「心エコー図読影のポイント」初版は,日常臨床に役立つ,わかりやすい心エコー図の入門書として刊行された.わかりやすい入門書であるという旧版のコンセプトは引き継ぎながら,その他はすべて一新して刊行した.
本書は基礎編と症例編からなる.
基礎編では,心エコー法を十分理解して頂くために,基本的かつ重要な事項をKey Pointとしてまとめ,簡潔に説明するように努めた.シェーマ,写真,図・表を刷新し,断層法,ドプラ法,および各疾患の項について,現在の日常診療におけるスタンダードを意識して書き改めた.
特に,ドプラ法の臨床応用および弁膜症の重症度評価については,心内圧推定,心拍出量や肺・体血流比計測,弁口面積や弁逆流量計測など,定量的評価法についても解説した.また,新たに心機能評価および心不全の項を設け,左室収縮・拡張能の評価法と,心不全における心エコー検査の役割についても解説した.
新たに設けたSide Memoには臨床的なコツや,より専門的な知識をまとめた.
12章「心エコー検査の流れ」および13章「心エコー検査依頼目的別チェックリスト」は,実際に心エコー検査を行う際に役立てることができる.
症例編では,症例を一新し,30症例を新たに厳選した.実際の臨床の現場に即して心エコー図を正しく読影し,診断・治療に活かすことができるように,病歴,身体所見,心電図・胸部X線所見を提示し,Question and Answer形式で診断と治療方針決定に至る過程を解説した.
心エコー図診断は,適切な画像を描出するにとどまらない.臨床所見からどのような疾患が疑われるかをあらかじめ予測すること,そして心エコー図の結果をどう解釈し実際の診療に役立てるかを考えること,この両者があってはじめて臨床に有用な心エコー図診断が可能となる.鑑別診断や手術適応など,心エコー検査の結果を臨床に活かすための最新の情報も盛り込み,Clinical Point,ECG Point,Echo Pointのまとめを読めば,総合的な知識を身につけられるように配慮した.
症例は比較的易しいものからやや難しいものへと段階的に学習できるように配列したが,目次から,特定の疾患のみを読むことも可能である(序文より).