手術室の安全医学講座 Part2

    定価 4,180円(本体 3,800円+税10%)
    編著横野諭
    京都第二赤十字病院
    A5判・298頁
    ISBN978-4-7653-1697-2
    2017年01月 刊行
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    内容紹介

    手術室の安全と安心とは何か、現在の考え方を再定義し、手術室医療に関する基礎知識
    から実践手順までのさまざまなテーマを取り上げ、内外の情報も加えて丁寧に解説した。
    手術室で働く全員に有用。
    往々にして見落とされがちな項目や最近の話題などを取り上げた。手術室での小さなト
    ラブルを減らすことで大きなトラブルが回避できる。読者の日常の業務の一助にしてほし
    い。

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    序文

    “安心,それが人間の最も身近にいる敵である.(シェークスピア)

    医療の目的は,患者の疾病の治癒,苦痛の緩和,生命予後の延長,QOLの向上などです.従来,医療従事者個人により患者の医療が行われていました.しかし,医療の複雑化と専門分化,併存疾患・慢性疾患の増加,患者の高齢化などにより,今日では,一人の医療従事者で医療行為を完遂することはほぼ不可能で,多職種によるチーム医療が行われています.手術室ではなおさらのことで,多職種が“安全”かつ円滑な手術の遂行に努めていて,その結果患者さんは“安心”して手術が受けられるわけです.

    そもそも,“安全”とは何でしょうか?

    広辞苑によると,「安らかで危険のないこと.平穏無事.」とあります.医療の現場では,“安全”のために多くのマニュアルやガイドラインが作成され,多職種共通のルール化により安全が図られているにもかかわらず,有害事象は根絶されませんし,ヒヤっとするようなニアミスに到っては日常的に経験します.医療における有害事象全体の2/3は防止可能で,このうちの1/3が医療従事者の不注意に起因しているそうです.複雑化した現在の医療システムでは,医療従事者間のコミュニケーション不足や,個人の慣れや成功体験によってリスクが低めに評価されてルール違反を犯すことによりヒューマンエラーが発生します.さらに,施設や設備などのハードウェアには多くのモニターや警報などが整備されていますが,事故防止装置が進歩すると,それが子守歌のように安心させてまどろみをもたらす結果,かえって危険が大きくなる,いわゆる“ララバイ・エフェクト1)”という落とし穴があります.

    「過つは人の常,許したもうは神の業」という有名な言葉通り,誰もが間違いから逃れられません.そこで,「人の努力」や「メンテナンス」,「改善」によって安全を図ろうとした従来の考え方から,「人はミスをする」,「機械は壊れる」という前提に立って“安全”が考えられるようになりました.患者さんを含めた私たちの多くは,安全といえば一切リスクは存在しないという絶対安全を考えていますが,現実にはこのようにリスクは皆無ではなく,リスクが受容できるレベルより低いことが“安全”ということになります.

    一方,“安心”とは同じく広辞苑によれば,「心配・不安がなくて,心が安らぐこと.また,やすらかなこと.」とあります.また,「安全かどうか自分で判断できるだけの知識や情報を持ち合わせないが,専門家などを信頼してリスクの存在を忘れることができている心理状態2」.」とも言われています.患者さんは,手術の安全を自分で判断できませんが,手術スタッフを信用してリスクの存在を忘れることができて初めて“安心”が得られます.多くの監視装置や安全装置を信頼するとしても,日常業務に潜むリスクを認識し回避することが,信用される手術スタッフとしての務めだと思います.

    本書は,“安全医学講座”と銘打っていますが,手術室の安全対策を体系化したものでも,手術室に存在すると思わる多くのリスクを網羅したものでもありません.往往にして見落とされがちな項目や最近の話題などについて,乱雑ではありますが列挙しました.手術室での小さなトラブルを減らすことができれば,大きなトラブルが回避できるものと思われます.読者の日常の業務の一助になれば,著者にとって望外の喜びとするところです.

    目次

    1 手術室における労働安全衛生管理
    2 ストレスチェック
    3 タイムアウトって、もしかして時間の無駄?
    4 押したり引いたり
    5 体位変換とマンパワー
    6 ソーシャルメディアとOR
    7 ちょっと一休み(Micro-breaks)
    8 手術室のレイアウト
    9 手術室の空調環境
    10 手術室内の空気清浄度
    11 HEPAフィルタ
    12 陰圧手術室
    13 水と空気は・・・
    14 手術用手洗い水
    15 排水
    16 手術室と地球環境
    17 医療用ガスとは
    18 酸素はどこから?
    19 酸素の逆送
    20 合成空気
    21 ある日突然洪水が・・・
    22 ボンベの表札
    23 正しい酸素ボンベの取り扱い
    24 酸素ボンベの使い方のお作法
    25 酸素ボンベの替えごろ
    26 手術用ガウン
    27 ディスポ or リユース?
    28 手術室汚染と手指衛生
    29 PPEを正しく脱いでいますか?
    30 正しいPPEの外し方
    31 手術室と履き物
    32 術野の吸引用カテーテルとSSI
    33 小さな患者さん
    34 お母さんと一緒
    35 手術と不安とマルチメディア
    36 術前訪問
    37 トランスジェンダー
    38 ERAS
    39 ERAS 1.術前管理
    40 ERAS 2.術中管理
    41 ERAS 3.術後管理
    42 外傷麻酔とチェックリスト
    43 多数傷病者事故(MCI)と緊急手術
    44 フレイルと手術
    45 歩行速度と術後合併症発生率
    46 術前外来
    47 非心臓手術術前評価
    48 なぜ血圧を測るの?
    49 末梢静脈路確保の方法
    50 気道評価と気道確保器具
    51 DASってなんだす-挿管編
    52 BVM
    53 アンビューバッグでどうして換気ができるのでしょうか?
    54 カプノメトリ 1
    55 カプノメトリ 2
    56 カプノメトリ 3
    57 麻酔導入前の酸素吸入
    58 動脈ラインとその功罪:本当に必要ですか
    59 酸素マスクの流量は?
    60 サウンド・オブ・サチュレーション
    61 危機的出血Pt1
    62 危機的出血Pt2
    63 ゆらゆらと
    64 HIT・HAT
    65 あったかい気化器
    66 シリンジの表示
    67 早く効いて!!
    68 フェンタニールと咳
    69 ビーチチェアー体位
    70 局所麻酔薬とアレルギー
    71 局所麻酔薬と全身毒性
    72 Lipid Rescure:脂肪で救命
    73 CESとTNS:脊髄くも膜下麻酔後の神経障害
    74 硬膜穿刺後頭痛と硬膜外血液パッチ
    75 硬膜穿刺後頭痛とコーヒー
    76 帝王切開と酸素
    77 二つの生命 パート1
    78 二つの生命 パート2
    79 帝王切開と昇圧薬
    80 産科危機的出血 1
    81 産科危機的出血 2
    82 癌と麻酔
    83 手術と麻酔と術後肺合併症
    84 成人の術後せん妄

    執筆者一覧

    ■編著
    横野諭 京都第二赤十字病院

    ■執筆者
    安達康祐 京都第二赤十字病院
    大林聡子 東近江総合医療センター
    河野靖生 京都第二赤十字病院
    坂井麻祐子 京都第二赤十字病院
    中島昌暢 京都第二赤十字病院
    長谷川知早 京都第二赤十字病院
    早川由夏 京都第二赤十字病院
    堀井靖彦 京都第二赤十字病院
    望月則孝 京都第二赤十字病院
    元木敦子 京都第二赤十字病院
    横野敦子 京都第二赤十字病院
    横野諭 京都第二赤十字病院

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