新生児医学
第2版

    定価 14,300円(本体 13,000円+税10%)
    河井昌彦
    京都大学大学院医学研究科新生児学講座特定教授
    B5判・527頁
    ISBN978-4-7653-2089-4
    2026年04月 刊行
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    臨床の疑問は、基礎医学の中に潜んでいる。 「河井理論」で紐解く、病態生理と胎児成長の真実

    内容紹介

    初版から10年、待望の第2版です。新生児医療は飛躍的に進歩しましたが、「超早産児の発達予後」という課題は依然として残されています。著者はその突破口を、新しい診断ツールではなく、「病態生理」と「胎児成長」の深い理解に見出しました。

    本書は、遺伝学・発生学・生化学・生理学・薬理学といった基礎医学の知見を総動員し、臨床現場で湧き出る疑問を論理的に解き明かす渾身の単著です。「なぜその症状が起きるのか」「なぜその治療が必要なのか」。その答えは、かつて学んだ基礎医学の中にこそあると気づかせてくれます。

    特筆すべきは、著者の専門である「新生児内分泌」領域です。独自の臨床研究に基づく「河井理論」は他書の追随を許さず、数年後のスタンダードを予感させます。単なるマニュアルではなく、医師としての「思考の幹」を太くする一冊です。病態解明の重要性と臨床研究の喜びを再発見し、明日の診療を変えるための道標となります。

    序文

    第2版の序

    本書の初版から10年余りを経過し、第2版を出版することとなりました。単著で教科書を書くという無謀な挑戦を、2度にわたって後押ししてくださった㈱金芳堂の皆様に感謝いたします。そして、この本を手に取ってくださった方々に心より感謝いたします。

    この10年間で、新生児医療を取り巻く状況は大きく変わりました。遺伝子診断・拡大マススクリーニングといった診断ツールの進歩から希少疾患の診断・治療がより現実的なものとなり、そんな進歩ばかりが話題になるようになりました。もちろん、新たな医療の開発は素晴らしいことですが、「超早産児の救命率は著しく向上したものの、発達予後が必ずしも芳しくない」といった昔から指摘されてきた問題点は決して解決されていません。私は、その原因を「超早産児の種々の合併症の病態生理」「新生児特有の病態」の解明がまだまだ不十分だからだと考えています。病態生理を理解しなければ、適切な治療介入はできません。そして、病態生理を理解するには、胎児成長を深く知ることが重要であり、それを疎かにしていては、超早産児の成長を適切に導くことはできないのです。

    胎児成長を理解するには、「遺伝学」「発生学」「生化学」「生理学」「薬理学」といった学問領域の種々の知識を総動員しなければなりません。臨床で湧き出る疑問の答えの多くは、学生時代に学んだ基礎医学の中に潜んでいるのです。そんな思いで、執筆にあたったのが本書です。

    新生児医学は多岐にわたり、私自身すべての領域に精通しているわけではありません。そのため、本書を執筆するに際して、専門外の分野に関しては、種々の書物・論文を読み、学会・研究会に参加して新しい情報を得て、それを理解しようと心がけました。一方、私が専門とする「新生児内分泌」に関しては、京都大学での臨床研究の成果に基づく記載も数多く紹介しており、他書とは一線を画す「河井理論」に基づいた内容となっています。まだ一般的な知見として認知されていない事柄に関しては、数年後にはスタンダードとなることを信じています。

    本書を通して、早産児・新生児に生じる種々の疾患の背景にある病態を考えることの重要性、そして臨床研究でそれを解明することの楽しさが読者の皆様に伝われば…と考えています。本書が胎児・早産児・新生児の理解を深める一助となることを祈念しています。

    2026年3月
    京都大学大学院医学研究科新生児学講座
    特定教授 河井昌彦

    目次

    Ⅰ 発生学
    第1章 発生学概説
    A 受精から誕生まで
    B 胎児の発達

    第2章 原始生殖細胞~卵子・精子の形成
    A 原始生殖細胞
    B 卵子形成
    C 精子形成

    第3章 排卵から着床まで
    A 卵巣周期
    B 排卵から受精まで

    第4章 二層性胚盤(発生第2週)
    A 外細胞塊(栄養膜)
    B 内細胞塊(胚結節)

    第5章 三層性胚盤(発生第3週)
    A 中胚葉の出現
    B 脊索の形成

    第6章 胚子期(発生第3週~第8週)
    A 外胚葉由来の器官形成
    B 中胚葉由来の器官形成
    C 内胚葉由来の器官形成

    第7章 胎児期(器官充実期)(発生第9週~出生まで)
    A 胎生9~12週
    B 胎生4~5ヵ月
    C 胎生6ヵ月以降
    D 胎児発育を推進する因子

    第8章 胎膜と胎盤
    A 胎盤の形成と変遷
    B 胎盤の機能
    C 胎膜の形成と変遷
    D 羊水

    第9章 運動器系
    A 骨の発生
    B 体肢の発生

    第10章 中枢神経系
    A 脳の形成
    B 脳の発達
    C 脳の形成異常
    D 脳血液関門(BBB)の発達
    E 脊髄の形成

    第11章 心臓血管系
    A 心臓の原基
    B 心臓ループの形成
    C 動脈幹での中隔形成(大動脈・肺動脈の形成)
    D 心室・心房中隔の形成
    E 動脈系の発生
    F 静脈系の発生
    G 胎児期の血管系と出生後の血管系(胎盤循環から肺循環への移行)

    第12章 頭頸部の発生
    A 咽頭弓
    B 咽頭嚢
    C 咽頭溝
    D 舌の形成
    E 甲状腺
    F 顔面の形成

    第13章 呼吸器系

    第14章 消化器系
    A 食道
    B 胃
    C 十二指腸
    D 肝胆膵
    E 中腸
    F 後腸由来の器官

    第15章 泌尿器系
    A 前腎
    B 中腎
    C 後腎
    D 膀胱・尿道

    第16章 生殖器系
    A 性腺(生殖巣)の形成
    B 生殖管の分化
    C 外性器の発生
    D 精巣・卵巣の下降

    第17章 副腎の発生
    A 副腎の発生
    B 副腎におけるホルモン合成
    C 先天性副腎低形成

    Ⅱ 遺伝学
    第1章 ヒトのゲノムと染色体
    A ヒトの染色体
    B DNAの構造
    C ヒトゲノムの構造
    D 細胞分裂
    E 体細胞分裂
    F 減数分裂

    第2章 遺伝子診断
    A ヒトハプロイドゲノムの遺伝的距離
    B 遺伝的距離と物理的距離の関係
    C 先天性多発形態異常などを認める症例に対する遺伝学的検査の進め方
    D マイクロアレイ染色体検査

    第3章 出生前診断
    A 流産
    B 反復流産・習慣流産
    C 非侵襲的な出生前診断
    D 羊水穿刺
    E 絨毛採取
    F 母体血を用いた胎児DNA診断
    G 着床前診断

    第4章 遺伝性疾患―染色体の異常
    A 染色体異常症

    第5章 遺伝性疾患―単一遺伝子疾患
    A 単一遺伝子疾患
    B メンデル遺伝
    C 家系図
    D 近親性
    E 顕性遺伝と潜性遺伝
    F ゲノムインプリンティング(遺伝子刷り込み現象)
    G 不安定反復配列の伸長
    H ミトコンドリア異常症
    I エピジェネティクス(epigenetics)

    第6章 遺伝性疾患―多因子遺伝疾患
    A 多因子遺伝疾患
    B 多因子が関与する先天奇形

    第7章 発生遺伝学
    A 奇形・変形・破壊
    B 症候群とシークエンス

    Ⅲ 生化学
    第1章 エネルギー代謝総論
    A 三大栄養素
    B 糖質代謝の概略
    C グルコースの行方(エネルギー産生が不要な場合)
    D グルコースの行方(エネルギー産生が必要な場合)
    E 蛋白質・アミノ酸代謝の概略
    F 脂質代謝の概略
    G 糖代謝・アミノ酸代謝・脂質代謝の関わり(空腹時)
    H 糖代謝・アミノ酸代謝・脂質代謝の関わり(飽食時)
    I 新生児の栄養所要量

    第2章 糖質
    A 糖質の構造(単糖類・二糖類・多糖類)
    B 糖代謝
    C 肝臓における糖代謝
    D 脂肪細胞における糖代謝
    E 筋肉における糖代謝
    F 全身諸臓器における糖代謝
    G インスリン分泌異常時の代謝
    H 胎児発育不全児(FGR児)の糖代謝

    第3章 糖代謝異常症
    A 糖原病
    B 高ガラクトース血症
    C フルクトース代謝異常症
    D ムコ多糖症

    第4章 蛋白質・アミノ酸
    A アミノ酸の構造と代謝
    B 必須アミノ酸
    C 糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸
    D 分枝鎖アミノ酸
    E 芳香族アミノ酸
    F アミノ酸における窒素の変換過程
    G 全身諸臓器におけるアンモニア代謝
    H 尿素回路
    I アミノ酸代謝のまとめ
    J 胎児と出生後のアミノ酸代謝の違い

    第5章 アミノ酸・有機酸代謝異常症
    A アミノ酸代謝異常症・有機酸代謝異常症
    B 従来からの新生児マススクリーニング対象疾患
    C タンデムマス法による新たなアミノ酸・有機酸代謝異常症の診断
    D 尿素サイクル異常症

    第6章 脂質
    A 脂質の特徴
    B 単純脂質
    C 遊離脂肪酸とトリグリセリド
    D 脂肪酸β酸化
    E 中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸
    F ケトン体
    G 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
    H コレステロール代謝
    I カイロミクロン
    J VLDL・IDL・LDL
    K HDL

    第7章 脂質代謝異常症
    A 脂肪酸β酸化
    B カルニチンの重要性
    C タンデムマス法による脂肪酸代謝異常症の診断
    D 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)

    第8章 微量元素
    A カルシウム・リン・マグネシウム
    B 鉄
    C 亜鉛

    Ⅳ 生理学
    第1章 循環
    A 胎児・新生児の循環の特徴
    - スターリングの式(Starling equation)

    第2章 呼吸
    A 換気のメカニズム
    B 呼吸器モニターの見方
    C 血液中での酸素の運搬
    D 血液中での二酸化炭素の運搬
    E 呼吸の調節

    第3章 酸塩基平衡
    A 酸塩基平衡の基本概念

    第4章 水電解質代謝
    A はじめに
    B 水の調節
    C Naなど電解質の調節
    D 酸塩基平衡の調節
    E 電解質異常症
    - 脳性塩類喪失症(CSWS)
    F 尿細管の異常
    - RTA2を呈する疾患

    第5章 胎児期の内分泌機能の発達生理
    A 内分泌機能調節器官としての胎盤
    B 脳下垂体および,その標的器官
    C 成長ホルモンとプロラクチン
    D 副腎皮質
    E 甲状腺
    F 性腺
    G 出生前後の内分泌機能の変遷
    H 体温調節機構

    第6章 消化器系
    A 消化管運動の発達
    B 消化吸収機能の発達

    第7章 神経系
    A 解剖学的視点からみた神経障害
    B 病態生理からみた神経障害
    C 脳科学からみた脳の働き

    Ⅴ 薬理学
    第1章 新生児の薬物代謝
    A 薬剤の吸収
    B 薬物の体内分布
    C 薬物代謝
    D CYP P450による薬物代謝
    E 代表的なCYP P450
    F 薬物の排泄

    第2章 妊婦に対する薬剤投与

    Ⅵ 臨床新生児学
    第1章 新生児診断学
    A 新生児の診察
    B 新生児の主要な症候(新生児症候診断学)

    第2章 内分泌代謝

    Ⅰ 血糖の異常
    A 低血糖症
    B 低血糖症と脳障害
    C 新生児糖尿病

    Ⅱ 糖尿病合併母体から出生する児の問題点
    A 糖尿病母体児

    Ⅲ 副腎機能の異常
    A 先天性副腎過形成(CAH)
    - 先天性副腎過形成における尿道口の位置
    B 早産児晩期循環不全症

    Ⅳ 甲状腺機能の異常
    A 先天性甲状腺機能低下症
    B 早産児一過性低サイロキシン血症(THOP)
    C 遅発性高TSH血症
    D 甲状腺機能亢進症母体児
    E 性別一致の双胎児にマススクリーニングの再検は必要か?

    V カルシウム代謝の異常
    A 早産児骨減少症
    B 低ホスファターゼ症
    C 低リン血症性くる病

    Ⅵ SGA児の有する内分泌学的問題点
    A SGA児の予後
    B SGA児の内分泌学的問題点
    C 胎児発育不全とその異常(FGR)

    Ⅶ 先天代謝異常症
    A 先天代謝異常症を疑うポイント
    B 先天代謝異常症を疑った場合の診断の進め方
    C 先天代謝異常症(IEM)の臨床経過
    D ライソゾーム病
    E ペルオキシソーム病
    F 拡大マススクリーニング対象疾患
    G 四肢短縮症
    H 頭蓋骨縫合早期癒合症

    第3章 腎・泌尿・生殖器
    A 急性腎不全
    B 先天性腎尿路異常(CAKUT)
    C 嚢胞性腎疾患
    D 腎盂尿管移行部狭窄症
    E 膀胱尿管逆流症
    F 後部尿道弁(PUV)
    G 尿道下裂
    H 停留精巣
    I 陰嚢水腫

    第4章 呼吸
    A 人工呼吸管理の実際
    B 新生児の代表的な呼吸器疾患

    第5章 循環器
    A 先天性心疾患
    B 未熟児動脈管開存症
    C 新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)
    D 双胎間輸血症候群(TTTS)

    第6章 神経
    A 新生児低酸素性虚血性脳症(neonatal HIE)
    - 新生児蘇生法(NCPR)
    B 新生児痙攣・新生児発作
    C 脳室内出血(IVH)
    D 脳室周囲白質軟化症(PVL)
    E MRI画像の読影
    F 難聴
    G 新生児薬物離断症候群

    第7章 感染・免疫
    A 胎児~新生児の免疫能
    B 細菌感染症
    C 真菌感染症
    D 寄生虫・ウイルス感染症

    第8章 血液
    A 貧血
    B 多血症
    C 出血性疾患

    第9章 黄疸
    A 新生児期の黄疸
    B 母児間血液型不適合
    C 母乳性黄疸
    D 直接型高ビリルビン血症

    第10章 消化器
    A 食道閉鎖症
    B 十二指腸閉鎖症
    C 小腸閉鎖症
    D 鎖肛(直腸肛門奇形)
    E ヒルシュスプルング病
    F 先天性横隔膜ヘルニア(CDH)
    G 腸回転異常症
    H 胎便栓症候群
    I 壊死性腸炎(NEC)

    第11章 早産児の代表的疾患

    執筆者一覧

    ■著
    河井昌彦 京都大学大学院医学研究科新生児学講座特定教授

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