外科医はどう生きるか
-メスの達人が贈るロードマップ-

    定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
    阪本良弘
    杏林大学医学部付属病院肝胆膵外科診療科長・教授
    A5判・277頁
    ISBN978-4-7653-2058-0
    2025年07月 刊行
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    外科医のライフデザインに、迷ったら読め!

    内容紹介

    医師の働き方改革がスタートして1年。過酷な職場環境で知られる外科医も例外ではなく、ワークライフバランスを保つ働き方が求められています。あるいはそれを充実させた結果が、外科医不足の一因と考えられるかもしれません。

    とはいえ、外科医に憧れて医師を目指す人は今も少なくないはずです。本書では外科医の真骨頂である手術、その達人となるために不可欠な要素を余すことなく解説いたします。加えて、著者の手による美しいオペレコ、精巧な肝臓のキャスト、日々進化するMISといった、消化器外科の魅力にも溢れています。

    論文執筆、学会発表、学位取得、留学……一流の医師になるには診療の技術だけでなく幅広い見識が求められ、時に何かを犠牲にすることもあるでしょう。良い外科医として充実した一生を送るために、人生全体をどう設計するか。一人の経験豊かな外科医が、迷える現役・若手医師や医学生に向けて、本音を交えながら「メスの達人になるための極意」を伝授いたします。

    序文

    はじめに

    医師免許を得て外科医になる。それも一流の外科医に――。

    外科医に憧れている学生や研修医は少なくないと思います。ぜひ、その夢を実現させて下さい。外科医になる道は決して平坦ではありません。ですが、毎日患者さんと接しながら、一歩一歩階段を上っていけば、以前はできなかった手術が一つひとつできるようになります。初めて自転車に乗れるようになって風を切った、あの感動を何度も味わうことができます。

    正解はすべて患者さんが教えてくれます。邪念を払って、ひたすら患者さんを良くするために行動して下さい。もっとも重要なのは手術の適応です。次に重要なのは、解剖に忠実で、出血や合併症の少ない、根治性の高い手術をすることです。低侵襲な手術ができればなお良いでしょう。各疾患のState of the Artを勉強し、集学的治療について学んで下さい。その上で、手術をすることが患者さんにとって本当に有益なのかを、胸に手を当てて考えて下さい。外科医のためだけに手術をすることがないようにお願いします。

    患者さんを救うために、時には困難や自らの恐怖心と闘うことも必要です。事前によく準備をして、一旦手術をすることになれば、落ち着いて、やるべきことを少しずつ、着実に進めて下さい。進むのが困難な場面では、頭の中の引き出しを開けて、迂回路を探して下さい。そのためには解剖をよく知っておく必要があります。

    心ある先輩外科医は、あなたのことを見ていないようで実はよく見ています。そして困った時はきっとあなたの手助けをしてくれるでしょう。だから、自分の信じる師匠について、外科医の生き様を学んで下さい。

    学会に参加したり、論文を執筆したり、海外に渡ったり、学位を取得したりして幅広い見識を身につけて下さい。

    そして、一人前の外科医になったら後輩を指導して下さい。あなたより若い未来の外科医に、手術だけではなく、どうすれば良い外科医になれるのかを教えてあげて下さい。

    一流の外科医になった暁には、あなたにしかできない質の高い手術もきっとできるようになります。新しい術式を考案し、それらを英語論文にまとめ、ぜひ海外で発表して下さい。あなたの仕事は国際的な評価を得るでしょう。

    気付けば、あなたは外科医として真の自由を手に入れていると思います。自由というのは何でもできることではなく、外科医として患者さんのために何ができるのか、何をしてはいけないのかが、見えてくるということです。また、患者さんやその家族、メディカルスタッフの幸福を、心から祈ることができるようになるということです。それは、お金では買うことのできない医師としての幸福だと私は思います。

    そして常に、あなたを支えてくれている家族の存在を忘れないようにお願いします。臨床と研究と教育と家族のバランスが大切な時代になったのです。

    目次

    はじめに
    目次
    執筆者一覧
    カラー口絵

    第1章 外科医の日常
    良い手術とはどんな手術か
    プレゼンをしよう
    オペレコを書・描こう
    学会に行こう
    ≫ コラム 新幹線の隣の男
    周術期管理が日常

    第2章 外科医の働き方
    外科医の働き方改革
    やりがいをとるか コスパ・タイパをとるか
    家族を大切にしよう
    ≫ コラム 家族との時間

    第3章 外科医になるために
    外科医のキャリアアップ
    医局に入ろう
    解剖を知ろう
    仲間をつくろう
    手術中に気を付けるべきこと
    - ①術者が気を付けるべきこと
    - ②助手が気を付けるべきこと
    - ③窮地からの脱出
    ≫ コラム 札幌駅での窮地
    ≫ コラム 息苦しいマスクの中で

    第4章 一流の外科医になるために
    師匠に出会おう
    High-volume centerに行こう
    ≫ コラム ともだち
    手術の適応と外科医の品格
    論文を書こう
    - ①論文を書く理由
    - ②実際に論文を書いてみよう
    海外に渡ろう
    ≫ コラム マイアミボストン便り2008
    学位を取得しよう
    資格を取得しよう
    研究費を取得しよう
    ≫ コラム 声がかかるうちが華
    ≫ コラム 外科教授になるために

    第5章 多様な技術を求められる令和時代
    Minimally Invasive Surgery(MIS)
    - ①腹腔鏡下肝切除術のススメ
    - ②ロボット支援肝胆膵切除のススメ
    集学的治療の時代に

    おわりに

    執筆者一覧

    ■著
    阪本良弘  杏林大学医学部付属病院肝胆膵外科診療科長・教授

    ■寄稿(掲載順)
    清水達也  東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長・教授
    後藤田直人 国立がん研究センター東病院肝胆膵外科長
    井上陽介  がん研有明病院肝・胆・膵外科副部長

    ■編集協力
    伊藤寛倫  がん研有明病院肝・胆・膵外科医長

    トピックス

    ■2025-08-25 書評

    医師が、「善き生」を得るには、外科も内科もほとんど差はないなと思いました。
    書評者 杉本俊郎(滋賀医科大学総合内科学講座)

    還暦を過ぎて、医師としての人生が数年で終了することになった私は、後進の先生方に、医師として「善き生」を得るためにはどうすれば良いのか、指針を示すことができないかと考え、日々、自問自答しております。この自問自答の日々に、阪本良弘先生の「外科医はどう生きるか -メスの達人が贈るロードマップ-」を拝読し感銘をうけました。

    アリストテレスは、有徳を目指すことが幸福につながる「徳倫理学」を提唱しており、「有徳の人」にふれることも徳を得る方法であると述べています。本書を拝読することで、阪本良弘先生の医師としての徳に触れられたように思います。

    私が、最も感銘をうけたのは、阪本先生の外科医としての真の自由の定義です。「自由というのは何でもできることではなく、外科医として患者さんのために何ができるのか、何をしてはいけないのかが、見えてくることです。また、患者さんやその家族、メディカルスタッフの幸福を心から祈ることができるようになることです。」という定義です。これは、くしくも、カントの「自己が定めた格率・道徳律に準じて生きることが、自由・自律である」という義務的倫理学とほぼ同じです。外科医が有徳の人になると、大哲学者カントと同じ結論を得ることが可能になるのかと、大変おどろきました。

    勤務医の働き方改革時代に、医師人生を始める若い先生方に、外科・内科、診療科関係なく、本書を読んで頂き、阪本良弘先生の人としての徳に触れていただきたいと思います。そうすれば、医師として、「善き生」を得ることが可能になると思います。