心電図判読大全

    定価 6,930円(本体 6,300円+税10%)
    著藤澤友輝
    愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座(第二内科)
    B5判・344頁
    ISBN978-4-7653-2100-6
    2026年04月 刊行
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    心電図判読力を極める『心電図判読大全』

    内容紹介

    心電図学習における「所見が拾えない」という初級者の壁から、「波形異常はわかるが診断にたどりつけない」という中級者の壁まで、波形変化を起点とした体系的な鑑別力を段階的に鍛え上げます。さらに、他書では扱われることの少ない先天性心疾患やペースメーカ心電図についても実践的な視点から詳しく解説し、上級者レベルの理解へと導きます。

    初学者にとっては読み進めやすく、上級者にとっては思考を深める十分な知識量を備え、臨床現場で迷ったときには辞書のように引くことができる構成です。著者が臨床と研究で培った心電図の知識を余すところなく注ぎ込んだ、心電図の決定版です。

    序文

    推薦の序

    心電図の歴史は、はるか100年以上の昔まで遡ることができます。この長い歴史の中、数多くの先輩たちが心電図を前に様々な患者の臨床像と突き合わせ、その経験から計り知れないほどの知見を集積してきました。ブルガダ兄弟が若年突然死例の生前心電図を収集して、その特徴をブルガダ型心電図として報告したのはその典型といえるでしょう。このように胸部レントゲン写真と心電図だけから患者の臨床病態を推し量るという作業の中で培われてきた知識は、近代化された様々な検査技術の発展の中で緩徐に崩れ、消え去ろうとしていますが、それも世の常といえるかもしれません。

    本書は、このような時代の中、「心電図判読大全」と銘打った全335ページの大作です。著者は、私が所長を担っていた時代、心臓血管研究所に勤務し、まもなく心電図検定マイスターに合格しています。現在では愛媛大学で臨床を行いながら、メディカル、コメディカルを対象に、熱心に心電図に関する教育活動を行っていることは多くの若手医療者が知っていることでしょう。すでに4冊もの心電図関連書籍を著し、いずれも学習者に好評を博しています。心臓血管研究所に勤務している時代から心電図マニアであることはよく知っていましたが、教育という意味でこれほどの目を見張る活躍は想像していませんでした。

    そして、本書はこれまでの彼の著作とは一線を画しています。これまでの著作はどちらかといえば心電図問題集といった形態でしたが、本書は「大全」の名通り、オーソドックスな心電図教科書となっています。歴史に報告された数々の心電図研究をあらいざらい見直し、現代の視点であらたにまとめなおしたものとなっています。心電図に触れて40年以上という自分さえ、知らない単語や知識が詰め込まれていました。

    読者は、本書を第1ページから順々に読み進めることより、この分野の知識をもう少し整理、もしくはアップデートしておきたいなという章をひと固まりとして読むことをお勧めします。本書を通して、読者が歴史に培われた心電図の知識を身につけることを心から祈念しています。

    2026年2月
    心臓血管研究所 山下武志


    序文

    世の中には、心電図に関する書籍が数多く存在します。しかし、カテーテルアブレーションや心臓電気生理学的検査の技術が進歩し続ける現在において、心電図の世界でもなお新たな発見が日々生まれ続けています。偉人たちが積み重ねてきた心電図学の歴史と、最新の心電図波形の考え方や鑑別方法までを一冊に集約した、「バイブル」と呼べるような書籍が欲しい――それが本書執筆の出発点でした。

    私は、心電図の学習にはいくつかの“壁”が存在すると考えています。初級者の壁は、「心電図を見ても所見が十分に拾えず、何が起きているのか全くわからない」という段階です。この壁を越えるためには、ある程度は典型的な波形と疾患を結びつけた知識を、繰り返し学ぶしかありません。読む本を絞り、何度も見返しながら、「この異常だから、この波形」「この変化を見たら、この疾患」という対応関係を体に染み込ませていくことが重要です。

    次に立ちはだかる中級者の壁は、「波形の異常はわかるが、そこから診断にたどりつけない」というものです。多くの場合、これは「疾患から心電図を考える」学習に偏り、「心電図変化から疾患を導く」思考訓練が不足していることに起因します。波形変化を起点に鑑別疾患を整理し、それらを自在に引き出せるようになるためには、体系的な鑑別力を鍛える必要があります。本書は、こうした知識と鑑別力を段階的に高め、さらにその先の上級者レベルの理解へと導くことを目的に、丹念に練り上げられました。より高いレベルに到達してほしいという思いから、他書では扱われることの少ない先天性心疾患やペースメーカ心電図についても、実践的な視点から詳しく解説しています。

    本書の執筆にあたり、私が最も苦心したのは、「知識をどのように整理し、どこまで詰め込むか」という点でした。心電図の波形変化は非常に奥が深く、基本的なパターンが存在する一方で、例外や特殊例を挙げ始めれば際限がありません。初級者向けの書籍では、それらの例外をあえて扱わず、教科書的な解説にとどめることが多く、そのような書籍はすでに数多く存在します。

    一方、専門的な書籍になると、電気生理学的な理解が不可欠となり、解説はどうしても難解になります。その結果、「この可能性もある」「あの可能性も否定できない」といった、煮え切らない記述に終始してしまうことも少なくありません。それでは、読み進める楽しさは失われてしまいます。

    本書は、こうした課題を解決するために構成されました。初学者にとっては読み進めやすく、上級者にとっては思考を深めるだけの十分な知識量を備え、さらに困ったときには辞書のように引くことができる――そのような一冊を目指しています。これまで私自身が臨床と研究の中で積み重ねてきた心電図の叡智を、余すところなく本書に注ぎ込みました。心電図に迷ったとき、立ち止まったとき、本書が常に傍らにある存在となれば幸いです。

    最後に、本書の刊行にあたり、多大なるご尽力を賜りました金芳堂編集部の皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。

    2026年2月
    藤澤友輝

    目次

    1 心電図の基本
    心電図のとり方
    四肢誘導と胸部誘導
    較正波とペーパースピードとフィルター
    波形の名称
    刺激伝導系について
    その他の心臓検査について

    2 正常洞調律について識る
    心電図の特徴を理解する
    心電図以外の情報を大事にする
    調律の確認、心拍数を計算する
    波形を判別する

    3 あるはずのP波がない
    心房細動・心房粗動・心房頻拍
    - (1)心房細動
    - (2)心房粗動
    - (3)(促進性)接合部調律
    - (4)(促進性)心室固有調律
    - (5)心房停止

    4 P波異常
    P波の成り立ちについて
    - (1)右房拡大
    - (2)左房負荷
    - (3)異所性心房調律
    - (4)ペースメーカ移動(Pacemaker shift)、移動性ペースメーカ(Wandering pacemaker)

    5 PR異常
    WPW症候群完全解説
    - (1)WPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)
    - (2)LGL症候群(Lown-Ganong-Levine syndrome)
    - (3)1度房室ブロック

    6 QRS異常
    脚ブロック、脚枝ブロックのすべて(ポイント解説)
    - (1)右軸偏位
    - (2)左軸偏位
    - (3)右脚ブロック(RBBB)
    - (4)左脚ブロック(LBBB)
    - (5)非特異的心室内伝導遅延
    - (6)左脚前枝ブロック
    - (7)左脚後枝ブロック
    - (8)2枝ブロック
    - (9)仮装脚ブロック(masquerading bundle branch block : MBBB)
    - (10)3枝ブロック
    - (11)交代性脚ブロック

    7 QRS波の電位異常
    左室肥大まとめ(左室高電位とT波の変化)
    - (1)左室肥大
    - (2)左室拡大
    - (3)肥大型心筋症
    - (4)拡張型心筋症
    - (5)低電位

    8 異常Q波
    電極の付け間違い
    - (1)陳旧性心筋梗塞(右冠動脈)
    - (2)左右手の電極の付け間違い
    - (3)心サルコイドーシス

    9 胸部誘導のR波の増高不良(poor R-wave progression:PRWP)
    肺血栓塞栓症
    - (1)R波増高不良(左前下行枝陳旧性心筋梗塞)
    - (2)時計回転
    - (3)右胸心
    - (4)肺血栓塞栓症(PTE)

    10 V1でR波が高い
    心筋症
    拡張型心筋症
    - (1)反時計回転
    - (2)後壁梗塞
    - (3)右室肥大

    11 ST上昇
    虚血性心疾患の定義
    ST変化の原因と心電図変化のメカニズム
    虚血性心疾患のST変化の定義
    冠動脈の解剖学と血行領域
    各部位におけるSTEMIの心電図所見
    心筋梗塞の時間経過と心電図変化
    陳旧性心筋梗塞の心電図所見と鑑別
    - (1)ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI/右冠動脈遠位部)
    - (2)心室瘤
    - (3)心筋炎
    - (4)心膜炎
    - (5)たこつぼ型心筋症(急性期)

    12 STでの異常
    早期再分極(J波症候群とブルガダ症候群)
    - (1)ブルガダ症候群
    - (2)不整脈原性右室心筋症
    - (3)J波症候群
    - (4)低体温(Osborn波)

    13 T波異常
    たこつぼ型心筋症(Takotsubo Cardiomyopathy)
    - (1)高カリウム血症
    - (2)心尖部肥大型心筋症
    - (3)たこつぼ型心筋症(亜急性期)

    14 ST低下
    電解質異常
    - (1)心内膜下梗塞
    - (2)急性後壁梗塞
    - (3)二次性ST-T変化
    - (4)低カリウム血症
    - (5)くも膜下出血

    15 QT延長・短縮
    先天性QT異常を伴う疾患
    - (1)高カルシウム血症
    - (2)低カルシウム血症
    - (3)先天性QT延長症候群
    - (4)薬剤性QT延長
    - (5)ジギタリス効果(QT短縮)

    16 早いP、QRS波の出現
    上室期外収縮
    心室期外収縮
    - (1)間入性心室期外収縮
    - (2)完全代償性休止期を伴う心室期外収縮
    - (3)副収縮
    - (4)上室期外収縮(PAC)
    - (5)変行伝導を伴う上室期外収縮
    - (6)接合部期外収縮

    17 突然のRR延長
    洞不全症候群
    - (1)洞停止
    - (2)洞房ブロック
    - (3)ウェンケバッハ型2度房室ブロック
    - (4)モビッツⅡ型2度房室ブロック
    - (5)非伝導性上室期外収縮

    18 徐脈性不整脈
    房室ブロック
    - (1)洞徐脈
    - (2)徐脈頻脈症候群
    - (3)2対1房室ブロック(2対1AVB)
    - (4)高度房室ブロック(高度AVB)
    - (5)完全房室ブロック(完全AVB)

    19 レギュラーnarrow QRS頻拍
    上室頻拍
    - (1)洞頻脈
    - (2)房室回帰頻拍
    - (3)房室結節リエントリー頻拍
    - (4)心房頻拍

    20 レギュラーwide QRS頻拍
    心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)
    - (1)瘢痕関連性心室頻拍
    - (2)左室起源特発性心室頻拍
    - (3)右室流出路心室頻拍
    - (4)脚ブロック(または変行伝導)を伴う上室頻拍
    - (5)Antidromic房室回帰頻拍

    21 イレギュラーwide QRS頻拍
    弁膜症
    - (1)心室細動
    - (2)Torsades de pointes
    - (3)pre-excited atrial fibrillation

    22 先天性心疾患
    先天性心疾患
    - (1)心房中隔欠損症
    - (2)心室中隔欠損症
    - (3)房室中隔欠損症
    - (4)ファロー(Fallot)四徴症
    - (5)エプスタイン(Ebstein)病
    - (6)修正大血管転移

    23 植込み型心臓電気デバイス
    植込み型心臓電気デバイス
    - (1)AAI
    - (2)VVI
    - (3)DDD(ApVp)
    - (4)ペーシングフェラー
    - (5)アンダーセンシング(心房)
    - (6)AAI⇔DDDあるいはAV delay 自動延長機能

    24 その他(◯◯サインまとめ)
    Shark Fin Sign(シャークフィンサイン)
    Tombstoning Pattern(墓石パターン)
    South African Flag Sign(サウスアフリカンフラッグサイン)
    Camel Hump Sign(キャメルハンプサイン)
    Tee-Pee sign(ティーピーサイン)
    Lambda Wave(ラムダ波)
    Spiked Helmet Sign(スパイクヘルメットサイン)
    Left Rabbit Ear Sign(左ウサギ耳サイン)
    Josephson’s Sign(ジョセフソンサイン)
    Spodick’s Sign(スポディックサイン)
    Lead Ⅰ Sign(リードⅠサイン)
    Crochetage Sign(クロシュタージュサイン)
    Goldberger’s Sign(ゴールドバーガーサイン)
    Coumel’s Sign(クーメルサイン)
    Fish Hook Sign(フィッシュフックサイン)
    Dead Man’s Sign(デッドマンサイン)
    Chapman’s Sign(チャップマンサイン)
    Seamen‘s Sign(シーメンズサイン)

    執筆者一覧

    ■著
    藤澤友輝 愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座(第二内科)

    トピックス