オールインワン 経験症例を学会・論文発表するTips
第2版

    定価 4,180円(本体 3,800円+税10%)
    見坂恒明
    兵庫県立丹波医療センター/神戸大学大学院医学研究科地域医療支援学部門
    A5判・302頁
    ISBN978-4-7653-2025-2
    2025年02月 刊行
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    内容紹介

    第1版の出版から、約4年の年月が経ちました。4年間の間に医師の働き方改革相まって、働く環境はどんどんと変化しています。そのなかで、論文執筆や学会発表も業務時間とみなされるようになり、日々の診療と両立するために以前に比べ、さらに様々な分野で効率を求められる状況です。

    日々の臨床のなかで、「学会で発表しては?」「論文にしては?」と上級医から言われることは変わらずあるでしょう。しかし、どのように手をつけていったら良いかわからずに、結局、何もせずに終わるといった状況を打破するための一助と本書はなります。

    著者は、日々の臨床にしっかり向き合い、そこで出会った症例より、症例報告を書き、それを学会・論文で発表するといった流れを実践し、学会では優秀演題賞を受賞し、論文執筆ではお蔵入りゼロです。

    本書は、臨床現場で働きながら、効率よく、学会・論文発表ができる術・流れを伝えています。

    序文

    私の主勤務地である兵庫県立丹波医療センターは2019年7月に新築オープンしました。旧病院の兵庫県立柏原(かいばら)病院は、「県立柏原病院の小児科を守る会」に代表されるように医師不足による医療崩壊を経験した病院です。2013年に、前病院長の秋田穂束先生が赴任され、優れた医学教育を提供し続けることで、若手医師にとって魅力ある病院にしようと取り組んでいます。私は2015年より、神戸大学大学院医学研究科地域医療支援学部門特命教授兼県立柏原病院(現丹波医療センター)地域医療教育センター長として赴任し、卒後教育の中心を担う立場となりました。初期研修医をはじめ、内科や総合診療科の専攻医・上級医の指導も行っております。診療においては丹波医療センター総合診療科の科長として、また同じ敷地内に併設する丹波市ミルネ診療所の相談役として、診療の質向上に努めています。こうした取り組みが評価され、日本全国で地域医療に貢献した50歳以下の医師に贈られる、第9回「やぶ医者大賞」を2022年に受賞しました。俗に、診断や治療が下手な医者を「やぶ医者」と言いますが、「やぶ医者」という表現は、本来名医を現す言葉であって、今言われている下手な医者のことではありません。ある名医が但馬の養父(やぶ)という所にひっそりと隠れるように住んでいて、土地の人に治療を行っていました。死にそうな病人を治すほどの名医で、その評判は広く各地に伝わり、多くの医者の卵が養父の名医の弟子となりました。養父の名医の弟子と言えば、病人もその家人も大いに信頼し、薬の力も効果が大きかったようです。それをまねた下手な医者が「やぶ医者」として世の中に横行し(いわゆる詐欺ですね)、それが「下手な医者=やぶ医者」と認識されるようになったようです。日本医師会の後援のもと、「本来の優秀な医者=やぶ医者」として、兵庫県養父(やぶ)市が、町おこしの一環としてこのプロジェクトを行っています。地域医療の実践者が過去受賞されているこの賞ですが、地元兵庫県では初めて、また医学教育での評価として初めて、この賞を受賞しました。

    前病院長の秋田穂束先生は、丹波医療センターを「地域医療のメッカ」「総合診療のメッカ」にしたいととり組んでおられました。私はその意思を継ぎ、それを実現すべく実践しており、総合診療専攻医の在籍数は全国でも有数の規模を誇ります。

    さて、本書の前版の原稿は2020年11月に完成させました。以降、本書改訂版の作成まではコロナ禍の真っ只中でした。この期間、COVID-19においてはケースレポートも、診断、治療、合併症、ワクチン、スティグマなど、様々な研究においても極めて迅速に論文が刊行されていきました。公共に役立つためには、いかに迅速に論文を作成することが重要かを、改めて思い知らされた期間でした。私たちも2023年5月のCOVID-19においては5類感染症になるまでに6本(ケースレポート2、研究4)の論文を刊行しました。

    2024年4月より、医師の働き方改革の新制度が施行されました。私たちが日本プライマリ・ケア連合学会で行ったアンケート調査では、医師が論文作成を行う時間帯は、平日勤務日の時間外が78.5%、休日の日中/夜間が68.0%/65.0%と、大半が時間外労働でした。論文作成や投稿が業務なのか、自己研鑽なのか、グレーゾーンなところはありますが、論文が刊行されて、世の中の人々の役に立つという目的のためには、できるだけ迅速な論文作成を心がけたいものです。

    学会発表の抄録や論文発表を通じてきちんと記録を残せば、自分の知らないところでたくさんの人が見てくれ、自分自身が診療を行っていなくても、似たような経過を示す患者の診療において困っている医師が文献検索を行い、診療に役立ててくれます。そして似たような経過を示す患者にもメリットがあります。

    私自身や丹波医療センターが行っている学会発表や論文作成のノウハウを、本書を手にする多くの方々に広く活用していただきたいです。これから学会発表や論文作成を始める初期研修医や専攻医だけではなく、指導医にとっても役立つ書籍だと自負しております。読者の方々の新たな学会発表や論文作成を通じて、患者診療で困っている医師や、病気で苦しむ患者に対して、間接的に役に立ちたいと考えています。

    2024年8月
    兵庫県立丹波医療センター地域医療教育センター長
    見坂恒明

    目次

    第1章 症例報告の学会発表・論文作成、こんなところでつまずいていませんか?
    1-1.つまずく要因

    1-2.つまずきポイント1)期限について

    1-3.つまずきポイント2)症例選択の話
    1)症例選択の基準
    - 〈例1〉稀な疾患である症例①
    - 〈例2〉稀な疾患である症例②
    - 〈例3〉論文化されていなかった症例

    1-4.つまずきポイント3)論文化にあたっての話
    1)論文作成の意義
    - 〈例4〉検査羅列の症例
    - 〈例5〉新しい治療の提示が客観的事実に基づく症例
    2)論文投稿時の査読への対応
    - 〈例6〉査読者の指摘が大いに役立った症例
    - 〈例7〉査読者の指摘をそのまま記載した症例
    - 〈例8〉査読者の指摘が納得できなかった症例①
    - 〈例9〉査読者の指摘が納得できなかった症例②

    第2章 学会発表・論文にできる症例の見つけ方
    2-1.貴重な症例、見逃していませんか? 症例の見つけ方
    1)頻度が高い疾患×よくある症状や検査結果×一般的な治療経過
    2)頻度が多い疾患×見逃しがちな症状・報告が少ない症状・所見
    3)頻度が少ない疾患×よくある症状や検査結果×一般的な治療経過
    4)日本で発症者が少ない疾患
    5)頻度が少ない疾患×あまりない症状・検査結果
    6)治療・救命に難渋した症例
    7)非典型所見×診断に難渋した症例

    2-2.その症例、学会発表できる題材ですか?
    1)一般的な情報検索方法
    2)私の情報検索方法

    2-3.文献検索の方法について
    1)例1.伝染性単核球症に心筋炎を合併した症例を調べる
    2)例2.青汁によって肝機能障害を来たした症例を調べる
    3)例3.70歳の悪性リンパ腫による腸重積の症例を調べる

    第3章 学会発表に向けて
    3-1.学会発表ができそうと思ったらすること
    1)学術的に耐えうる内容にする
    - 〈症例1〉アロプリノール内服中の60歳代の発熱と皮疹
    - 〈症例2〉70歳代の発熱と皮疹、多関節痛、フェリチン高値
    - 〈症例3〉60歳代の発熱と四肢の筋痛、四肢末梢の浮腫
    2)患者とその家族への説明

    3-2.学会発表の準備、発表の持って行き方
    1)臨床的メッセージについて
    2)一般化できる臨床メッセージを示す

    3-3.学会発表までの流れ
    1)余裕を持って、文献的考察を深める
    2)学会発表は計画的に

    3-4.抄録の書き方について
    1)抄録例①
    - 〈症例〉
    - 〈主訴〉
    - 〈現病歴〉
    - 〈来院後経過〉
    - 〈考察〉
    - 〈演題名〉
    - 〈抄録作成時、文献的考察をしっかり行う〉
    - 〈抄録登録時の注意点〉
    2)抄録例②
    - 〈症例〉
    - 〈主訴〉
    - 〈現病歴〉
    - 〈薬剤使用歴〉〈社会生活歴〉
    - 〈臨床経過〉
    - 〈考察〉
    - 〈演題名〉
    - 〈文字数制限に気をつける〉
    - 〈抄録作成後、学会発表のスライド作成に着手する〉

    3-5.学会発表のスライド作成について
    1)スライドのサイズ
    2)書体
    3)スライド内の情報量
    4)スライド中の文字サイズと行数
    5)適切な行間の使用、改行部分への配慮
    6)結語
    7)スライドの構成
    8)スライドの具体例
    - 〈「タイトル」「COI開示」「緒言」のスライド〉
    - 〈「症例」のスライド〉
    - 〈「身体所見」のスライド〉
    - 〈「検査所見」のスライド〉
    - 〈「画像所見」のスライド〉
    - 〈「経過」のスライド〉
    - 〈「一般論」「考察」のスライド〉
    - 〈「結語」のスライド〉
    - 〈「謝辞」のスライド〉

    3-6.学会発表のポスター作成について
    1)ポスターの基本はわかりやすいことが何より大事
    2)ポスターサイズ
    3)フォント
    4)文字サイズ
    5)レイアウトの方法
    6)ポスターの内容の配列順
    7)改行部分への配慮
    8)余白をとる
    9)背景の塗りと囲いの2重強調
    10)矢印は目立たせない
    11)全体レイアウトも囲い枠をうまく使う
    12)情報の整理
    13)PDF形式に書き出してチェック
    14)ポスターの印刷

    3-7.学会発表について
    1)院内予演会の意義
    2)発表の実際
    3)学会発表後

    3-8.学会発表の意義を理解していますか?
    1)似た症例に出会った医療者や患者のために
    2)専門家の見解が聞ける

    第4章 論文発表に向けて
    4-1.学会発表した症例は論文化できそうですか?
    1)ある疾患で症状・所見・経過が新規
    2)副作用・薬剤相互作用が新規
    3)二つの疾患間に予想外の関連性
    4)新規の診断方法
    5)新規の治療方法、予想外の治療効果
    6)稀・新規の疾患・病原体

    4-2.論文化の意義について
    1)症例報告が臨床研究につながった例
    2)記録として残す

    4-3.同意書のとり方について
    1)倫理規定を把握する
    2)研究とみなされる症例報告の例数は
    3)同意書をとるタイミング

    4-4.論文投稿先の選択について
    1)論文投稿先の相談
    2)IFが高いジャーナルが良いか?
    3)内容に応じた投稿先
    4)論文採択率と論文掲載料

    4-5.論文を書いてみましょう! どの部分から書きますか?
    1)私の執筆順
    2)Introduction
    3)Discussion
    4)References
    5)Abstract

    4-6.論文を書いてみましょう! 実際の本文の書き方について
    - 〈例示1〉
    - 〈論文の方向性の軸の設定〉
    - 〈例示2〉
    - 〈論文の方向性の軸の設定〉
    1)Introduction
    - 〈例示1〉
    - 〈例示2〉
    2)Case
    - 〈例示1〉
    - 〈例示2〉
    3)Discussion
    - 〈例示1〉
    - 〈例示2〉
    4)Abstract
    - 〈例示1〉
    - 〈例示2〉

    4-7.論文を書いてみましょう! タイトルのつけ方
    1)良いタイトルとは
    - 〈例示1〉
    - 〈例示2〉
    2)「症例報告」と入れるべきか

    4-8.論文を書いてみましょう! 意外に手間のかかる本文以外のところ
    1)References
    2)Figure Legends
    3)Keywords
    4)List of abbreviations
    5)Declarations
    6)Consent for publication
    7)Availability of data and materials
    8)Competing interests
    9)Funding
    10)Authors’ contributions
    11)Acknowledgements

    4-9.英文校正について
    1)英文校正会社に依頼をする
    2)英文校正会社でできること
    3)カバーレター
    4)剽窃・盗用について

    4-10.論文を投稿してみましょう!
    1)オンライン投稿前に
    2)オンライン投稿の実際

    4-11.査読者とのやりとり
    1)論文投稿後の流れ
    2)査読コメントへの対応方法
    3)再投稿する

    4-12.Reject後の流れ
    1)査読に回らずrejectの場合
    2)査読されrejectの場合
    3)査読コメントに対する対応

    4-13.論文のAccept後の流れ
    1)論文掲載料の支払い
    2)出版社から校正依頼
    3)いよいよ刊行

    4-14.論文のPublish後に起こること
    1)学会等へのお誘い
    2)投稿の依頼
    3)Letterへの対応
    4)査読の依頼

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    執筆者一覧

    ■著
    見坂恒明 兵庫県立丹波医療センター/神戸大学大学院医学研究科地域医療支援学部門

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