脳血管障害と運動器障害における上肢機能の評価と治療
★2026年8月下旬 発売予定!★
脳血管障害も運動器障害も。この一冊で学ぶ上肢機能障害
内容紹介
脳血管障害と運動器障害は、作業療法士・理学療法士が臨床で最も多く関わる疾患領域です。しかし実際の臨床では、それぞれを個別に理解するだけでは十分とはいえません。高齢化の進展に伴い、脳血管障害と運動器障害を併せもつ患者も少なくなく、病態を包括的に捉えた評価・治療が求められています。
本書は、上肢機能障害をテーマに、「脳血管障害」と「運動器障害」の両方を一冊で学べる実践的な教科書です。上肢機能の基礎知識や関節拘縮の病態から、脳血管障害・運動器障害それぞれに対する評価・治療、さらにADL支援までを体系的に解説。医師の視点とセラピストの視点を組み合わせることで、病態の理解から臨床でのアプローチまで無理なく学べる構成となっています。
養成校における「身体障害治療学」、「作業療法治療学(神経)」などの授業はもちろん、国家試験対策や臨床実習、卒後教育にも役立つ内容を収載。学生から若手セラピストまで、上肢機能障害を総合的に学びたい方に最適な一冊です。実際の動作や介入方法を視覚的にイメージできるWEB動画付!
序文
本書の企画にあたり、改めて作業療法士という職種について考える機会を得ました。セラピスト(作業療法士・理学療法士)は、専門性を有しながらも医師とは異なり、特定の診療科のみを担当するのではなく、幅広い疾患や背景を有する対象者を横断的に担当することが求められる職種です。私自身も臨床現場において、そのような形で実践を重ねてきました。その経験の影響もあり、現在は「上肢機能」をテーマに、中枢神経疾患、整形外科疾患、さらには重症患者を対象とした複数の研究に取り組んでいます。
その中で私が向き合ってきた臨床課題は、「疾患」そのものではなく、対象者が抱える困難な状況に寄り添い、少しでも上肢機能を改善するために何が必要なのか、という本質的な問いです。その答えとして私が確信しているのが、脳血管障害や運動器障害といった枠組みにとらわれず、両者を組み合わせた発想の重要性です。
本書では、治療アプローチごとに内容を整理しています。そこで提示している治療アプローチは、すべてが確立したエビデンスに裏付けられているわけではありませんが、現時点で得られている知見と臨床経験を統合し、実践的な観点から整理したものです。さらに、それらの知識を臨床で実践していく過程において、脳血管障害と運動器障害の枠を越えて、治療アプローチを相互に応用する視点が広がることを意図しています。
正直なところ、学術的には設備の整った施設が取り上げられることが多い一方で、それらを実際にどこまで現場で活用できるかは必ずしも明確ではありません。全国のセラピストの方々と交流する中で、「その方法は知らなかった」「自施設では実施が難しい」といった声を耳にすることも少なくありません。本来、リハビリテーション環境は整備されるべきであるにもかかわらず、それが十分に実現できていない背景があると感じています。そのため本書では、そうした現状を踏まえ、できる限り多様な環境下でも活用できる治療アプローチを網羅的に提示することを意識しました。
本来、リハビリテーションにあたっては疾患特性を踏まえることが前提となりますが、本書ではその詳細な解説よりも、臨床で実際に活用できる治療アプローチに焦点を当てています。疾患特性に関する各論については専門書を参照していただき、本書では実践的な部分を中心に学んでいただければ幸いです。
さらに本書の特徴として、動画コンテンツを用いている点が挙げられます。本書だけではイメージしにくい内容についても、実際の動作や介入方法を具体的にイメージできるよう、動画を通じて理解を深められる構成としています。
脳血管障害と運動器障害の双方を包括的に扱うことで、セラピストがより幅広い対象者に対して、効果的かつ実践的なアプローチを提供できる書籍となることを願っています。
理論を、実践へ。
この一歩が、次の一歩へ。
最後に、本書の作成にあたり多大なるご尽力を賜りました西堀氏をはじめ、金芳堂の皆様に心より感謝申し上げます。また、本書にご協力いただいたすべての皆様に深く御礼申し上げます。
2026年8月
青木啓一郎
目次
特設サイトについて
略語一覧
第1章 上肢機能のアプローチに必要な基礎知識
1 対象者の困難に寄り添う上肢機能アプローチ
はじめに
生活者としての対象者を捉える
疾患枠にとらわれず、困難を多角的に捉える
対象者中心のゴール設定
対象者中心アプローチを支えるチーム連携
解剖学や運動学に基づくアプローチ方法の重要性
本書への展望
2 上肢および手指の骨・関節の機能解剖
はじめに
関節
運動軸と運動面
主な関節運動名
肩甲胸郭関節の運動および肢位
複合体としての肩
自己学習目標の一覧
おわりに
3 上肢および手指の筋・腱の機能解剖
はじめに:筋の働きは相互に関連し合う動的なシステム
筋作用の基本原理
フォースカップル
上肢帯の筋連結
肩の筋連結
肘、前腕の筋連結
手関節の筋連結
手指の筋連結
動作と作業における筋連結
まとめ
4 神経支配と運動制御のメカニズム
はじめに
神経系の全体像と構造
脳と脊髄
末梢神経
運動制御のメカニズム
運動単位と神経伝達
フィードフォワード制御とフィードバック制御
随意運動 / 自動運動 / 姿勢制御
第2章 関節拘縮の病態
プロローグ
1 関節拘縮の発生メカニズム
はじめに
損傷と回復
関節拘縮の発生メカニズム
回復過程における病態の進行
2 線維化と高密度化の病態
はじめに
関節拘縮における線維化
関節拘縮の高密度化
高密度化の臨床的意義と増悪因子
まとめ
3 脳血管障害・運動器障害の上肢・手指における拘縮の特徴
はじめに
運動器障害の上肢・手指における拘縮の特徴 / 上肢・手指における拘縮の概要と病態生理
拘縮の臨床的特徴と管理
脳血管障害の上肢・手指における拘縮の特徴
第3章 脳血管障害による上肢機能障害 医師の視点から
1 脳血管障害による上肢機能障害の病態
脳血管障害とは
虚血性脳血管障害のサブタイプ
出血性脳血管障害のサブタイプ
脳血管障害に起因する上肢機能障害のメカニズム
運動指令の下行路
脳地図の把握とオリエンテーション
大脳皮質のホムンクルス
放線冠
内包
被殻・視床
橋
痙縮
2 脳の可塑性とリハビリテーション
可塑性の科学的背景とリハビリテーションでの応用の可能性
可塑性のメカニズム
可塑性を促進するための治療戦略
ニューロリハビリテーション
3 リハビリテーションの重要性
チーム医療とは
多職種連携(IPW)とは
リハビリテーション科医の役割
チーム医療3つのモデル
理想的な上肢機能障害へのアプローチとは
第4章 脳血管障害による上肢機能障害 セラピストのアプローチ
1 脳血管障害に対するアプローチの考え方
はじめに
エビデンスレベルと推奨度の理解
アプローチ別の位置づけ
セラピストが押さえるべき視点
まとめ
2 課題指向型訓練
はじめに
課題指向型訓練とは
脳卒中リハビリテーションのパラダイムシフトと課題指向型訓練の位置づけ
課題指向型訓練の特徴と構成要素
課題設定に必要な評価と難易度調整
各評価のICFを用いた理解
課題の難易度調整の考え方
重度例に対する対応
まとめ
3 ロボット療法
はじめに
リハビリテーションロボット
上肢のロボット療法
上肢練習支援ロボット
ロボット療法の効果
代表的なロボットと使用方法
ロボット療法の留意点
おわりに
4 電気刺激療法
はじめに
電気刺激療法の基礎知識
電気刺激の神経生理学的な作用機序
刺激条件とその設定方法
電気刺激療法の実際
神経筋電気刺激(NMES)
筋電図誘発型電気刺激(ETMS)
運動麻痺の重症度に応じたプログラム設定
電気刺激療法に関するエビデンスの紹介
まとめ
5 ミラーセラピー
はじめに
歴史的背景
作用機序(理論的背景)
ミラーセラピーの実施方法
ミラーセラピーと併用する治療アプローチ
まとめ
6 促通反復療法
促通反復療法の総論:定義・歴史・目的
理論的背景
基本手技・手法
反復運動(repetition)とdosing(運動量設計)
臨床応用:上肢・下肢・体幹・歩行・眼球運動・併用療法
臨床研究におけるエビデンスと有効性の検証
今後の展望
第5章 運動器障害による上肢機能障害 医師の視点から
1 運動器障害とは
はじめに
上肢の運動器
運動器障害
機能障害
2 リハビリテーションの重要性
アプローチにあたっての注意点
3 上肢の代表的疾患
手
手関節
肘関節
肩関節
4 セラピストとの連携の意義
第6章 運動器障害による上肢機能障害 セラピストのアプローチ
1 運動器障害に対するアプローチの考え方
はじめに
アプローチの基本原則
まとめ
2 徒手療法
関節アプローチ
筋膜間滑走性アプローチ
ファシアアプローチ:フロッシング
フロッシングの臨床応用
3 装具療法
上肢装具療法の基礎概念と素材の違い
素材選択の考え方
手関節・前腕に対するスプリント
拘縮に対するスプリント(手指)
関節症に対するスプリント(母指CM関節症を中心に)
4 運動療法
腱に対するエクササイズ
肩甲帯、肩関節、肘関節、前腕、指・手関節に対するエクササイズ
5 浮腫管理とアプローチ
はじめに
浮腫の種類
浮腫と拘縮
浮腫の評価
浮腫へのアプローチ
その他のアプローチ
患者教育の重要性
第7章 上肢機能障害に対するADL支援
1 上肢機能とADLの関連性
はじめに
脳血管障害および運動器疾患における上肢機能障害とADL評価
上肢機能訓練におけるADL課題活用の意義
2 上肢機能障害に適用可能な福祉用具の種類と特徴
はじめに:上肢障害によるADLへの影響と福祉用具
上肢障害に対する福祉用具の概略
上肢の抗重力動作を補うもの
手指の巧緻性を補うもの
食事の自助具
整容・更衣の自助具
入浴の自助具
調理の自助具
3 食事動作支援のアプローチ
人にとって食事動作とは
摂食・嚥下のプロセス
誤嚥性肺炎と食事動作支援
食事動作姿勢の重要性とアプローチ
食具の使用へのアプローチ
4 更衣動作支援のアプローチ
はじめに
更衣動作の特徴
評価の観点
アプローチの実際
家族・介護者との連携
自立支援としての更衣動作訓練の意義
5 排泄(トイレ)動作支援のアプローチ
はじめに
トイレ動作のプロセス
評価の視点
アプローチの実際
おわりに
索引
編著者略歴
執筆者一覧
■編著
青木啓一郎 東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部作業療法学科
■執筆者一覧
鈴木憲雄 専門学校社会医学技術学院作業療法学科
神保洋平 前湘南医療大学保健医療学部リハビリテーション学科
池田公平 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
今北英高 埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
笠井史人 昭和医科大学医学部リハビリテーション医学講座
廣瀬卓哉 昭和医科大学藤が丘リハビリテーション病院
太田皓文 藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科作業療法専攻
大高洋平 藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座
田辺茂雄 藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科
伊藤一輝 藤田医科大学病院リハビリテーション部
内堀謙吾 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
富田一誠 國學院大學人間開発学部健康体育学科/昭和医科大学医学部整形外科学講座
佐々木秀一 北里大学病院リハビリテーション部
志水宏行 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
駒場一貴 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
齋藤甚 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
大澤彩 東京医療専門職大学リハビリテーション学部作業療法学科
渡部喬之 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
出口弦舞 国際医療福祉大学小田原保健医療学部作業療法学科
渡邉真理奈 昭和医科大学江東豊洲病院リハビリテーション室
千賀浩太郎 昭和医科大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
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■2026-07-27
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