小児麻酔のエッセンス 安全な麻酔をすべての子どもたちへ

    定価 6,380円(本体 5,800円+税10%)
    監修蔵谷紀文
    埼玉県立小児医療センター麻酔科
    編著藤本由貴
    埼玉県立小児医療センター麻酔科
    B5判・204頁
    ISBN978-4-7653-2064-1
    2025年09月 刊行
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    小児は“大人のミニチュア”にあらず——この1冊で、小児麻酔の実践力が身につく。

    内容紹介

    本書は「安全」をテーマに、小児麻酔における導入・気道確保・維持管理・覚醒といった一連のプロセスから、頻度の高い症例の対応、さらには危機的状況への対処法までを、具体的かつ実践的に解説しています。単なるマニュアルではなく、麻酔科医が自信を持って小児麻酔に臨めるよう、詳細な手順と“安全に行うためのポイント”を明確に提示した一冊です。

    編者は、世界標準の教育プログラムであるSAFE(Safer Anaesthesia From Education)小児麻酔コースの日本代表としても活躍。小児麻酔に取り組むうえで多くの医師が抱える「不安」や「つまずき」に焦点を当て、それらを解消・共有できるような内容に仕上がっています。

    実臨床で役立つコラムも多数収録し、普段は小児麻酔を専門としない麻酔科医にとっても、日常診療のヒントが得られる一冊となっています。

    序文

    小児麻酔は、すべての子どもたちに安全で質の高い医療を届けるために欠かせない領域です。しかし日常診療において小児麻酔を担当する麻酔科医の多くは、小児症例の少なさや教育機会の限界の中で、限られた経験と知識で対応を迫られています。成人と異なる小児の解剖学的・生理学的特性に加え、限られた経験から「小児麻酔は難しい」「怖い」と感じる麻酔科医も少なくありません。このような現状を前に、誰もが自信を持って「安全な小児麻酔」に取り組めるよう、実践的な知識と技術を届ける一冊が求められていました。

    本書『小児麻酔のエッセンス 安全な麻酔をすべての子どもたちへ』は、そのニーズに応えるために企画されました。「小児麻酔は怖くない。いくつかのポイントをきちんと守れば、誰でも安全に行える」。この信念のもと、これから小児麻酔を学ぶ専攻医、小児麻酔を専門としない麻酔科医が、安全な麻酔を提供するために必要な「エッセンス」を凝縮しています。

    本書の大きな特徴の一つは、執筆陣の多様性にあります。小児専門病院で日々多くの小児麻酔に携わる麻酔科医だけでなく、大学病院や地域の中核病院、一般病院で小児麻酔に取り組む全国の麻酔科医が執筆に加わっています。それぞれが置かれた臨床環境や経験をもとに、実際に行っている手順や薬剤の用量、判断基準を執筆いただきました。そのため、章ごとに薬剤の用量や具体的なやり方に若干の違いが見られるかもしれません。しかしそれは、各現場で工夫され、安全に小児麻酔が行われている多様な実践の証です。本書では、こうした多様性をあえてそのまま残すことにしました。

    また、各節の執筆者名はあえて記載していません。これは、読み手に「この人が書いているからこうしよう」といった先入観を与えずに内容に向き合ってもらいたいという意図と、執筆者が自由な視点で率直に記述できるようにという配慮からです。読者の皆さまには、自施設やご自身の経験に照らし合わせながら、臨床に役立つヒントとして読み取っていただければ幸いです。

    本書は「安全」をテーマに、麻酔導入・気道確保・維持管理・覚醒といった一連の小児麻酔の手順、よく遭遇する症例の麻酔管理、危機的事象への対応について具体的かつ実践的に解説しました。さらに、単なるマニュアル本にとどまらず、小児麻酔の知識とスキルをいかに獲得し、維持していくかについても章を設けています。医学教育や医療安全の観点からも、麻酔科医の学びと成長を支える内容となることを目指しました。小児麻酔の奥深さは、追求すればするほどその道のりが長く感じられるものです。しかし「安全な小児麻酔」という目標に到達するには、複雑な技術だけでなく、知識と心構え、そしていくつかのルールやコツを知ることが重要です。本書がその正解に近づくヒントを提供し、読者一人ひとりの臨床現場における安心と自信につながることを心から願っています。

    小児麻酔に携わるすべての麻酔科医の生涯のバイブルとして、本書が多くの子どもたちの命と健康を守る一助となることを信じてやみません。

    最後に、本書の出版にあたり、株式会社金芳堂 編集部の石井木綿子様、河原生典様には、企画段階から編集・校正に至るまで多大なるお力添えを賜りましたこと、ここに深く感謝の意を表し、心より御礼申し上げます。

    2025年8月
    藤本由貴、蔵谷紀文

    目次

    PART1 小児麻酔の基本 実際の手順と安全のポイント
    01 小児とは~ちいさな大人ではない~
    02 術前評価~子どもならではの気にすべきポイント~
    03 麻酔準備~いつでもどこでもSOAP-MI~
    04 薬剤~10倍間違えは簡単に起こる~
    05 麻酔導入~吸入導入は難しい! 静注導入では麻薬の前に筋弛緩薬を投与!~
    06 入室困難、導入困難~みんなで息を合わせて臨むべし!~
    07 末梢血管確保~超音波診断装置をうまく使おう~
    08 気道管理計画~綿密な術前評価をもとに複数のプランを立てる~
    09 気道管理実践~基本手技をマスターし、気道確保戦略を立てる~
    10 モニタリング~生体モニターと五感を使って絶え間なく看視しよう~
    11 輸液管理~4-2-1ルールにプラスαの補充術~
    12 抜管~備えあれば憂いなし~
    13 覚醒時せん妄/興奮~起きると大変! 予防に努めよう~
    14 術後管理~術後まで見通した術前計画を立てる~
    15 手術室外麻酔・鎮静~慣れない場所でいかにいつも通りを実現するか~

    PART2 よくある手術の麻酔 手術の概要と安全な麻酔の具体例
    01 開頭手術~カウントされない出血を意識しよう~
    02 斜視手術~徐脈とPONVに留意し、良質な鎮痛を心がけよう~
    03 口蓋扁桃摘出手術~口蓋扁桃摘出手術=閉塞性睡眠時無呼吸症候群の麻酔~
    04 口唇口蓋裂手術~気道開通性と創部安静の両立が難しい~
    05 気道異物~チームダイナミクスで難しい局面も乗り切ろう~
    06 鼠径ヘルニア・陰嚢手術~小児麻酔の基本の基本~
    07 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術~気腹しました、まず何を確認しますか?~
    08 開腹手術の麻酔管理~術後鎮痛、あなたのお好みは?~
    09 骨折手術~緊急手術の基本をおさらい~
    10 側弯症~ダイナミックでやりがいのある周術期管理~
    11 新生児①:鎖肛・食道閉鎖~生まれたての赤ちゃんで気にすべきポイント~
    12 新生児②:肥厚性幽門狭窄症~外科的緊急事象ではない! 術前に評価と補正をしっかりと~
    13 ダウン症候群(21トリソミー)~ひとりひとり違う、特に心臓、頸椎、上気道に気をつけて~
    14 先天性心疾患児の非心臓手術の麻酔管理~どう流れているのか? そして肺体血流比を考える~
    15 重症心身障害児~その子なりの“いつもの状態”を知る~

    PART3 危機的事象 日常からの備えと安全に対応するコツ
    01 喉頭痙攣~起こると思って準備していないと間に合わない~
    02 術中の低酸素血症~喘鳴=喘息発作ではない!~
    03 アナフィラキシー~疑わなければ気づけない!~
    04 出血と輸血~いつでも出血すると思って準備せよ~
    05 局所麻酔薬中毒~イントラリポスⓇは栄養剤! 疑ったら投与してみよう~
    06 悪性高熱症~見たことはないけど知っていないといけない~
    07 心停止~アルゴリズムは頭ではなく体に叩き込む!~

    PART4 小児麻酔の知識やスキルをどう学ぶか? どう維持するか?
    01 プロフェッショナルとして~小児麻酔を学びながら教える難しさ~
    02 医学教育~教科書だけでは学べない学びとは何だろう?~
    03 シミュレーション教育~in-situシミュレーションで学ぶ小児麻酔緊急時の対応~
    04 医療安全~人は誰でも間違える! 誤薬を防ごう~
    05 大人の世界の小児麻酔~大学病院で小児麻酔をするということ~
    06 地方の小児麻酔①~地域の子どもたちを地域で診るということ~
    07 地方の小児麻酔②~沖縄県における小児麻酔~
    08 小児麻酔と国際保健~物も人もお金もない、でもそこにしかないものがある~
    09 スキルに依存しない安全な小児麻酔のコツ

    COLUMN
    小児は「ちいさな大人ではない」の歴史
    プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome:PRIS)
    予防接種と全身麻酔
    術前の飲水制限は短縮の傾向
    術前の飲水制限は1時間前? 2時間前?
    よい習慣が医療を安全にする~Safety2という考え方~
    「〇〇ミリ」をやめよう!
    なぜ吸入導入?
    デジタル技術の進歩
    小児における薬剤経鼻投与
    小児のエコーガイド下末梢静脈カテーテル留置ではどの静脈を第一選択とすべきか?
    覚醒後抜管の判断基準?
    覚醒時せん妄と疼痛の見分け方
    まだ寝ている状態で病棟に帰ってよいですか?
    痛みやPONVは術前の説明も大切
    日帰り手術の帰宅基準
    鎮静は病院経営にとってはコスパが悪い?!
    最大許容出血量(Maximum Allowable Blood Loss:MABL)
    頭蓋形成術中に空気塞栓が80%発⽣する??
    斜視と症候群
    麻酔深度と眼科手術
    耳鼻科の先生に聞きました:経鼻エアウェイのススメ
    デクスメデトミジンの有用性
    術中の緊張性気胸
    小児の鼠径部手術のときのブロックはどれが一番効果的?
    腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術の日帰り手術
    小児の骨折は増えている?
    トラネキサム酸について
    食道閉鎖症は、麻酔導入後も自発呼吸を温存する?!
    肥厚性幽門狭窄症の内科的治療
    ダウン症児の気道リスク、鎮静リスク
    小児期発症疾患を有する患者の移行期医療
    抜管とは何か?
    シミュレーション教育のススメ
    リスクが高い症例をどうしても麻酔をしなければならないときにできる工夫
    「いつもとそんなに変わりありません」に油断しない!
    卵アレルギーとプロポフォール
    アドレナリンの投与はしばしば遅れる!
    大量輸血プロトコール(massive transfusion protocol:MTP)について
    術中の出血で不幸な転機帰をたどらないために
    局所麻酔薬の投与量を減らす工夫
    麻酔器の準備をしっかりしても麻酔回路内の残留ガスはゼロにならない!?
    防ぎうる心停止とは
    アドレナリン早期投与の重要性
    「小児病院」で学ぶ小児麻酔~パフォーマンスは環境があってこそ~
    Millerのピラミッド~4段階に分けて能力を評価する~
    指導におけるフィードバック
    コンピテンシー基盤型教育
    6Rを知っていますか
    インシデントレポートが少ない病院は安全ですか
    チャンプルーな沖縄

    執筆者一覧

    ■監修
    蔵谷紀文  埼玉県立小児医療センター麻酔科

    ■編著
    藤本由貴  埼玉県立小児医療センター麻酔科

    ■執筆者一覧(掲載順)
    藤本由貴  埼玉県立小児医療センター麻酔科
    蔵谷紀文  埼玉県立小児医療センター麻酔科
    鹿原史寿子 八戸市立市民病院麻酔科
    西啓亨   沖縄県立中部病院麻酔科
    法里慧   近畿大学医学部麻酔科学教室
    中山力恒  近畿大学医学部麻酔科学教室
    小嶋大樹  あいち小児保健医療総合センター麻酔科
    石田佐知  埼玉県立小児医療センター麻酔科
    鵜沼篤   秋田大学医学部附属病院麻酔蘇生疼痛管理学講座
    佐藤聖子  福岡大学病院麻酔科
    松田弘美  北里大学医学部麻酔科学教室
    舟橋優太郎 東北大学病院麻酔科
    川端徹也  沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児麻酔科

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