看護学臨地実習ハンドブック
-基本的考え方とすすめ方- 第5版

  • 旧版
定価 4,070円(本体 3,700円+税10%)
監修松木光子
大阪大学名誉教授/日本赤十字北海道看護大学名誉学長・名誉教授
編著宮地緑
元大阪府病院協会看護専門学校副学校長
B5判・228頁
ISBN978-4-7653-1724-5
2017年09月 刊行
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臨地実習指導者向けの数少ない指導書。実習指導者、看護教員必携の一冊。

内容紹介

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改訂版の情報は下記のとおりです。

看護学臨地実習ハンドブック(第6版) | 株式会社 金芳堂

臨地実習は看護師養成の課程において必須の事項であり、看護実践能力を育てるうえでもっとも効果的な教育技法である。指導者に対しては講義、演習、学内実習、臨地実習の方法を効果的に配置し、学生が学習を深め能力を培うこと、学生の到達度を適正に評価することが望まれる。本書は、臨地実習に関する数少ない指導書であり、カリキュラムに則った考え方と実際の進め方、評価方法など、その基本を網羅している。実際に使われている評価表などの資料が多いので参考になり、指導者、教員にとっては必携の一冊といえる。

序文

監修のことば

この度、看護基礎教育の臨地実習の手引書ともいえる「看護学臨地実習ハンドブック―基本的考え方とすすめ方」改訂第5版を上梓することになった。本書は1996(平成8)年の初版以来、多くの看護師・看護教員に活用されており、監修者としては大変うれしいことである。

振り返れば初版は、私自身の看護教員のスタートになった大阪府立公衆衛生学院のかつての同僚たちが、当時のカリキュラム改正を機に長年の指導経験をまとめられたものである。当学院は平成8年に閉校し、現在大阪府立大学に発展的に統合された。

その後、初版以来の編修者と書き手を中心に版を重ねているが、今回の改訂も関係の新たな担当者を加えて、彼らが編集と執筆の中心になって出版の運びとなった。

前版(第4版)は、2008(平成20)年1月8日公布、2009(平成21)年4月1日実施の保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正に伴う、カリキュラム改正への対応としての改訂であった。その後の指定規則の大幅な改正はみられていない。この2008年の改正は、現場と教育における看護実践能力の強化を意図したものであったが、この方針は現在も変わらないであろう。

近年は、2002(平成14)年に「医療介護総合確保推進法」が成立し、特定行為の役割の拡大に伴う、大学院や継続教育に変化がみられる。この動向は少子超高齢多死社会といわれるわが国のこれからの社会に対する方略の要望からであり、米国などのナースプラクティショナーにみる看護役割の拡大である。

本書は、基礎看護教育の実習ハンドブックであるので、前版同様、実践能力の強化を目指して、さらに推敲を重ねての改訂である。

課題の看護実践能力の視点からすれば、教育方法としても臨地実習は一番効果的教育技法であろう。残存率の見地からも知識と技術の統合の上からも、教育方法の中で一番効果的な方法である。

サブタイトルが「基本的考え方とすすめ方」となっているように、本書は総論としてまず臨地実習に関する基本的考え方と臨地実習全体のすすめ方を示している。そして、各論として専門分野Ⅰの基礎、専門分野Ⅱの成人、老年、小児、母性、精神、そしてカリキュラム改正の柱である統合分野の在宅と看護の統合と実践を含む、カリキュラム全体の実習を網羅している。

記述は、多くの関連資料を豊富に取り入れて記述しており、極めて実践的である。また、著者達の開発・使用している実際の実習用具を各看護学にふんだんに提示している。

したがって、看護基礎教育に携わる教員、現場の実習指導者や看護管理者、看護者はもとより、実習する看護学生のハンドブックとしても活用でき、多くの示唆を得るものと思う。

平成29年文月
松木光子

 


改訂にあたって

看護学は人間にかかわる実践の科学といわれながらも、臨地実習に関する指導書は極めて少ない。

看護基礎教育は、各種学校、専門学校、3年制の短期大学、大学とさまざまであるが、いずれの教育機関においても臨地実習は重要視され、その意義や本質に変わりはないと考える。看護基礎教育における臨地実習について、学内実習や演習とは別に、直接、患者と接する時間を規定づけしたのは、1990(平成元)年のカリキュラム改正からである。その趣旨は、学生が主体的に行動でき、知識を活用しながら判断力や応用力や問題解決能力、学生の自己成長を育むために、総時間数を削減し、ゆとりある教育を主眼としていた。私たちが、本書を書き始めたのは、臨地実習指導にあたる時、看護の実践指導者として、基本的なことと指導の実際的なことを助けるような書物があれば、指導がスムーズにいくのではないかとの考えからであった。また、学生にとって、臨地実習が円滑に展開できることを願ったからである。

平成8年の改正カリキュラム(平成9年実施)から、私たちは老年看護、精神看護、地域(在宅)看護を別枠に組み立て、成人看護を急性期(救命救急と手術看護領域)、慢性期(セルフケア領域)、回復期(リハビリテーション看護領域)、終末期(ターミナルケア領域)に分けて実習を構築してきた。

カリキュラムの改正は、2008(平成20)年1月8日公布、2009(平成21)年4月1日からの実施で、前回からすでに10年経過し、社会状況も大きく変化してきた。特に個人情報保護法、在院日数の短縮化などにより、看護学生の臨地実習の実施機会の減少と実施範囲が限定されてきた。そして、①各看護学校養成所の看護技術の到達能力の差異、②卒業後、複数患者を受けもち期待される役割や実施も多岐にわたってきた、③学生の生活技術能力不足やコミュニケーション能力の不足、などの経緯があり今回の改正となった。しかし、看護教育内容は今まで専門分野7領域が並列的なものから専門分野Ⅰ(基礎看護学)、専門分野Ⅱ(成人・老年・小児・母性・精神の各看護学)、統合分野に分けたことであり、教育期間の範囲内で、93単位から97単位の増加に留まり4年制の基礎教育には至らなかった。4単位増加の内容は成人看護実習が8単位から6単位に減少し、看護の統合と実践が増加した。それは、基礎分野、専門基礎分野、専門分野Ⅰ、専門分野Ⅱで実習した内容を臨床の実践に近い形で学習し、知識・技術を統合するようにして、新人看護師の臨床能力低下の早期解決が主眼となり、教育内容の大幅な変化はみられない。

本書は3年課程の看護教育機関を対象とした。その構成は、第1章、看護教育の考え方の動向と方向性を明らかにし、第2章では、これからの臨地実習における考え方と進め方の基本となるものを示した。そして、第3章からは、実際の展開として各看護領域を設定する主旨的なものを基盤にし、看護モデルを示し臨地実習のフィールドを拡げ、具体的に実践活動に役立つようにしている。

近年の少子化・高齢化や疾病構造の変化に伴い、在宅看護の要望も高く、看護を取り巻く情勢は激しく変化している。看護職の名称も変更され、2002(平成14)年3月1日(改正:平成13年12月12日。法律第153号)から保健師・助産師・看護師となり、現在に至っている。国は、2025年を目途に「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。どのような健康状態にあっても、その人らしく最後まで尊厳をもって人生を全うできるよう看護者は支援することが重要である。また、18歳人口の減少に関連し、大学教育のあり方そのものも見直されており、看護の独自性を明確にし、学生にとって魅力ある教育内容・教育環境を整えることが求められている。それと同時に看護基礎教育でも疾患や医療面だけ見るのではなく生活者としての視点をもち、豊かな人間性や感性を身につけ、人を見ることがさらに必要となってくる。時代の要請に対応できる専門職業人を育成することが責務であると考える。職業人育成の看護基礎教育を考える時、教育の一環としての臨地実習の位置づけと実習指導は非常に重要である。

多くの実習施設がすべて教育のための施設ではなく、実習教育環境としてふさわしいとはいえない。実習に必要な教育環境を整えることは困難であろうとも進めることが必要であり、当面、実習指導にあたっては、現場の指導者と学校教員が連携をとって指導教育にあたることが求められている。そうした思いを込めて本書を編纂した。

この書がこれからの臨地実習の新しい考え方と実践法として、臨床現場、教育機関の指導者、学生の皆さんにも目を通していただき、活用していただけることを心から念じている。そして、多くのご意見をいただき、よりよいものにしたいと願っている。

なお、本書の発刊にあたりご尽力いただいた金芳堂出版部の皆様に感謝申し上げたい。

平成29年7月
著者一同

目次

第1章 臨地実習の基本的な考え方
第2章 臨地実習のすすめ方
第3章 専門分野Ⅰ 基礎看護学
第4章 専門分野Ⅱ 成人看護学
第5章 専門分野Ⅱ 老年看護学
第6章 専門分野Ⅱ 小児看護学
第7章 専門分野Ⅱ 母性看護学
第8章 専門分野Ⅱ 精神看護学
第9章 統合分野Ⅰ 在宅看護論
第10章 統合分野Ⅱ 看護の統合と実践

執筆者一覧

中田智子  元畿央大学健康科学部看護医療学科教授
藤原千恵子 武庫川女子大学看護学部教授
田中恵子  大和大学保健医療学部看護学科教授
細田泰子  大阪府立大学大学院看護学研究科/地域保健学域看護学類教授
牧野裕子  甲南女子大学看護リハビリテーション学部看護学科准教授
河上香   東邦大学看護学部准教授
神戸美輪子 摂南大学看護学部教授
角野加恵子 元広島都市学園大学健康科学部看護学科准教授
西田好江  泉佐野泉南医師会看護専門学校副学校長

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