救急看護 電話でトリアージ
-すぐに使える問診票33- 第3版

| 監修 | 白川洋一 |
|---|---|
| 愛媛大学名誉教授 | |
| 乙宗佳奈子 | |
| 香川県立中央病院救急科救急外来センター長 | |
| 編集 | 山﨑誠士 |
| 大樹会総合病院回生病院看護部 |
- 【 冊子在庫 】

★2026年10月下旬 発売予定!★
患者や家族からの救急電話応対のコミュニケーション能力を身につけよう 医療現場の変化に合わせ、内容をさらに充実させ再構成した第3版
内容紹介
患者・家族から救急の電話を受けたとき、顔の見えないパニック状態の相手から診療に有効な情報を得るには、必要な情報を確実に引き出すための問い方が重要になります。
本書には質問の優先順位や必須項目、緊急性の判断などをふまえ作成したオリジナルの問診票を症状別に掲載しています。問診票に沿って質問を進めることで、状況を的確に判断し、来院方法や応急処置を伝える電話トリアージをシミュレーションすることができます。
高齢化による在宅医療や担がん患者の増加など、医療現場の状況も年々変化してきています。基本構成はそのままに、現状に合わせて内容をブラッシュアップした改訂版としてお届けします。
序文
改訂にあたって
本書は、救急部門の看護師が「トリアージ」を学習するとき読んでいただきたい教材です。
患者や家族からの問い合わせ電話に応対するとき、どんな質問をして、どのように話すか、病院によってある程度の決まりがあると思います。たとえば、氏名、年齢、性別、主訴だけを聞いて「すぐに救急窓口へお出でください」と答えるようにしている病院もあれば、さらに、簡単な指導を加える場合もあるでしょう。たとえば、「常用薬は持参してください」とか、「(熱傷ならば)水道の蛇口で水をかけて冷やしてから来てください」とか、ですね。
これはこれで立派にトリアージ機能を果たしていると思いますが、もう少し深く掘り下げて、体系的に実施したいという要請が生じるのは当然のことです。たとえば、重症度や緊急度にもとづいた診療の優先順位をつけたいとか、軽症患者は他所の(一次救急の)病院へ行ってほしいとか、必要もないのに救急車を呼んでほしくないとか、とは言っても重症ならば救急車ですぐ来てほしいとか…考え始めるとなかなか複雑ですから、一定のトリアージシートのアルゴリズムに従って機械的に振り分けるという方法が考案され、利用されています。本書の各項目冒頭に置かれた「問診票」は、その一例として私たちが作ったものです。
しかし、この問診票を使えば、明日からすぐに「救急トリアージ」が始められるか? たとえ話になりますが、英会話教本の「例文」を丸覚えしただけで、ロスのレストランで(メニューを見ずに)料理を注文することができますか? 無理でしょう。現実がその例文の通り進行することは、まず絶対にありません。練習した例文に固執すればするほど泥沼にハマッてしまい、会話がヘロヘロになることは、経験した人ならわかるでしょう。だからと言って、勉強したことが無駄になるわけではないのです。
「よい質問がよい回答をひき出す」と言われます。会話は「質問力」を要求されるのです。トリアージの原則的な考え方や基礎となる医学知識は普遍的なものです。私たちが電話トリアージを体系的に実施したいと思ったとき、こうした基礎的知識をしっかりまとめておくことが質問力を養うのに必要と考えました。したがって、本書は「マニュアル」という体裁になっていますが、これは英会話教本の「例文」のようなものです。むしろ、問診票に続く解説の部分が救急医療のエッセンスになっていますから、救急全般にわたる教材としてご利用いただければ幸いです。これを参考に、自分たちの環境に適したプロトコールを作ってください。
2010年に出版された初版と、2014年の改訂2版は、当時私が勤務していた大樹会回生病院のスタッフの協力を得ました。しかし、今回の改訂3版は10年以上の年月を経ているため、編集作業の大部分を乙宗佳奈子氏にお願いしました、そして、執筆陣には、乙宗氏が現在勤務している香川県立中央病院救急外来センターのスタッフに加わっていただきました。したがって、今後も改訂作業が続くとすれば、乙宗氏のもとで行われることになります。老兵は消えゆくのみ。
2026年10月
愛媛大学名誉教授
白川洋一
電話トリアージへの取り組み
トリアージは2000年ころより救急病院で導入されはじめ、診療報酬改定において2010年では小児患者、2012年には成人患者にトリアージ加算が認められました。ここ20年ほどで、トリアージという言葉は災害医療や救急医療を中心に当たり前のように使われるようになり、広く社会にも浸透しています。
私たち救急医療に携わる医療者は、トリアージの質を向上するために、Japan Triage Acuity Score(JTAS)の研修や院内外における教育活動また事後検証などを行い、その経験や知識を蓄積してきました。それらが各々の病院で使用されているトリアージプロトコールとなり、それを用いることができるのは、現場としても心強く思います。
私たちが用いる電話トリアージという言葉は、電話での受診相談(依頼)を看護師が応対している様子から生まれました。看護師は患者より情報を収集することで、緊急性はどうか、来院方法はどうするかなどを判断してきました。一方で時間外の限られたマンパワーの中で、看護師が電話対応に多大な時間を割くことは本当に妥当かとも考え、その必要性について話し合いを重ねました。そして、電話対応の段階から看護師が関わることによって、患者の病態をいち早く把握し、院内トリアージにも継続させることができるという考えが強くなってきました。
患者に触れることなく、電話の内容だけから症状を収集し、さらに話し方なども加味して緊急度や重症度を判断するには、高度なスキルとコミュニケーション能力が必要です。私たちは電話対応の中で、現実にそうした判断を行い、応急処置や来院方法を指導していました。また、当院は時間外診療において対応できない診療科もあり、看護師が行う電話対応には他院への案内や翌日の受診を勧めるなどの役割も含まれていました。しかし、具体的なプロトコールがないため、個人の経験や技術に頼っているのが現状でした。そうした限界を乗り越えるために、2008年当時に回生病院院長として赴任されていた白川洋一先生を中心とした救急科医師の協力を得て、患者の症状から緊急度・重症度を判断し、来院方法の決定や応急処置法を伝えるためのプロトコール作りに取り組みました。その成果が2010年に金芳堂の協力を得て、発刊した「電話でトリアージ」第1版になります。
しかし10年ひと昔といいますか、初版より10年以上経ちますと、執筆する際に参考にしたガイドラインの変更が行われている場合や、この本に求められるものも変化しています。今回、小児の考え方や最新のガイドラインを参考に、電話トリアージに必要な問診や知識をまとめることができました。ある程度までレベルの保証された問診が可能になると考えています。
電話には当意即妙の応対が必要ですし、問診だけではわからない情報が多くあるのも事実です。しかし、本書は、看護師がそうしたスキルを身に着けるための学習にも役立つことを期待しています。
最後に、今回第3版改訂において監修していただいた白川洋一先生、乙宗佳奈子先生、執筆協力いただきました諸先生方、金芳堂 石井さま、皆様に感謝。
社会医療法人財団大樹会 総合病院回生病院
(救急看護認定看護師)
山﨑誠士
あとがき
電話だけで患者さんの状態を判断することは、本当に難しいことです。顔色も呼吸も歩き方も見えないまま、声だけを頼りに状況を想像し、必要な助言を届ける。ときに不安を抱えた患者さんの声が震えたり、言葉が途切れたり、要領を得ず、むしろ興奮して会話が成り立たないこともあります。そんなとき、看護師には「判断」と同じくらい「寄り添い」が求められます。本書は、その両方を大切にしたいという思いから、当時ともに働いていた救急看護認定看護師・山﨑誠士さんを中心とした看護師たちとともに作成されました。
初版は2010年、第2版は2014年に刊行され、そして今回、10年以上を経て第3版を改訂することになりました。この間、医療現場は大きく変化しました。電話トリアージの役割は広がり、ガイドラインも更新され、看護師が身につけるべき知識は以前よりも多岐にわたっています。今回の改訂では、こうした変化を丁寧に反映し、基礎知識の部分を大幅にブラッシュアップしました。
さらに近年は、高齢者や担癌患者さん、在宅療養の患者さんを支える地域の医療・介護連携が欠かせない時代となりました。かかりつけ医、訪問看護、訪問介護など多職種が関わる状況を踏まえた判断が、電話相談でも求められています。そのため本書では、救急の基礎知識に加え、これらの患者さんに特有の視点も盛り込み、より実践的な内容となるよう工夫しました。
今回、監修という大役を任されたのは、私たちを長年指導してくださった白川洋一先生からのご依頼でした。白川先生は電話トリアージの重要性を深く理解し、その姿勢を私たちに教えてくださった方です。先生のように軽やかに監修をこなすことはまだできませんが、私なりに誠実に向き合い、学びながら作り上げたのが今回の第3版です。
この本が、電話相談に携わる看護師の心の支えとなり、患者さんの安心につながる一冊になればと願っています。医療は日々アップデートされ、患者さんを取り巻く環境も変わり続けます。しかし、私たちの「患者さんを守りたい」という思いは変わりません。本書もまた、皆さんとともに育っていく存在でありたいと願っています。
香川県立中央病院救急科
救急外来センター長
乙宗佳奈子
目次
改訂にあたって
電話トリアージへの取り組み
§1 問診とトリアージ
1 発熱〈成人/小児〉
2 頭痛
3 胸痛
4 腹痛
5 腰痛・背部の痛み
6 失神
7 意識障害
8 発声、発語の障害
9 運動麻痺・感覚障害
10 けいれん
11 めまい
12 呼吸困難〈成人/小児〉
13 動悸
14 吐き気・嘔吐
15 下痢
16 吐血・下血・血便
17 鼻出血
18 視力低下
19 じんま疹・アレルギー
20 尿の異常、排尿の異常
21 頭部/顔面/頸部の外傷
22 胸部/腹部/腰部の外傷
23 四肢の外傷
24 熱傷
25 固形の異物を飲んだ
26 動物の咬傷、刺傷
27 食中毒
28 医薬品の誤用、誤食
29 農薬や化学用品・工業用品を飲んだ
30 ガスの吸入
31 熱中症
32 小児の基本問診票
33 産科問診票
§2 知っておきたい救急治療の基礎知識
1 痛みの問診法
2 ショック
3 体位
4 脳卒中
5 外傷初療
6 高圧注入損傷
7 在宅医療と救急医療
8 オンコロジーエマージェンシー
9 免疫不全患者に潜む重症化の落とし穴
COLUMN
受診相談で気をつけていること①
受診相談で気をつけていること②
体動困難
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あとがき
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