唾液腺細胞診ミラノシステム

(原書名:The Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology)

    定価 9,020円(本体 8,200円+税10%)
    原著William C. Faquin/Esther Diana Rossi
    監訳樋口佳代子
    沖縄協同病院病理診断科
    浦野誠
    藤田医科大学医学部病理診断学講座
    B5判・155頁
    ISBN978-4-7653-1786-3
    2019年06月 刊行
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    ミラノシステムは国際的な普及をゴールとしており,本書はゴールを達成する一助となるだろう!

    内容紹介

    • 国際細胞学会IACが刊行した唾液腺細胞診の国際的な報告様式Reporting Systemの日本語版.
    • 国内には標準化された報告様式がなく、診断精度の向上や臨床と病理の意思疎通が難しい要因となっていた.原著の共著者である樋口佳代子氏と浦野誠氏が監訳者となり、本書はより原文に即した分かりやすい内容に仕上げた.
    • 第1章では、イントロダクション、続いて細胞診の報告は、I.不適正、II.非腫瘍性、III.意義不明な異型(AUS)、IV.腫瘍〔A.良性、B.良悪性不明な唾液腺腫瘍(SUMP)〕、V.悪性の疑い、VI.悪性の6段階で報告するよう病変の実例を含めて分かり易く説明している.
    • 平易な美しい日本語を駆使して読みやすく、細胞診の写真の質も保たれていて見やすい.
    • ミラノシステムの本領は細胞検査士、病理医、細胞診に携わる臨床医、画像診断医を有機的に結び付け、唾液腺腫瘍の診断と治療に有益な指針を示すことである.診断が困難な唾液腺細胞診の領域で、本書が国際水準の細胞診断をする際の座右の書として、大いに活用されることを願う.

    序文

    ●推薦のことば
    国際細胞学会IACは、これまで子宮頸部ベセスダシステム(2015)、尿路細胞診パリシステム(2016)、唾液腺ミラノシステム(2018)、甲状腺ベセスダシステム(2018)を刊行し、今後乳腺ヨコハマシステム、体腔液国際システムなど細胞診の国際的な報告様式Reporting Systemなどを刊行する予定である。このたびミラノシステムが日本語に訳され、日本で大いに普及してゆくことを鑑みIACを代表して心よりの賛辞をお送りしたい。

    ミラノシステムは、IACと米国細胞病理学会ASCが共同して作業し、腫瘍を含み諸種の唾液腺病変の細胞診につき、様々な角度から充分に説明し分かり易い図・写真を使用し、使いやすい参考書となっている。原著の共著者である樋口佳代子氏と浦野 誠氏が監訳者となっていることにより、本書がより原文に即した分かり易い内容に仕上げられている。第1章では、イントロダクションが述べられ、続いて細胞診の報告は、I.不適正、II.非腫瘍性、III.意義不明な異型(AUS)、IV.腫瘍〔A.良性、B.良悪性不明な唾液腺腫瘍(SUMP)〕、V.悪性の疑い、VI.悪性の6段階で報告するよう病変の実例を含めて分かり易く説明されている。各章に記載される6カテゴリーは、背景、定義・説明、臨床対応などに重点が述べられ、定義のなかでは診断基準、説明が簡潔に述べられている。図、表なども適材適所に配置されていて参考になる。第8章の補助診断では、病変のより詳細な検討のための免疫染色および分子病理診断が述べられており、アップデートされた内容が分かり易く記載されている。第9章の臨床的対応、第10章の唾液腺腫瘍の組織分類では細胞診の位置付けが明らかにされている。

    全体を通して、本書は平易な美しい日本語を駆使して、読みやすく仕上げられている。細胞診の写真の印刷も質が保たれていて見やすい。

    診断が得てして困難な唾液腺細胞診の領域で、本書が細胞検査士、病理医および細胞診に携わる臨床医の諸兄姉が国際水準での細胞診断する際の座右の銘として、大いに活用されることを切に願うものである。

    国際細胞学会IAC 理事長
    長村義之


    ●日本語版発刊によせて
    「The Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology」日本語版
    「唾液腺細胞診ミラノシステム」発刊によせて

    唾液腺細胞診には多くの課題があるが、ミラノシステムによるあらたな診断の枠組みが提案されたことで、その多くが軽減される。国際的な報告様式の確立は、唾液腺細胞診の有用性の向上には不可欠であるが、ミラノシステムはその初期の段階から国際的なルーツをもっていた。米国細胞病理学会と国際細胞学会の後援のもと、2015年9月、イタリアのミラノで開催されたヨーロッパ細胞学会の折に、初めてコアメンバーによる会合が持たれ、新たな唾液腺細胞診報告様式についての討議がなされ、素案が作成された。ミラノシステムアトラスの作成には細胞病理医、頭頸部外科病理医、頭頸部外科(耳鼻咽喉科)医など、世界15か国から40名以上が共著者として参加している。その努力によりミラノシステムではエビデンスにもとづき(悪性のリスクに応じて)層別化された、6つの診断カテゴリーが提案された。その結果、唾液腺病変はその細胞像や細胞構築の特徴にしたがってこれら6つのカテゴリーのどれかに亜分類されることになった。

    ミラノシステムアトラスは2018年にまず英語で出版され、すぐに米国内および国際的に受け入れられた。先だって出版された他の領域の細胞診報告様式同様、ミラノシステムの各診断区分はエデビデンスに基づいた悪性のリスクと対応している。したがってミラノシステムでは、治療医が唾液腺FNAの情報を直接かつ有効に治療方針へと結び付けられるという利点がある。ミラノシステム以前では、唾液腺FNAの報告は一貫性に欠けていた。ミラノシステムは標準的な国際報告様式を提供することにより、細胞診断医と臨床家および施設間のコミュニケーションを改善し、ひいては患者診療の向上へとつながるだろう。

    ミラノシステムは決して唾液腺FNA検体に対する解釈を変更するものではない。反応性病変はやはり非腫瘍性であり、悪性の唾液腺FNAは癌腫である。そのかわりにミラノシステムでは、唾液腺FNAの診断が誤解のないように正確に治療医に伝わるような一貫した構造になっている。

    樋口佳代子医師と浦野誠医師は共著者らとともに、比類なき努力によりミラノシステムの原著を日本語に完訳した。これはすばらしい業績であって、間違いなく、日本でのミラノシステムの導入と普及に大いに役立つだろう。ミラノシステムは当初より、国際的な普及をゴールとしており、この翻訳版はそのゴールを達成する一助となるだろう。われわれは今回の日本語への翻訳に対して心より感銘し敬意を表するものである。そして共著者らが唾液腺細胞診の分野と患者診療の向上へ貢献されたことに対してお祝いを申し上げたい。

    William C. Faquin, MD, PhD
    Esther Diana Rossi, MD, PhD


    ●監訳者あとがき
    「The Milan System for Reporting Salivary Gland Cytopathology」の訳本「唾液腺細胞診ミラノシステム」が上梓された。訳者、金芳堂の編集者諸氏そしてこのような機会を与えてくださった関係各位に心より感謝申し上げたい。

    唾液腺細胞診は侵襲性が低く、多形腺腫やワルチン腫瘍など頻度の高い良性腫瘍が高率に診断可能で唾液腺腫瘤の質的評価に有用である。しかし唾液腺腫瘍の多様性や異なる腫瘍間での組織学的類似性のため、細胞診による組織型特定や良悪性判定がしばしば困難であり、従来の細胞診診断区分では「良悪性鑑別困難」が多くなる傾向がある。このような唾液腺細胞診の特性に対処するため、国内では2004年に「唾液腺細胞診の新報告様式」が提案されたが、広く普及するにはいたらなかった。

    ミラノシステムは「良悪性の鑑別」という、我々が長く細胞診の使命と信じてきた良悪二分類への呪縛を解き、腫瘍と非腫瘍との区別に重点をおいた、患者の治療に即した新たな診断区分を提案した。そして見事に、唾液腺細胞診に特有の難題をbreak throughし、その有用性をあらためて明示している。ミラノシステムの導入によって唾液腺細胞診がさらに発展・普及することを祈りたい。

    樋口佳代子

     

    2015年11月、名古屋で行われた日本臨床細胞学会秋期大会の会場で樋口先生に声をかけられた。「唾液腺ミラノシステムの会議がアメリカであるのだけど、先生一緒に行く?」とっさに「ご一緒します」と答えたものの、その時点では内容はまったく未知であった。その後2017年3月まで、シアトル、ニューオリンズ、サンアントニオと米国を3回訪れてワーキンググループ会議に参加し、米国、ヨーロッパ、アジアの専門家達と討議を重ねた。主任編者であるDr。FaquinとDr.Rossiの適切な舵取りでミラノシステム原書は2018年初頭に完成したが、これを「絵に描いた餅」にしないために、ぜひ日本語翻訳書が必要であると考えた。

    ミラノシステムの本領は細胞検査士、細胞診専門医と臨床医、画像診断医を有機的に結び付け、唾液腺腫瘍の診断と治療に有益な指針を示すことである。今後、本邦での普及とデータの集積が期待される。

    本書の完成にあたり、各翻訳者の先生方、出版にご尽力くださった京都大学南口早智子先生、金芳堂編集部村上裕子氏に厚くお礼申し上げます。そして長きにわたり苦労と希望を共有させていただいた樋口佳代子先生に心より感謝の意を表します。

    サンアントニオでの会議の後、タワー・オブ・アメリカの展望階からみたテキサスの夕陽を思い出しながら。

    浦野 誠

    目次

    第1章 唾液腺細胞診ミラノシステム
    第2章 不適正
    第3章 非腫瘍性
    第4章 意義不明な異型
    第5章 腫瘍
    第6章 悪性の疑い
    第7章 悪性
    第8章 唾液腺細胞診の補助診断
    第9章 臨床的対応
    第10章 組織診断と唾液腺腫瘍の組織分類

    執筆者一覧

    樋口佳代子 沖縄協同病院病理診断科
    浦野誠 藤田医科大学医学部病理診断学講座
    田原沙佑美 藤田医科大学医学部病理診断学講座
    河原明彦 久留米大学病院病理診断科・病理部
    山元英崇 九州大学病院病理診断科
    廣川満良 隈病院病理診断科
    長尾俊孝 東京医科大学人体病理学分野
    谷川真希 東京医科大学人体病理学分野
    宮部悟 愛知学院大学歯学部顎顔面外科学講座
    杉田好彦 愛知学院大学歯学部口腔病理学講座
    多田雄一郎 国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センター
    中黒匡人 名古屋大学病院病理部

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