファンピシン(rifampicin:RFP)
    エタンブトール(ethambutol:EB)
    ピラジナミド(pyrazinamide:PZA)

    3 潜在性結核
    潜在性結核症って何
    「潜在性結核症を治療」とはどういうことか
    潜在性結核症の診断
    IGRAの的中率に注意する
    IGRA が陰性でも、肺野に陳旧性陰影(ちょっとした石灰化)がある場合
    どんな人に「潜在性結核症の治療」が必要なのか
    潜在性結核症を検索し治療するケース
    潜在性結核症の治療

    4 結核菌と似ているようで全然違う非結核性抗酸菌症
    増えています
    非結核性抗酸菌の治療
    いろいろな非結核性抗酸菌

    5 肺結核の外科的治療
    虚脱療法
    人工気胸術
    胸郭形成術
    骨膜外充填術
    直達療法

    Chapter Ⅳ 肺結核と肺外結核
    1 肺結核・肺外結核の仕組み
    管内性転移
    リンパ行性転移
    血行性転移
    結核症の特別な進展形式

    2 転移の仕組み
    結核は腫瘍のように転移する
    初感染と初期変化群
    過去の感染を疑うCT所見
    肺野の陳旧性結核病変と生物学的製剤
    初感染と血行性転移

    3 結核性胸膜炎
    肺に水がたまる?
    結核性胸膜炎が起こる仕組み
    結核性胸膜炎は「結核菌に対する免疫反応(遅発型の過敏反応)」で生じる
    胸腔穿刺による胸水の鑑別診断
    結核性胸水の特徴
    胸水のADA(アデノシンデアミナーゼ)
    最終手段としての胸膜生検
    結核性胸膜炎を見たら、今一度喀痰の検査を

    4 腸結核
    腸結核の病態生理
    非特異的な腸結核の症状
    腸結核の診断

    5 リンパ節結核(頚部リンパ節結核)
    頚部リンパ節結核の診断
    頚部リンパ節結核の鑑別診断

    6 脊椎カリエス
    脊椎カリエスとは
    画像所見
    早期の診断が困難
    内服治療が原則

    7 結核性髄膜炎
    結核性髄膜炎の症状と病期
    髄液の抗酸菌検査
    結核性髄膜炎の髄液所見
    頭部画像所見
    結核性髄膜炎は実際どのように診断・治療するのか?

    8 重症結核(粟粒結核・敗血症・ARDSについて)
    粟粒結核は結核の「血流感染」で起こる
    肺結核と粟粒結核の違い
    粟粒結核と血液感染症
    結核と敗血症・敗血症性ショック
    粟粒結核とARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)

    9 喘息かと思ったら気管支結核だった話
    症例
    喘息と気管支結核の区別は意外に難しい
    中枢気道の閉塞をきたす鑑別疾患

    10 結核の診断的治療について
    肺外結核の場合
    肺結核の場合
    診断的治療の注意点

    Column
    PCR法いろいろ
    paradoxical reaction

    索引
    著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■著
    大藤貴 国立国際医療研究センター国府台病院呼吸器内科

    トピックス

    ■2025-01-31
    noteでの連載「編集後記」にて、本書に関する記事を公開いたしました。

    「編集後記」とは、新刊・好評書を中心に、金芳堂 編集部が本の概要と見どころ、特長、裏話、制作秘話をご紹介する連載企画です。また、本書の一部をサンプルとして立ち読みいただけるようにアップしております。

    著者と編集担当がタッグを組んで作り上げた、渾身の一冊です。この「編集後記」を読んで、少しでも身近に感じていただき、末永くご愛用いただければ嬉しいです。

    編集後記『結核を除外するとはどういうことか教えます』|株式会社 金芳堂