医療福祉学総論

    定価 2,200円(本体 2,000円+税10%)
    監修日野原重明
    間野忠明
    岐阜医療科学大学学長
    編集星野政明
    名古屋経済大学名誉教授
    岩瀬敏
    愛知医科大学教授
    土田耕司
    川崎医療短期大学准教授
    B5判・113頁
    ISBN978-4-7653-1737-5
    2017年12月 刊行
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    医療福祉学のスタンダードテキスト

    内容紹介

    医療の専門職を目指す学生(看護・薬学・リハビリ・放射線技師・臨床検査・柔道整復・管理栄養など)が社会福祉学における保健医療領域について学ぶためのテキスト。医療と福祉に関わる様々な制度や専門知識がどのように社会のなかで活かされていくのかを学ぶことができる。

    序文

    監修のことば

    医療は人類と共に誕生し、古代文明の発祥地を中心に発展を遂げた。病に苦しむ人々に対して心身両面から苦しみを救う医療は、心の痛みを緩和する宗教、祈祷などとも協和して自然治癒力を高め、平穏な人生を送る術を提供してきた。古い時代には福祉の概念は確立していなかったが、医療と宗教を介して人々が助け合う心情は今日の福祉に通ずるものであった。時代とともに、世界を支配していった人類は自らの生活圏を拡大するために、戦争を始めるようになり、より効率的な新兵器を作り始めた。これとともに自然科学も発達したが、同時に新兵器の犠牲となって苦しむ人々が増加した。この苦しみを和らげるために麻酔学や近代外科学などが確立され、傷病者を収容し、治療に専念するための近代的な病院が誕生した。その結果、傷病の治癒と、治癒後の社会復帰・リハビリテーションが促進された。疾病の治癒と社会復帰を支えるために各地で医療福祉と社会福祉の方策が論じられるようになった。戦争による傷害だけではなく、労働災害、天災による傷害、精神疾患、高齢者、貧困者、乳幼児などに対する社会保障、医療保険、介護保険なども検討され、実現されつつある。

    近代における医療・医学の進歩は急速であり、画像診断法の画期的な進歩に伴う外科的手術法の改善と発展、脳死移植・生体臓器移植・細胞移植の理論と技術の確立による再生医療の大きな展開、不妊治療や延命治療の進歩、人工知能を応用した医療技術の開発などによって、わが国では超高齢化が加速している。しかし、近代的な医療に恵まれない人々も多く、世界の一部には様々な疾病と食糧不足、飢餓に苦しむ人々が多く生存する。一方では、医療・医学が顕著に進歩した今日でも治療できない不治の難病も多数残されている。これに対して尊厳死、安楽死の問題も生じている。これらが法的に認可されている国もあるが、わが国では認められていなく、検討を要する大きな問題である。

    介護が不可欠な難病の人々のための介護専門職と施設が少ないのも現状である。超高齢者の増加とともに、増え続ける認知症と類縁疾患を支援するための介護施設、専門医、看護師、理学・作業療法士、管理栄養士、介護福祉士、社会・行政福祉制度も不十分であり、これらの充実が早急に望まれる。同時に心理療法・音楽療法、管理栄養などの一層の発展も期待される。

    延命治療を望まず、充実した終末期を迎えたいと希望される方々も多くおられる。誰もが終末期を迎えるが、わが国では安らかな終末期医療を受けるための施設、支援体制が充実していない。在宅医療、とくに住みなれた自宅での終末期医療を希望される方々も多い現状であるが、家族構成、少子化などの影響を受け、在宅医療にはさまざまな困難が伴う。地域に密着して医療専門職、介護専門職、福祉専門職、行政職が共同して在宅医療を助けるための医療・介護・福祉・行政が密接に連携する多職種協働システム(チーム医療・介護・福祉)の構築が重要である。このためには IT の応用が有用であり、SNS での連携や、スマートフォンなどを使う簡易型の遠隔医療システムの開発と導入も有効である。

    医療と福祉に関する多くの問題の解決と改善に向けて、本書が新しい道標となることを祈念する。

    2017年10月
    間野忠明


    はじめに

    恋愛にしても物語にしても始まり(いわゆるツカミ)はとても大切である。読者が本書を最初の数ページはおろか数行読んだだけで医療福祉学への熱意や興味を失ってしまうような事態だけは何としても回避しなければならない。これまでの「福祉学」関連の教科書は往々にして抽象的かつ難解な表現でつづられており、そのことが多くの読者の理解の妨げとなっていたように思われる。筆者は日々の診療で患者さんに病気のことを説明するのにいつも苦心するが、その際できるだけ医学用語を使わず容易な言葉に置き換えて説明するよう常々心がけている。本書で初めて医療福祉学を学ぶことになるであろう読者に対しても同様の態度で臨み、読者が「医療福祉学」に対し親しみを感じるまではいかなくても、少なくとも拒否反応を示すことなく最後まで読み終えてもらえたなら幸いである。

    2017年10月
    編者一同

    目次

    監修のことば
    はじめに

    1章 人間の生活と医療福祉(高内克彦・星野政明)
    1 人間の生活と医療福祉
    2 わが国の医療福祉政策の歴史
    3 福祉としての医療と産業としての医療―医薬品をめぐる問題から
    4 医療福祉の実現にむけて

    2章 保健医療福祉の制度体系(杉山克己)
    1 「保健・医療・福祉」と「保健医療福祉」
    2 保健医療福祉と“Life”
    3 保健医療福祉の一体的提供
    4 保健医療福祉の制度体系

    3章 社会保障の概念と制度体系
    1 社会保障と社会保険(杉山克己)
    2 年金制度(種市寛子)
    3 医療保険制度(森田城次・土田耕司)
    4 介護保険制度(内田富美江)
    5 労働関係保険制度(土田耕司)

    4章 貧困者の対策(生活保護制度)(土田耕司)
    1 貧困とは
    2 貧困と医療福祉
    3 生活保護制度

    5章 高齢者の医療福祉(葛西久志・吉岡利忠)
    1 高齢社会の実態
    2 高齢者の医療福祉政策の歴史的背景
    3 高齢者の医療福祉の現状
    4 高齢者の医療福祉の展望

    6章 子ども家庭と医療福祉(矢野正)
    1 児童福祉法と子どもの権利条約
    2 少子化・核家族化の中での子どもと家庭環境
    3 子育て期の保健・医療
    4 小児保健・医療と看護
    5 保育・教育と医療・福祉
    6 子ども家庭福祉のキーワード

    7章 障害者自立支援と医療福祉(柏倉秀克)
    1 障害とは何か
    2 障害者福祉の歴史
    3 障害者を支える法制度
    4 障害者を支えるサービス

    8章 精神疾患者への医療福祉(岩瀬敏)
    1 精神疾患者とは
    2 精神保健医療の歴史
    3 精神保健指定医
    4 精神障害者保健福祉手帳
    5 入院
    6 グループホーム

    9章 地域における医療福祉活動(柳澤理子)
    1 地域医療福祉活動推進の背景
    2 地域医療福祉の推進
    3 地域包括ケアシステム
    4 地域医療福祉の場
    5 地域医療福祉の実際
    6 地域医療福祉活動の特徴

    10章 医療福祉のトピックス
    1 災害と医療福祉(野島敬祐・河原宣子)
    2 医療福祉とリハビリテーション(岩瀬敏)
    3 医療福祉と栄養管理の役割(堀尾拓之)
    4 音楽療法の効果(近藤清彦)
    5 違法薬物と医療福祉(岩瀬敏)
    6 医療福祉とターミナルケア(内田富美江)

    おわりに
    用語集
    索引

    執筆者一覧

    ■監修
    日野原重明
    間野忠明  岐阜医療科学大学学長

    ■編集
    星野政明  名古屋経済大学名誉教授
    岩瀬敏   愛知医科大学医学部教授
    土田耕司  川崎医療短期大学医療介護福祉科准教授

    ■執筆者一覧(五十音順)
    内田富美江 社会福祉法人児童発達支援センタークムレ施設長
    葛西久志  弘前学院大学社会福祉学部教授
    柏倉秀克  日本福祉大学社会福祉学部教授
    河原宣子  京都橘大学看護学部教授
    近藤清彦  相澤病院脳卒中・脳神経センター顧問
    杉山克己  青森県立保健大学健康科学部教授
    高内克彦  河原医療福祉専門学校
    種市寛子  青森県立保健大学健康科学部助教
    野島敬祐  京都橘大学看護学部専任講師
    堀尾拓之  東海学園大学健康栄養学部教授
    森田城次  岐阜医療科学大学保健科学部教授
    柳澤理子  愛知県立大学看護学部教授
    矢野正   奈良学園大学人間教育学部准教授
    吉岡利忠  弘前学院大学学長

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